コラム

インバウンド再開で日本経済に期待大。だが訪日中国人がいま少ないのは「良いこと」

2023年03月23日(木)11時45分
藤野英人

「お金のまなびば!」より

<インバウンドで景気回復するか、プロ注目の業界はどこか。コロナ禍のリストラで観光業界は人手不足だが......。レオス・キャピタルワークスの藤野英人氏と三宅一弘氏が2023年の日本経済を予測する>

2022年10月、政府はインバウンド消費5兆円超を達成するため、2025年までに集中的な取り組みを行う方針を決定した。水際対策緩和により街で訪日外国人を見る機会も増えたが、以前のような活気は戻るのだろうか。

日本の資産運用会社、レオス・キャピタルワークスが運用するYouTubeチャンネル「お金のまなびば!」で公開された「【有識者が語る】インバウンドで景気回復!?プロ注目の業界は?」では、同社最高投資責任者の藤野英人氏、運用本部経済調査室長の三宅一弘氏がインバウンドへの期待を語り合った。

インバウンド需要のピークは2019年で、訪日外国人数は年間約3200万人、直接的な消費額は約5兆円に達した。三宅氏は、

「当時の安倍晋三政権によるインバウンドの規制緩和は波及効果もあり、地方景気や地方創生に大きな役割を果たしていたが、コロナでそれもゼロになった。2023年以降、インバウンド効果により地方の景況感が改善する可能性がある」と、期待を膨らませる。

訪日外国人は戻りつつあるが、特筆すべきは、今は以前に比べて中国人観光客が少ないことだろう。これは日本経済にとって大きな痛手のように思えるが、藤野氏は「とても良いこと」と語る。

なぜならピーク時のように3000万人の外国人が来ても、今の日本には対応できるキャパシティがないからだ。藤野氏は言う。

「日本の商品は高品質で安い。評判が評判を呼び、訪日した第1陣が帰国して評判を広めたら、第2陣、3陣が来るのではないか。でも今は、コロナの間にリストラをして、ぎりぎりの状態で回している会社が多い。これから少しずつサービストレーニングをして、第2弾で中国人がやって来たときに対応できる状態にしておけば理想的だと思う」

藤野氏、三宅氏の両名が「インバウンドは大いに期待できる」と回答。では具体的に、好影響が見込めるのはどういった産業だろうか。

fujino2023023inbound-2.jpg

「お金のまなびば!」より

運輸業、観光業、流通業、人材派遣......幅広い業種にプラス

藤野氏によると、インバウンド関連で真っ先に市場が反応したのが運輸業。次いでホテルや土産店など、地域の観光に関連した会社だ。これから百貨店、スーパーなど、流通業にも消費拡大の一環として恩恵が及ぶと予想する。

「幅広い業種・産業にプラスの効果がある。人手不足が深刻な状態なので、人材派遣・人材紹介も急速にビジネスを拡大している」と、藤野氏は言う。

特に地方では、慢性的な人手不足の中で新たな需要が爆発したら対応が困難になる可能性が高い。そこで、ITや省力化、DX(デジタルトランスフォーメーション)分野での投資が活発になっているという。

プロフィール

藤野英人

レオス・キャピタルワークス 代表取締役会長兼社長、CIO(最高投資責任者)
1966年富山県生まれ。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資啓発活動にも注力しており、東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、日本取引所グループ(JPX)アカデミーフェロー、一般社団法人投資信託協会理事を務める。主な著書に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『さらば、GG資本主義――投資家が日本の未来を信じている理由』(光文社新書)、『「日経平均10万円」時代が来る!』(日経BP 日本経済新聞出版)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

G7外相、イスラエル・イラン停戦支持 核合意再交渉

ワールド

マスク氏、トランプ氏の歳出法案を再度非難 「新政党

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロで約4年ぶり安値、米財政

ワールド

米特使「ロシアは時間稼ぎせず停戦を」、3国間協議へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引き…
  • 8
    飛行機のトイレに入った女性に、乗客みんなが「一斉…
  • 9
    自撮り動画を見て、体の一部に「不自然な変形」を発…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story