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15%で合意、米EU関税交渉を読み解く──日米合意との比較、欧州ならではの事情
日本とEUに共通している最大の点は、安全保障で米国の力が不可欠なことである。特に、ロシアに地理的に近く、米国の軍事援助が必須と望む国々は、米国との合意を望んでいた。
現段階で言えることは、EUも日本も、今まで米国に譲らず死守しようとしてきた項目──日本ではコメ、EUでは規制(標準)──では、譲らない形を保てる結果になった。一方で米国は、15%の関税を課すことに成功し、かつ米国に莫大な額の投資を呼び込み、米国産のエネルギー等を買わせることに成功した。「不動産王」トランプ氏らしい、見事なディールだったと言わざるを得ない。それに、ロシアが敵となり、中国が不安をもたらす今、米国が力を見せつけるのは、世界の安定に貢献する側面はあるかもしれない。
しかし、同盟国のはずなのにこのように叩かれて、損なわれてしまった信頼関係はどうなるのだろう。
日本は、危機をチャンスに変えて一層アメリカに食い込んでいき、日米同盟を深化させたいと望むだろうが、EUのほうはどうだろうか。民主主義の価値観を共有する最大のパートナーであることを望み続けるのは間違いないし、国によって違いはあるものの、この貿易戦を機に、米国からの自立・自律への希求は深まっていくに違いない。
そして何よりEUは、トランプの米国と異なり、自由貿易体制へのチャレンジを止めていない。東南アジア、そして南米。対中国をにらみながら、EUと米国の対峙はこれからも続いていくだろう。日本の舵取りは、より複雑に難しくなってゆくに違いない。
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