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「ヨーロッパは敵」認定でコロコロ変わるロシアの「国家の物語」...欧露対立は「トランプ取り合い」の様相に

ロシアのプーチン大統領と欧州委員会のフォンデアライエン委員長 From Left:photoibo-Shutterstock, miss.cabul-Shutterstock
<最近ロシア国内では「ロシアはアメリカと共に平和のために努力している」との報道があふれ、その「友情」を妨害する存在として欧州が位置付けられている>
欧州とロシアの対立が先鋭化している。
欧州は、約30の国と組織が参加すると言われる「有志連合」を結成している。ウクライナは、この連合が同国で活動を展開することを停戦の条件にするだろう。一方ロシア側は、それに断固反対し、領土割譲を条件に、中国等を含む国際的枠組みで停戦を望んでいる。
両者は今、ドナルド・トランプ大統領を取り合う状況になっている。
欧州はロシアからますます「敵」認定され、欧州連合(EU)は、戦争の主要な「黒幕」として非難を受けているのだ。
ロシアの「国家の物語」の書き替え
実はロシアがはっきりとEUと欧州を「敵認定」したのは、最近に始まったことではない。
ロシアの対外諜報庁「SVR(旧KGB)」がEUを激しく非難しだしたのは、今年の4月である。
公式サイトに、「アメリカはもはや敵ではない。残ったのはヨーロッパだ。キーウの忠実な同盟相手であり、モスクワの最大の敵となったヨーロッパである」といったメッセージを、繰り返し発信している。
そして欧州がウクライナでの戦争を無限に延長しようとしていると主張し、「トランプ大統領の平和への努力を妨害している」と非難していることを仏紙『ル・モンド』が報じている。
これは、欧州での二つの出来事に対する反応だろう。一つはEUが防衛力の強化を目指して、3月に発表した「ReArm Europe(欧州再軍備計画)」だ。
もう一つは、同じく3月にフランスとイギリスが主導して「有志連合」を結成し始めたことだ。特に軍隊の派遣の計画にロシアは最初から猛反発している。
ロシアは今、国家の物語を再構築せざるを得なくなっている。
ソ連が冷戦に敗北して崩壊したのは1991年のことだ。その9年後から今まで四半世紀も権力の座に就いているウラジーミル・プーチン大統領は、欧州とアメリカを分断しようと努力してきた。アメリカを排除して、EUと対等な立場で共に欧州をつくることを望んできたのだ。
EUのことは経済組織として見てきたが、軍事的に欧州がいつまでもアメリカに従属しているのを見て、見下すようになってきた。そして今や明確に「敵」となっている。
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