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「ヨーロッパは敵」認定でコロコロ変わるロシアの「国家の物語」...欧露対立は「トランプ取り合い」の様相に
SVRは、公式サイトにウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長を、血まみれの爪を持つ獣の姿で描いたポスターを掲載した。そしてこれは「ユーロファシズム」を予兆するものだと主張した。今や「ナチス」はウクライナだけではなく、欧州も同じだというわけだ。
ロシアの独立系メディア『メドゥーザ』(現在亡命中)は、「正気を保ちたいなら、この文章を読まないで下さい」と前置きした上で、SVR発表の文章を翻訳して掲載した。
見出しには「ユーロファシズムは、80年前(ナチス時代)と同じように、モスクワとワシントンの共通の敵である」とあり、特にイギリスとフランスを批判している(『メドゥーザ』が翻訳した内容はこちらで確認できる)。
植民地時代やナチスの時代の自分たちの過ちを、人権の観点から絶え間なく批判するヨーロッパ市民がいたからこそ、自分たちの社会を根底から変えて、今の人権と平等を尊ぶヨーロッパ社会をつくりあげたことなど、まったく無視している。
以下、内容を抜粋する。
アメリカの保守派は、人道に対する罪がイギリスのエリート層の血に流れていること、今日のイギリスの「自由主義的帝国主義」はファシズムよりも破壊的であることを知っている。英貴族とナチスの密接な関係はよく知られている。
フランスは、(18世紀に革命反対派を片っ端からギロチン送りにして恐怖政治を敷いたロベスピエールの)ジャコバン派やナポレオンといった独裁政権を繰り返し受け入れてきた国だ。ナチスを模した独自のSS部隊(親衛隊)がフランスに存在したことを忘れてはならない。
ワシントンがブリュッセル(EU)から離れていくにつれ、徐々に再びモスクワに接近しつつある。歴史的にも両国は、スエズ危機やクリミア戦争など、パリとロンドンに対抗するパートナーとして協力してきた。外国のアナリストの中には、今日、米露が再び協力して、より広範な世界的紛争を回避し、イギリスに煽られたウクライナや狂乱した欧州諸国の挑発に対抗することを期待する意見がある。
※筆者注:19世紀のクリミア戦争は、看護師ナイチンゲールの活躍が有名だが、アメリカが関与した形跡は見当たらない。
そして6月になると、ドミトリー・メドベージェフ安全保障会議副議長が、痛烈なEU批判をした。ロイターは、彼はEUが戦争防止を目的とした経済ブロックから政治化された反ロシア組織へと変質し、徐々に軍事ブロックへと変貌していると指摘した、と報じた。
「現在のブリュッセルはロシアの真の敵だ。現在の歪んだ形態のEUは、NATOと同様に、私たちにとって脅威だ」とテレグラムに投稿したという。
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