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15%で合意、米EU関税交渉を読み解く──日米合意との比較、欧州ならではの事情
EU内では加盟国の間に意見の相違があり、欧州委員会は、欧州の団結を維持するという姿勢で臨んでいた。米国と英国が5月初めに締結した合意をモデルとして、自動車と鉄鋼部門での譲歩と引き換えに、10%の横断的な関税を維持する方針を採用していると言われていた。
その頃ですら、「非対称的な状況を永続させる」として激しい批判がEU内にはあった。国単位では、フランスが最も強硬な姿勢をとり、ポルトガル、スウェーデン、ルクセンブルクも不均衡に懸念を表明していた。一方で、アイルランド、イタリア、ドイツなど、米国への輸出に特に依存している他の国々は、慎重な姿勢を維持していた。
一番揺れていたのはドイツである。自国産業を守ることとEUの団結のはざまで、苦しんでいた。強硬派のエマニュエル・マクロン大統領はフリードリヒ・メルツ首相の説得に努力していた。
ドイツの自動車メーカーはホワイトハウスと協議し、トランプ氏が要求する「一部を米国国内の工場で生産を」というシナリオを支持していた。しかし、欧州委員会は、この提案に反対の立場を表明した。おそらく、関連工場がスロバキアやハンガリーに多く存在するからだろう。同委員会は、25%の関税の対象外となる自動車の割当枠について交渉中であると説明していた。
EUの団結が進んでいったのは、相次ぐトランプ氏の攻撃のおかげである。こうして報復措置への合意がかたまっていったのだ。
わざとなのか自然なのか、トランプ氏は言うことが変わり、日本と同じようにEUも「動く標的」トランプ政権に苦心していた。同時にEU側では次第に軟化していく傾向も生じ、7月上旬には10%は「レッドライン」ではないと言われていた。しかしその後、15%になってしまったのだが。
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