コラム

瞑想4カ月で7割の人が悟りの領域に!?(TransTech Conferenceから)

2019年02月07日(木)18時00分

020703yukawa.jpg

意外なのが、「感謝」の変化が少ないこと。受講前と後とでは7%しか数値に変化がない。「PNSEに入ると感謝の思いが強くなりそうに思いがちだが、実際の変化はそれほどでもない。瞑想が万能薬ではないことが分かる」としている。

筋トレも脳トレも短期間で成果を出すことが可能

僕自身、瞑想は数年前から継続的に実践してきているので、この研究結果は非常に興味深い。個人的な感想をいくつか書いてみたい。

まず4カ月で7割の人がPNSEに入ったことには驚いた。瞑想の成果を感じれるようになるまでに、少なくとも2、3年はかかると思っていた。

しかし考えてみれば、肉体改造でもパーソナルトレーナーをつけてフィットネスクラブに毎日通えば、3カ月ほどでかなりの効果がでる。瞑想はいわば、脳のトレーニング。脳のトレーニングも、パーソナルトレーナーをつけることで、それなりの効果が出るということなのかもしれない。

また自分に合った瞑想方法を見つけることの大事さには、完全に同意。僕自身は、スローなヨガを通じた瞑想が一番簡単だし、最近ではサウナの温冷浴を3セットしたあとの休憩での瞑想が、一番深く入れるように思う。人によってはジョギングのあとの瞑想や、水泳、サーフィン中の瞑想なども効果があると思う。友人の中には瞑想の習慣がないにも関わらず、明らかにPNSEに入ってる人が何人もいる。心を静かにする習慣さえあれば、多くの人が「根本的幸福」の状態に達することができるのだと思う。

2500人の悟り人の聞き取り調査で、PNSEに入ったきっかけで最も多いのが、病気や事故、自殺未遂など、劇的な出来事。Martin教授は「自分のことを徹底的に客観視することでPNSEに入ったのではないか」という。一方で、瞑想などの自助努力でPNSEに入った人は、ごくわずか。つまり一部の宗教家を除いて、これまで悟りは偶発的なもので、悟りたくてもなかなか悟れないものだった。

ところがFinders Courseで、自分に合った瞑想方法を数カ月実践すればほとんどの人がPNSEには入れることが分かった。誰でも望めば、「欠乏の感覚」から「満たされた感覚」へと移行できることが証明されたわけだ。過度の経済競争、軍事的脅威など、現代の問題の多くは「欠乏の感覚」に端を発していると言ってもいいだろう。もし多くの人が「満たされた感覚」に移行すれば、社会問題のほとんどは自然に解決していくかもしれない。

Google社内でマインドフルネスを流行らせたChade Meng-Tan氏は、満たされた感覚の人を100万人増やしたいと考えている。TransTech Conferenceの主催者は10億人作ろうとしている。

しかし社会が大きく変化するには、4カ月の瞑想よりもさらに簡単な手法が求められている。そうでなければ悟り人10億人の時代など、まだまだ先の話だ。

次の記事では、もっと多くの人が簡単にPNSEに入れる技術の開発の最前線をレポートしたい。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

欧州評議会、ウクライナ損害賠償へ新組織 創設案に3

ビジネス

米雇用、11月予想上回る+6.4万人 失業率は4年

ワールド

ハセット氏、FRBの独立性強調 「大統領に近い」批

ビジネス

米企業在庫9月は0.2%増、予想を小幅上回る
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「日本中が人手不足」のウソ...産業界が人口減少を乗…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story