コラム

ChatGPTに見るSNS時代の口コミ戦略

2023年03月31日(金)22時23分

そういうことをFacebookに投稿したら、AIの研究者で起業家の友人が「これは計算され尽くした戦略ですよ」と連絡してきた。「Y combinatorの起業家はみんなリファラルエンジン(口コミを起こす方法)を設計するので、アルトマンが考えていないとは思えないです」

Y combinatorとはシリコンバレーの著名アクセラレータープログラム。創業したての起業家に会社を成長させるノウハウを教えるとともに、成長しそうなスタートアップに出資もしている。アルトマンとはChatGPTを開発したOpenAIのCEOのSam Altman氏のことで、Altman氏は、前職がY combinatorの代表だった。

Y combinatorのサイトを見ると、起業家のための成長戦略に関する情報を集めたStartup Libraryというデータベースがあり、その中に口コミ戦略を研究しているページもあった。この図は、テック系スタートアップがどのような口コミ戦略を取ったのかをタイプ別に区分けしたものだ。

yukawa20230331124801.png

また口コミを起こすために、まずは「おもちゃ」としてサービスを提供すべきだと主張するページもあった。最初から完璧なアプリやサービスというものはほとんどなく、多くのアプリやサービスはユーザーのフィードバックを受けながら改良されていく。最初から完璧な製品であるように見せかければ、期待通りの性能でなければ批判的な口コミになる。一方で最初におもちゃ的な使い方を提示すれば、ユーザーはおもちゃとしてその製品を楽しむ。そして性能が期待以上のものであれば好意的な口コミが起こる。なのでまずは製品を「おもちゃ」として提供すべきだ、という主張だ。

確かにY combinatorの元代表だったAltman氏が、口コミ戦略を考えていないわけはなさそう。チャット型のサービスなら、デタラメな回答でさえ「おもちゃ」として楽しんでもらえると判断したのかもしれない。

Microsoftには千載一遇のチャンス

今の言語AIは未成熟、差別用語やウソの情報を発信する──これまでにテック大手が言語AIを実験的にリリースするたびに大炎上してきた。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米政府、ブラウン大学の安全対策再検討へ 銃乱射事件

ビジネス

元の対ドル基準値、1年3カ月ぶり高水準に 元高警戒

ワールド

米ヘリテージ財団から職員流出、反ユダヤ主義巡る論争

ワールド

トランプ氏、マドゥロ氏に退陣促す 押収石油は「売却
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story