コラム

ChatGPTに見るSNS時代の口コミ戦略

2023年03月31日(金)22時23分

未熟なChatGPTが炎上しないで済んだ理由は? Cherdchai101-Shatterstock

<完璧からは程遠く、誤った答えも多いChatGPT。一つ間違えば炎上しかねないこの製品の公開には、開発したOpen AI社内でも反対論があったという。なぜリスキーな決断に踏み切ったのか>

*エクサウィザーズ AI新聞から転載

今回の言語AIのお祭り騒ぎをみていて、SNSの時代に大事なのはバズ(口コミ)を起こす戦略なんだなって思う。

AIの研究者は、ChatGPTやGPT-4だけが突出して優秀な言語AIでないことは知っている。言語AIがこの2、3年で進化してきたことも知ってるので、ChatGPTには驚かなかった。

一般ユーザーはもちろん知らないので、ChatGPTが無料公開されたときに、言語AIの現状に度肝を抜かれた。

直接AIに関係しない一般的なテック業界の人たちも、AIがこの2、3年でここまで進化していたことを知らなかったので、びっくりした。

この一般的なテック業界の人たちが、今回のバズを引き起こしているのだと思う。FacebookなどのSNSを見ると、一般的なテック業界の人たちがChatGPTに関する投稿をしているのがよく目に付く。その便利さを賞賛しているものが多いが、ChagtGPTのとんでもない受け答えを面白がって投稿するケースも結構多い。

自分の名前を入力して「この人は誰ですか」という投稿だ。そうするとChatGPTは「〇〇さんは野球選手です」「芸能人です」「物理学者です」などといったデタラメをなんの躊躇もなく返してくる。非常に多くのテック業界関係者が、そうしたデタラメな受け答えを面白がって、スクリーンショットとともにSNSに投稿している。

そういう僕も「湯川鶴章って誰ですか」とChatGPTに聞き、「日本の物理学者です。1981年に死にました」という回答をおもしろがって、ChatGPT先輩とGoogle先生という記事にしている。AIがうまく機能していないにもかかわらず、それをあまり否定的に取らずに、情報を拡散しているわけだ。

まだまだ未熟な技術であるにもかかわらず、一般的なテック業界関係者が好意的な口コミの担い手になったことは、ChatGPTにとって幸運だったと思う。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米独首脳が会談、イラン紛争や貿易巡り協議 ウクライ

ワールド

イラン中部ナタンズ核施設、攻撃で損傷も放射能漏れな

ワールド

ゼレンスキー氏、湾岸アラブ2カ国首脳と電話会談 防

ワールド

トランプ氏、スペインと全取引停止へ イラン攻撃で基
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び率を記録した「勝因」と「今後の課題」
  • 4
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 5
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 6
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 7
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 8
    人気の女性インフルエンサー、「直視できない」すご…
  • 9
    イランへの直接攻撃は世界を変えた...秩序が崩壊する…
  • 10
    「日本食ブーム」は止まらない...抹茶、日本酒に「あ…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 10
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story