コラム

菅政権の「やっているふり中東外交」では、日本の国益を守れない

2021年08月26日(木)17時06分

イスラム法統治が始まれば、近代的な人権という概念自体が国全体から失われる。最大の被害者になるのは女性や子供、そして宗教マイノリティーだ。

イランはアフガニスタンにも代理勢力を有し、タリバン政権との「外交」を志向している。アフガニスタンでもイラン製のドローン部品は発見されている。既にタリバンと「外交」関係を構築した国には中国がある。イランは中国などと共に反米・反民主主義国家としてタリバンを支えていく可能性がある。

日本の常識は中東では通用しない。機嫌を損ねなければイランが親日国家でいてくれるはずだという思い込みは、妄想にすぎない。湾岸地域におけるイランの暴力を見て見ぬふりをすることは、イランの暴力の共犯者であることに等しい。

イランの暴力と正面から向き合う気などさらさらなく、従来の融和政策を続けるだけなら「平和と繁栄へのコミットメント」など夢のまた夢だ。国内向け「やっているふり外交」のために中東を利用したところで、もたらされる利益は何一つない。

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プロフィール

飯山 陽

(いいやま・あかり)イスラム思想研究者。麗澤大学客員教授。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。博士(東京大学)。主著に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『中東問題再考』(扶桑社BOOKS新書)。

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