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パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

コントレックス・エパールに測定不能レベルのマイクロプラスチック ネスレミネラルウォーターのスキャンダル

奇しくも並んで積み上げられているコントレックスとエパール  筆者撮影

フランスのオンライン調査ウェブサイト「Mediapart(メディアパート)」がフランス生物多様性庁(OFB)と環境公衆衛生被害対策中央局(OCLAESP)の調査結果に基づき、「コントレックスとエパールのミネラルウォーターには、ネスレが放棄した埋立地によって水源が汚染されたため、途方もないレベルのマイクロプラスチックが含まれている」と明らかにし、「深刻な健康被害をもたらしている」と警告しています。一時はダイエットに最適な水として日本でももてはやされていたコントレックス、日本から来ていた知人が一生懸命に飲んでいたのを記憶しています。

このメディアパートの記事によれば、「ネスレウォーターズの販売するミネラルウォーター・コントレックスとエパールの水を供給する水源から、工場からの無秩序な廃棄により、衝撃的なレベルのマイクロプラスチックが検出された」とその詳細を公開しています。

一方、ネスレウォーターズは、これらの分析結果に強く異議を唱え、「これらの分析はマイクロプラスチック分析の認定を受けていない研究所によって行われたもので信用に足るものではなく、当社のミネラルウォーターは、完全に安全で安心して飲用できる」と発表しています。

ネスレウォーターズの不法廃棄と問題の放置

ネスレウォーターズは、コントレクセヴィル、テ・スー・モンフォール、サン・トゥアン・レ・パレ、クランヴィリエの4ヶ所にプラスチックボトルの違法投棄場を設け、廃棄物を処理(保管)していたとして、フランスで訴訟を起こされています。投棄量は、合計47万3,700平方メートルでオリンピックサイズのプールの126個分に相当します。同社は既に、他のミネラルウォーターに関しても、複数の問題を抱えていますが、共通して言えることは、水源地の汚染がもとになっている問題だということです。

メディアパートによると、検出されたマイクロプラスチックの濃度はコントレックスで1リットルあたり515個(mp/L)、エパールで2,096個(mp/L)に達し、これは調査員が依拠した2つの研究で湖、河川、小川の濃度の51,000倍から130万倍に相当します。これらの数値は競合他社における世界平均をはるかに上回っています。

廃棄物として投棄されたプラスチックは、マイクロプラスチック、ナノプラスチックへと分解が著しく、土壌や地下水ネットワークに浸透・拡散しているために、浄化は不可能であると調査員は述べています。

また、投棄場所には、主にはプラスチックやガラス瓶が投棄されていますが、アスベストシートなどの有害廃棄物も含まれているとのこと。数十万立法メートルに及ぶボトル状のプラスチック廃棄物が地面に直接投棄されており、土地の防水処理も施されておらず、土壌の浸透や不安定性(時間の経過や悪天候による劣化の影響を受けやすい)の監視も行われていませんでした。

そして、さらに問題なのは、この不法投棄がなんらかの問題を引き起こしそうであることをネスレが認識しつつも、それを長年にわたり、放置し続けてきたことにあります。メディアパートはこの点についても、痛烈に批判しており、ネスレ内部での「この不法投棄が水質に影響を与える可能性がある」と記した機密メモの存在も明らかにしています。

ネスレウォーターズは、1992年からヴィッテル工場とコントレックス工場を所有していますが、無秩序な廃棄物処理は1960年代から始まっていたものです。ネスレCEOはこれらの廃棄物の存在を長年認識していたことを認めています。ネスレウォーターズの担当者は、2014年には既にこれらの埋立地の存在を認識していましたが、国に報告したのは、2021年になってからのことでした。すでにこの間のタイムラグだけでも7年間が経過しています。その結果、長年にわたり、プラスチックは分解し、土壌と水を汚染していく時間がありました。裁判の予備調査を担当した司法判事が2025年1月に発表したこの報告書では、この点を痛烈に批判しています。調査官は複数の保管場所から採取したサンプルを比較した結果、特にセーヌ川で検出されたマイクロプラスチックの濃度の2万8000倍から900万倍も高いことを確認しています。

さらに他の物質(銅、シアン化物、マンガン、ニッケル、硝酸塩、亜鉛など)の濃度は世界保健機構(WHO)が定める基準値の10倍に達しており、これは浄化不可能なレベルの深刻な脅威であると説明しています。

ネスレウォーターズのこれまでのミネラルウォーターに関するスキャンダル

とにかく、ここ数年、「違法精製処理を行っているため、ミネラルウォーターが実はミネラルウォーターではなかった!」という暴露から、スキャンダルが絶えないネスレウォーターズのこのスキャンダルの経緯から、この問題を考えてみました。

近年では、2024年1月にル・モンド紙とラジオ・フランスの捜査部門による調査により、汚染を隠蔽して販売を続けるために違法に水をろ過して精製していたことが発覚。ネスレウォーターズは細菌汚染に対処するために禁止されていた処理を行っていたことを認め、裁判を回避するために200万ユーロの罰金を支払うことに同意しました。しかし、この200万ユーロは、事実の隠れ蓑に過ぎず、実は、政府が2021年からこの問題を把握していたにもかかわらず、ネスレに対して法的措置をとることよりも規制自体を緩和することを選び、このための政府とネスレ間の秘密会議が2021年8月に行われていたことが発覚。大臣メモ、メールのやり取り、査察訪問報告書など、ネスレと多くの政治指導者の顧問や首相補佐官との間で政府最高レベルで多数の会合や協議が行われていたことが晒され、「大規模な欺瞞行為の背景には、フランス政府とネスレ間の秘密協定があった!」と大問題になりました。

また、今年4月には、同社の販売する「ペリエ」のボトルに新たな細菌が検出され、生産ラインが停止し、30万本のボトルが廃棄されました。ところが、同社は法律で義務付けられているにもかかわらず、保健当局への報告をただちに行いませんでした。また、このペリエ問題に関しては、現地の行政との間で強い衝突が起こり、この工場のあるオクシタニー地方保健局は、「ナチュラルミネラルウォーターとしての資格剥奪から、完全な製造停止勧告を検討する」と発表。

これに対してネスレは、「水源の水質とは無関係で単なる工場内の品質管理処置に問題があったため」と弁明していますが、これもまた後に、複数の省庁、ガール県知事、オクシタニー地方保健局の間で交わされたやりとりによると、「ネスレにとって不利なミネラルウォーター偽装に関する健康報告書がフランス政府によって、ネスレを保護するために修正されていた」ことが発覚。

とにかく、スキャンダルが起こるたびに、見られる悉く不誠実な対応。しかも、どのスキャンダルにおいても、必ず政府の加担とも言える行為が暴露されていることなどがわかります。

そもそも、ペリエにしてもコントレックスにしても、元はといえば、水源地が汚染されてきたことによるもの。このまま問題が放置され続ければ、もはやミネラルウォーターなるものを販売し続けることは、不可能になります。にもかかわらず、ネスレがとっているのは水源地保護対策ではなく、政府にすり寄って、事実の揉み消しや規制自体をかえること。消費者にとってみれば、単なる精製水ではなく、自然のミネラルを含んだミネラルウォーターを購入することは、健康意識のあらわれでもあり、健康意識の高い者たちが健康に有害なものを摂取するという欺かれ方をしているというのは、どうにも納得がいかないものです。

 

Profile

著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



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