コラム

インバウンド再開で日本経済に期待大。だが訪日中国人がいま少ないのは「良いこと」

2023年03月23日(木)11時45分

一方の三宅氏はサービス産業に注目する。

「日本経済はサービス経済化により、サービス関連産業の就業者数の割合が高くなっている。コロナ禍で最も大きな打撃を受け、日本経済が停滞した主要因はサービス産業の悪化。インバウンドの再開、拡大によってメリットを受け、復活の大きな原動力になるのもまたサービス産業だ。家計の給与、労働機会の拡大、所得の拡大に対してインバウンドは大きな影響を与えると思う」

さらに藤野氏と三宅氏は、良いサービスや製品を提供できる会社は円安メリットを受けていると話す。海外からのインバウンド客にとって、今の日本でサービスや商品を買うことは大バーゲンセールのようなもので、貿易収支赤字の対応に有効とされる。

円安のメリットについては、インバウンドに限らない。欧米でインフレ抑制のための金融引き締めが進むなか、日本の安い商品が入ってくることはマイナスにはならず、「90年代のような貿易摩擦が生じにくい」と藤野氏は指摘する。

「モノを作って売る日本の企業にとっては、千載一遇のチャンスだ」

fujino2023023inbound-3.jpg

「お金のまなびば!」より

インバウンドには期待大だが、突発的な事態も想定すべき

以上を踏まえて、2023年の日本経済の見通しを天気図になぞらえて予想する両名。三宅氏は「前半は雨模様もある曇り空、後半は期待も含めて晴れ予想」。

2022年の株式市場は金利が上がり、株式市場全体が大きく低迷した。今年はいよいよアメリカの物価が落ち着き、利上げが終わるとの見方が強い。「場合によれば、後半に利下げがあるかもしれない。株式市場にとって明るい話題になるのではないか」と、三宅氏は言う。

藤野氏の予想は、「晴れ時々雷」。金利状況、インバウンド景気の回復、円安メリットなどで、相対的に世界の中で日本は良い位置にいると藤野氏は考えている。しかし、ウクライナ・ショックのように、突発的な政治・軍事・経済のリスクに晒される可能性は今後も捨てきれない。

「世界の経済はつながっているので、日本も影響を受けることは免れない。何が来るかは予測できないので、思わぬ事態を想定する必要がある」

インバウンドによる消費拡大は、回復が遅れていた内需の火付け役になる可能性がある。日本経済の活性化に期待しつつも、引き続き地政学的リスクに警戒しよう。

構成・酒井理恵

●YouTubeチャンネル「お金のまなびば!」

プロフィール

藤野英人

レオス・キャピタルワークス 代表取締役会長兼社長、CIO(最高投資責任者)
1966年富山県生まれ。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資啓発活動にも注力しており、東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、日本取引所グループ(JPX)アカデミーフェロー、一般社団法人投資信託協会理事を務める。主な著書に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『さらば、GG資本主義――投資家が日本の未来を信じている理由』(光文社新書)、『「日経平均10万円」時代が来る!』(日経BP 日本経済新聞出版)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米上院議員が戦争権限決議案、トランプ氏のイラン軍事

ビジネス

NTTドコモ、 CARTAHDにTOB 親会社の電

ビジネス

パリ航空ショー、一部イスラエル企業に閉鎖命令 イス

ワールド

アングル:欧州で増加する学校の銃乱射事件、「米国特
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story