ニュース速報
ビジネス

アングル:「高市ラリー」再開か、解散検討報道で思惑 リスクは中国・為替

2026年01月10日(土)18時47分

ファイル写真:2025年12月30日、東京証券取引所で行われた2025年取引終了セレモニーでスピーチする高市早苗首相。REUTERS/Kim Kyung-Hoon/File Photo

Noriyuki Hirata

[東‍京 10日 ロイター] - 高市早苗首相が衆院解散の検討に入ったと伝わり、週‌末夜間の日経平均先物が急騰しドル/円は上昇した。「選挙は買い」の経験則(アノマリー)に則った動きといえ、政策期待が株価を押し上げる「高市ラリー」再開の思惑が出ている。一方、足元で日中関係が悪化するなか、中国の警戒感を高め‌かねないとの懸念もくすぶる。

報道通り早期の解散と​なれば、投資家の株高への期待の盛り上がりは「いつも(の選挙)以上だろう」とマネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストはみている。

日経平均先物は9日夜、高市首相の解散検討を伝えた一部報道を受けて急進した。5万2200円付近で推移していたシカゴ日経平均先物円建ては、報道後には一時5万3800円台に急上昇。思惑が後退するような報道がなければ、連休明けには株高が先行しそうだ。

高市氏の政策への思惑は、株高を促してきた「実績」‌もある。

2025年9月に石破茂前首相が退陣表明して以降、高市ラリーの動きが強まった。10月の自民党総裁選での高市氏勝利を織り込みながら株高に弾みがつき、首相就任後の11月4日には取引時間中の史上最高値5万2636円をつけた。この間に日経平均は24%上昇した。

国内メディアの世論調査では、高市内閣の支持率は発足以降6─7割を中心に高水準を維持している。早期解散で与党が勢力を増すとの思惑を促し、成長戦略を軸とする政策の実現可能性が高まるとの期待感につながりやすいともみられている。

高市政権は17の戦略分野を示し、これまでも防衛やエネルギーなど関連銘柄は物色されてきた。その多くは高値圏にあるが「必要に応じて財政出動するとの思惑から、一層、物色されるのではないか」と三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストはみる。

<カギ握る「変化」への思惑>

これまで、選挙で「変化」の気運が高まったケースは大相場になった共通点が​ある。2005年は郵政民営化、09年は政権交代、12年は政権交代とアベノミクスが、それぞれテーマになった。とりわけ05年⁠と12年は、選挙後も株高基調が継続した。

今回はどうか。「責任ある積極財政」を掲げる高市政権について、ニッセイ基礎研究所の井出真吾チー‍フ株式ストラテジストは、供給力を高め将来の賃上げを確実にするような投資を促そうとしている点が大きな「変化」だと指摘し「こうした投資は3年後には日本の供給力の向上につながる」との見立てを示す。

小泉氏や安倍氏の際と異なる点としては、政治とカネの問題などで自民党が少数与党になっていることがある。この点、早期解散・総選挙なら高市氏の支持率の高さがけん引し「議席数は近年ないぐらい回復するのではないか。そうなれば政策も進めやすくなる」(マネ‍ックスの広木氏)との見方がある。

日本株への影響力の大きい海外投資家からの高市氏への認知は小泉氏や安倍氏ほどに‍は広がっ‌ていないとの見方がある一方、「議席数が大きく伸びれば勝利と受け止められ、政権安定への思惑から‍海外投資家もポジティブと受け止めるだろう」(三井住友DSAMの市川氏)とみられている。

<為替介入や日中悪化のリスク>

目配りする必要のあるリスクの一つは、政府による為替介入だ。早期解散検討の報道を受けて一時158円台まで円安が進んでおり、ドルが160円方向へ動けば介入警戒が強まりやすい。介入で円高が促されれば、株高機運も冷や水を浴びせられかねない。

日中関係の悪化もリスク要因だ。中国政府は、高市首相の台湾有事を巡る国会答弁を批判し、中国国民に日本への渡航自粛を求めたり、軍民両用(デュ⁠アルユース)品目の対日輸出規制強化に動き、株高機運に水を差してきた経緯がある。

早期解散で政権基盤が強まるようなら、中国側が警戒を強めかねないとの見方は根強い。「選挙で勝つとなると、(中国の反日姿勢が)エスカレートして⁠くるリスクがある」とマネックスの広木氏は話す。

もっとも、これまでの中‍国の出方については「政治的な圧力をかけるにとどまり、経済的なダメージを与える趣旨はなさそうだ」(三井住友DSAMの市川氏)との見方もある。輸出規制にしても自国の関連企業の業績に響きかねない面があるほか、半導体製造装置など日本製品に依存する分野もあると市場では意識されている。​中国政府は後日、軍民両用品の輸出規制強化について、民生用途の輸出には影響しないと説明した。

選挙情勢にも目配りは必要になる。自民党が議席を増やし、政権運営が進みやすくなることへの期待が市場にはあるが、連立を組む日本維新の会や連立入りが取りざたされる国民民主党と自民党との間では「選挙区調整には時間が足りず、自民党がどこまで議席を増やせるかはわからない」とニッセイ基礎研の井出氏は話している。

ロイター
Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:百貨店が「体験型ショッピング」に活路、客

ビジネス

アングル:「高市ラリー」再開か、解散検討報道で思惑

ビジネス

トランプ米大統領、クレジットカード金利に10%の上

ビジネス

関税返還となった場合でも米財務省には十分な資金=ベ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画をネット民冷笑...「本当に痛々しい」
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 6
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 7
    美男美女と話題も「大失敗」との声も...実写版『塔の…
  • 8
    決死の嘘が救ったクリムトの肖像画 ──ナチスの迫害を…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    飛行機内で「マナー最悪」の乗客を撮影...SNS投稿が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 6
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 7
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 8
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 9
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 10
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中