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「ヨーロッパは敵」認定でコロコロ変わるロシアの「国家の物語」...欧露対立は「トランプ取り合い」の様相に
ロシアとアメリカの友情を妨害する欧州
最近のロシアは、「我が国は、アメリカと共に平和のために努力している」という立場をとってきた。
長年クレムリンは、アメリカはロシアの富を奪い広大な領土を分裂させようとしていると描いてきたが、最近ではすっかり変化したようだ。
特に歓喜に沸いたのは、8月15日、米アラスカ州でトランプ大統領とプーチン大統領の会談が行われた時だ。
ロシア国営テレビ「チャンネル1」の朝のニュース番組では、司会者は「世界中の新聞等とテレビチャンネルで報じられている」と喜んだ。まるでこの3年間の孤立を払拭したかのように。
さらに、英紙『ガーディアン』は、番組ではトランプ大統領が空港で首脳を出迎えたのはこれが初めてのケースだと述べた、と報じた。
また、ロシアの国営メディアが発信した動画がソーシャルメディア上で拡散されている。ある映像は前線で撮影した風で、ロシアとアメリカの国旗を掲げた装甲兵員輸送車を映している。別の動画では、両国の国旗をまとった若いカップルが過去の二国間協力の映像を背景に踊る様子が描かれている。
ただ、米露で経済協定を結ぶ予定がキャンセルされたことは報道されなかった。
会談の後、プーチン大統領は「ヨーロッパ人が挑発や裏工作で、進展を妨げないように願っている」と述べた。
3日後の18日には一転して、トランプ大統領はホワイトハウスで、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領と欧州首脳たちと会談をすることになった。
ロシアのマスコミは、皮肉に満ちた口調でこの転回について語っている。
クレムリンに近い日刊紙『イズベスチヤ』は、「ブリュッセル(EUの首都)とキーウが、平和の最大の障害だ」と主張しているという。
ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、「ロシアに攻撃的な仏・英・独・EU・NATO首脳の連立チームが、方向性を失ったゼレンスキー氏とウクライナを貴重な人質にして、自由にさせない」とテレグラムに投稿した。
状況は、その後さらに大きく変化した。24日、国連安全保障理事会の場で、ロシアとアメリカははっきりと対立した。つい2週間ほど前のアラスカとは大違いである。しかしトランプ大統領がプーチン大統領と完全に反目したようには見えない。
「ロシアはアメリカと共に平和のために努力している」というプロパガンダは、どう落とし前をつけていくのだろう。
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