最新記事

新兵器

カミカゼ・ドローンで戦況は一変 米軍「最強」の座も危うい

DRONE WARS FOR ALL

2021年4月7日(水)09時25分
ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者)
アゼルバイジャンのドローン

アゼルバイジャンの戦争パレードで披露された無人機(2020年12月) Aziz Karimov -REUTERS

<昨年のナゴルノカラバフ紛争では安価な戦闘用ドローンが大活躍。莫大な軍事力がなくても大国相手に戦える時代に>

現代の戦争では、敵軍を追跡し、殺すことがかつてないほど容易に、しかも安くできるようになった──これが昨年秋、ナゴルノカラバフ地域を実効支配していたアルメニアと、アゼルバイジャンの間で起きた紛争で、米軍の戦略家たちに突き付けられた現実だった。

アゼルバイジャンが市販のトルコ製ドローンや自爆攻撃を仕掛ける「カミカゼ・ドローン」を使って、アルメニアに勝利したのだ。

今や、安価な戦闘用ドローンが世界中の戦場を飛び交っている。そう遠くない将来、警戒心のない兵士がトイレに行こうとちょっと持ち場を離れただけで、一瞬にして空から仕留められるようになるかもしれない。

「映像を見ると戦車や大砲、部隊が、いずれも無人航空機から攻撃されている様子が分かる」。そう語るのは、5月に退役する米陸軍・非対称戦連隊長のスコット・ショー大佐だ。

アゼルバイジャンがアルメニアを完敗させたことで明らかになったのは、今は比較的貧しい国でも、立派な「空軍」部隊をほとんど市販で買えるということだ。「この紛争で、資金の豊富でない国でも複合的な戦力を用いて戦えることがはっきりした」と、ショーは言う。

「アメリカやロシアのようになる必要はない。複合的な戦力で紛争を戦うのに必要な資金は、従来考えられてきたよりも安い。米空軍のように卓越した訓練や突出した能力がなくても、局所的な対空戦や、空中戦はできる」

昨年9月末から6週間に及んだ紛争で、アゼルバイジャンはトルコ製の滞空型無人戦闘機「バイラクタルTB2」や、ターゲットを見つけると突っ込んでいくイスラエル製の自爆型ドローンを投入。これによって戦闘エリアを避けつつ、アルメニアの装甲部隊や、前線に行き着く前の後方支援部隊を駆逐していった。

アゼルバイジャンが紛争地域で占領地を拡大し、同国軍がアルメニアの輸送隊や弾薬庫を破壊するプロパガンダ映像が出回るにつれ、従来とは違う新しい軍事的アプローチが浮き彫りになっていった。

紛争終結を迎える頃にはアゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領が、破壊または獲得したアルメニア軍の装備として、250台近い戦車、歩兵戦闘車50台、ロシア製のミサイル防衛システム「S300」4台、トラック198台、自走砲17台などを列挙した。またアリエフは昨年10月時点で、トルコ製のドローンのおかげで総額10億ドル以上に相当するアルメニア軍装備を破壊できたと述べていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、習主席とオンライン会談 緊密な関係称賛

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、1月改定値は51.3 4カ月ぶ

ビジネス

英サービスPMI、1月は54.0に上昇 昨年8月以

ワールド

経産省がM&A指針で誤解解消へ、「企業価値向上」を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 3
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れるアメリカ」に向き合う「日本の戦略」とは?
  • 4
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 5
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 6
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 7
    最長45日も潜伏か...世界が警戒する「ニパウイルス」…
  • 8
    アジアから消えるアメリカ...中国の威圧に沈黙し、同…
  • 9
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 10
    ICE射殺事件で見えたトランプ政権の「ほころび」――ア…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 8
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 9
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 10
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中