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パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

仏婦人服ブランドPimkie SHEINとの業務提携で業界から除名の衝撃

こんなショッピングの風景もめっきり減りました・・Pixabay画像

フランスの婦人服ブランド Pimkie と中国の超ファストファッション大手 SHEIN との業務提携はフランスの繊維業界の逆鱗の渦を巻き起こし、Pimkieはフランス商業同盟(Alliance du Commerce)に加盟する衣料品小売業連盟から全会一致で除名処分を受けるという過酷な立場に追い込まれています。

それ以前から低迷を続けていた中堅規模のフランスの衣料品業界は、パンデミックをきっかけに、消費者のショッピング形態の変化が加速し、それまではそこそこに生き残っていたCamaille(カマイユ)やKookai(クーカイ)などなどのブランドの倒産を招き、低迷の一途を辿り、危機感が増していました。実際に今回、業界除名処分を受けたPimkieもこのために一度は倒産し、この超ファストファッションの犠牲になったブランドでもありました。当然、中国の超ファストファッションブランドは、これらの中規模のフランスの衣料品業界の目の敵となり、急成長を続けている中国の超ファストファッション大手SHEINやTEMUなどをなんとか排除しようとする動きが着々と進んでいましたが、そんな最中のまさかの身内の身売りともいうべき、裏切り行為をフランスの衣料品業界は許せなかったのです。

そんなフランスの衣料品業界の超アンチファストファッション排除の動きの中で、Pimkieは自社生き残りのためにSHEINとの業務提携により、SHEINの持つ世界160ヵ国に販売できるプラットフォームに乗ることができ、SHEINは、反発を買っているフランスをはじめとする欧州の衣料品業界に食い込もうとしています。

フランスの超ファストファッション排除の動きの中で・・

ファッションの国と言われるフランスの実状は、名だたるハイブランドは別として、特に中堅どころのフランスのブランドの低迷という憂き目に苦しんでいます。その原因の最たるものとして目の敵になっているのが超ファストファッションと呼ばれる中国のSHEINやTEMUなどのネットを媒体とするブランドの大躍進にあり、現在、フランスには年間8億個以上の150ユーロ以下の小包が中国から到着しているそうで、これは昨年の2倍という数字で、フランス経済相は、今年の初めに、これまで免税されていた150ユーロ以下の荷物に対して課税することを発表しています。

経済相は、この課税について、「倫理、地球、公共財政の尊重」を掲げ、フランスの環境移行機構(ADEME)などのデータを引用し、飛行機で輸送される荷物(中国からの荷物は特にこのケース)は、船で輸送される場合よりも100倍多くの二酸化炭素を排出していることなど環境面からのアプローチなども理由付けにしていますが、実際のところは、フランスの同業界を脅かす存在である中国の超ファストファッションのブレーキとして、考えていると思われます。

また、今年の春先には、フランス上院に「アンチ超ファストファッション法」なるものが提出され、可決されていますが、この法案は、排出量、資源利用、リサイクルの可能性などファストファッション企業が販売する製品の環境への影響を評価するエコスコアシステムを導入し、最も低いスコアを獲得したブランドには、商品1点あたり最大5ユーロの税金が課せられ、2030年には10ユーロに増額される可能性もあるというものです。また、この法には、超ファストファッションの広告禁止やオンラインで宣伝するインフルエンサーへの制裁なども含まれています。

一応、もっともらしい立て付けはあるものの、実際のところ、この法がターゲットにしているのは、主に2つのブランド(SHEIN,TEMU)であると言われており、フランス国内で生産・販売されている衣料品の少なくとも90%を占めるブランドは、除外されています。この法案は、まだ上院で可決しただけで、完全に決定されたわけではありませんが、中国の超ファストファッションにブレーキをかけるためのものであることは明白です。

そんな最中に沸き起こった今回のまさかのフランスの婦人服ブランドと業界全体が目の敵にして、なんとか排除しようとしているSHEINとの業務提携が業界に衝撃を与えたのはまことにもっともなことでもありました。

フランスの消費者動向の変化

このPimkieとSHEINの業務提携に、「この提携は真の裏切り行為であり、犯罪的な陰謀である!」、「我々のビジネス全体を弱体化させるものであり、悪魔との共謀だ!」と強い言葉で怒りを露わにしているフランスの衣料品業界ではありますが、実際の消費者の動向は確実に変化しており、特に若年層に至っては、品質そのものは二の次で、なんなら、ほぼほぼ使い捨てでも構わない、とにかく安価でそこそこのセンスのものを上手く組み合わせて着用できるもの、また、ハイブランドのコピーのような商品でも一向に意に介さないどころか、偽物であることを隠しもしないで堂々と身に着けて、気軽に楽しめる層が増していることも見逃せない事実でもあります。

そもそもファッション業界は、次から次へと流行の波が来て、それに乗って行かなければ生き残れない世界。この若年層の消費者動向の変化は、見逃せない現実でもあります。

このような動向に対して、環境問題がどうのとかいう理屈は絵空事にしかならず、実際の購買動向に響くものになり得るとは、考えづらいことでもあるところは、フランスのこの業界からしたら、頭を抱える現実でもあります。

今回、裏切り者とののしられ、業界から除名されたPimkieがどのような道を辿るのかはわかりませんが、この業務提携が成功すれば、第2のPimkieが続々と後に続く可能性もないとは言えません。そうすれば、フランスの衣料品業界は、ますます危機的状況に陥りかねないのですから、業界としても必死なわけです。

そんな中、ユニクロは、この微妙な中堅どころ?の衣料品業界でフランスでも大成功しており、ネットでの販売はもちろんのこと、日本よりも若干高級感を漂わせるイメージの店舗展開を進め、たしかな品質を武器に、また、若干ファッション性も高めながら、続々と店舗を増やし続け、近年では珍しいこの業界のフランスでの成功の部類に入るブランドに成長しています。

非常に難しい、また過渡期を迎えているフランスのファッション業界の動向には今後も目が離せません。

 

Profile

著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



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