村上春樹は「どの作品」から読むのが正解? 最初の1冊は「絶対コレ」...「日本流」に読むための4ステップ
MURAKAMI IN FOUR STEPS

NOOR RADYA BINTI MD RADZI/SHUTTERSTOCK
<日本の読者と英語圏の読者では村上作品との「出会い方」が違う──イギリスの研究者から見た、村上春樹との「正しい出会い方」>
初めて村上春樹を読もうというときに、40年以上の創作活動のどこから読めばいいか、迷うのも無理はない。
しかも日本語と英語の読者では、村上春樹を読むという体験の背景も時系列も大きく異なる。
村上が初期の作品を執筆していた頃、日本はバブル経済の真っただ中で、ヨーロッパは鉄のカーテンで東西に分断されていた。
一方、村上が英語圏で旋風を巻き起こした1990年代の終わりは、日本は既に経済大国の座を明け渡し、冷戦の緊張は過去のものになっていた。
そこで、村上作品を「日本流に」読みたい英語読者のために、4つのステップを提案しよう。
1.『ノルウェイの森』
最初はこの一冊しかない。一人称で語る孤独な男性主人公はその後の村上作品の象徴となるが、『ノルウェイの森』はさまざまな意味で「典型的な村上」ではない。物語の舞台も、後の作品に比べると現実に近い世界だ。
それでもこれを出発点に選んだ理由は、日本語読者の多くがこの作品で村上を知ったから。
日本が(少なくとも表面的には)隆盛を極めていた時代に、死と喪失と後悔があふれるこの小説がなぜ多くの人に受け入れられたのか。当時の世の中を想像しながら読んでみよう。
2.『象の消滅』『めくらやなぎと眠る女』
次は短編を。英語版の短編集として編まれたこの2冊は、数多くの作品から英訳向けにえりすぐられている。
初期から中期にかけての作品が幅広く収録されていて、村上の多様なスタイルを俯瞰できる。女性の語り手や三人称の作品もあり、村上ファンにはおなじみの男性一人称と対照的だ。
3.『ねじまき鳥クロニクル』
英語圏で村上の存在を確固たるものにした作品だ。語り手は、何かを捜している男性という典型的な村上流。本作の主人公は最初は飼い猫を、そして妻を捜す。
先の2つの短編集に収められたいくつかの作品が、この長編の前段になっていることに気付くかもしれない。短編と長編が緩やかにつながっているのは、村上作品によく見られる構造である。
『ねじまき鳥』を読む前か並行して、ようやく英訳された短編『加納クレタ』を読んでほしい。『ねじまき鳥』に登場する加納クレタという女性を、日本語読者は先に知ることもできた。
4.『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』
日本語では一人称の「I」に複数の言い方があり、この作品には「私」と「僕」の2人の語り手がいる。英語に翻訳するのは難しいが、「私」のパートは過去形、「僕」のパートは現在形で表現されている。
夢の中のような世界をさまよう物語において、語り手が2人いることにどんな意味があるのか。そして、この作品から約40年を経て書かれた『街とその不確かな壁』へと、どのようにつながっていくのだろうか。
Gitte Marianne Hansen, Reader in Japanese Studies, Newcastle University
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

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