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農・食・命を考える オランダ留学生 百姓への道のり

森田早紀|オランダ

最近、わからなくなったこと ~オランダの百姓一揆と、環境政策と~

(筆者撮影 2022年8月 オランダの田舎の風景)

オランダの農業従事者がデモを起こしている。
食を支える職業として、もっと社会の中で尊敬されるべきだと。
環境政策が、農業に対して厳しすぎだと。

特に、窒素排出に関する規制は厳しい。

家畜の糞尿に含まれる窒素分が、土や水や空気を汚染し、花々を枯らし、野鳥を殺しているとして、オランダ政府は飼料に含まれるたんぱく質を減らすように求めたり、家畜小屋の窒素排出上限を定めたりしている。

しまいには、農家の強制買収と呼ばれる策を実施(実際には「強制」ではないのだが、そう思われるのも仕方がないのかもしれない)。3.5億ユーロもの予算を用意し(日本円にして500億円弱。2023年1月現在の為替レート)、畜産を営む権利を手放した農家には、市場価格等に応じて支払いをするというものだ。詳しくは別の記事にまとめようと思う。

オランダ政府の意図はなんだろう?表建は、環境破壊や気候変動の対策のため、他産業(住宅・エネルギー等)に使う土地を確保するため、など。本当にそうか?

 

農家がいなくなったら食料もなくなるぞ!と怒り、自分たちの未来の不透明さに怯える農業従事者がデモを起こしたり。それを国民の過半数は支持している。
でも、今のオランダ型農業のままでは環境も人も破壊されると、小中規模でオーガニック野菜を作って国全体でのオーガニック・ローカルへの移行を訴える農家がいたり。市民が共同で農地を買って耕す活動も全国に広がっている。
その一方で、実家の営む酪農業を売らなければいけなくなり、落ち込んでいるオランダ人のクラスメイトがいたり。
世界で人口が増加し、食糧生産も気候変動などによってふらつく中、農業大国オランダの農家潰しをするのは世界的な飢饉を意図的に招いているのではないか、という人もいたり。
でも、今のきわめて工業的な農業・食品産業の在り方では、私たちの健康も地球の健康も侵されている、と感じる人もいたり。

最近わからなくなったこと。
誰のために、何のために、オランダ政府はこのような環境政策を施しているのでしょうか?
このような対立や混乱を生み出してしまう、オランダの・世界の農業や経済はどのような構造をしているのでしょうか?

  

ますますわからなくなること。

SDGs SDGs SDGs SDGs
サステナブル サステナブル エシカル エシカル...

どんどんと薄っぺらくなっていく言葉。どんどん溢れていく「環境にやさしいです」ラベル。大量生産・大量消費モデルが続く社会で叫ばれる、そういう社会の歯車をせっせと回している会社が訴える、SDGsって何だ?

タンザニア出身の友達が「ヨーロッパって、環境環境とか言って輸入品に対する規制を強化したり、各国の温室効果ガス削減目標などの取り決めをリードしているけれど、今まで散々自然と人を虐げてきたのは彼ら自身だよね」と話してきた。うんうん、そう思うのもわかる。

ここ数年ずっとわからないこと。
今、世界で騒がれているサステナブルって何ですか?
そもそも、現状の壊れた社会を持続してもしょうがないですよね。

  

最近、知り合いの農家さんに御呼ばれして、ザリガニを食べた。田んぼに大発生して駆除に悩んだ末にたどり着いたのが食すること、だったそうだ。カニのような出汁がでて、意外と美味しかった。

近年、代替肉・代替たんぱく質やスポットライトを浴びている。その中には昆虫食が含まれるし、培養肉やフェイクミートもある。家畜は環境に悪いから、というのが理由の一つらしい。

知り合いの農家さんのやっていることには、命の循環と、命への感謝があるように感じる。一方で、サステナブル界隈でもてはやされている新食品は、わざわざ完全管理下に置かれて集約的に生産されている。
これは、今までの畜産と何が違うのでしょうか?またしわ寄せが来ますよね。根本は、同じですよね。どこか腑に落ちません。

  

ずっとわからないこと。

農業には、慣行栽培・有機栽培・自然栽培など色々な栽培方法があるし、その中にも派閥みたいなのが山ほどある。

私の実家は水田地帯にあるのだが、毎年夏になると、ヘリコプターによる農薬の空中散布が行われる。良かれと思って撒いているのだろう。だが、薬剤は用水路に流れ込み、ザリガニは一晩にして消える。そんな夏の思い出。

トキが舞い降り、ホタルが遊び、クモが田んぼ一面に美しい巣を張り巡らす田畑に憧れる。子どもたちが駆け回り、泥をちょっと食べちゃった、田んぼに寝転がっちゃった、ということがあっても安心な土や水や空気を守りたい。

日本の農林水産省は、2050年までに有機栽培の農地を25%に!(現状0.5%)という目標を掲げた。同様に、オランダ政府は、2030年までに15%(現状4%)という目標を掲げている。自然栽培の考え方ややり方が私自身は好きで、私たちの心身の健康や地球のことを考えると、オーガニック・有機へ移行していくことは必要だと思う。

でもね、やっぱり草刈りは時間がかかるし重労働で大変。ご年配の方ばかりの日本農業。ただでさえ増え続ける耕作放棄地。草管理に除草剤を使いたくなってしまうのは、わかる気がする(その他農薬も)。いくらオーガニック需要が都会で伸びようが(もちろん需要があることは経営的に不可欠なのだが)、たぶんそれだけでは本当のオーガニックへ移行はできない。有機農地の面積だけ増やしても、たぶんそういうことではない。では、どういうことで、どうすればよいのでしょうか?

  

最近わからなくなったこと。

この間、インドネシア出身の友達と久しぶりにビデオ通話をしたら、委託された研究プロジェクトの内容に憂いていた。インドネシア政府が小規模農家に化学肥料を勧める政策を取るらしい。経済的に豊かではない小規模農家たちは、政府の言いなりになってしまうだろうと。化学肥料を使うこと、それは外部依存になるし、長期的な影響が環境や人体に残るかもしれない。

  

昨今の日本では、有機農法やら農福連携やらが注目を集めている。補助金も出回っている。

補助金って、何?それに振り回されて、企画書を書かされ訂正させられ、開始後の軌道修正は実質認められず。いい響きの言葉をうたう形だけの団体や、補助金がなくなれば消えていく団体も少なからずあるのでは。

国には頼っていられない、補助金がなくなっても経営をまわせるようにしたい、自立した地域を築きたい、という方々にも出会った。そのようにすることは、今のように国があまり当てにならない社会では重要だと思う。だからといって、それらの取り組みを破壊するような方向に補助金をまわしてほしくない、税金を変なところに使ってほしくない。

最近わからなくなったこと。

政策に口出しをして、変えようとする意味ってなんでしょうか?
一つはきっと、消極的に表現すると、邪魔をされないようにすることなのかもしれません。

 

最近わかった(と思っている)こと。

みんな、それぞれの正義があって戦っている。アメリカ映画のように、ヒーローと悪役がわかりやすく対立構造を成しているわけではない。善悪は、私たち一人一人の世界の見方から自ら作り出している。

  

最近わからなくなったこと。

 

最近わかったこと。

 

わかりたいこと。

もっともっと、世界のお金の流れや権力構造、歴史を知りたい、学びたい。
きっと、東京23区の路線図よりもごちゃごちゃなのだろうけれど。

 

わかっている、と思っていること。

真実は一つではないし、この世界は白黒ではなくグラデーション。
どこかで妥協し、バランスもとらなければいけない。
でも、そんな、バランスが必要だからという論で丸め込まれ、型にはめ込まれたくはない。

 

最近わかったこと。

考えたらわかるとは限らないということ。
でも、考えることは辞めたくない、いくら答えのない世界だからと言って。
だから、どうしても考えてしまう。

 

わからないからこそ、大切にしたいこと。

考えることはたくさんあって、議論の荒波に飲み込まれそうになることもあるかもしれない。
でも、どんなに小さなことでも愛おしく思う心のゆとりと感性は持ち続けたい。
考えることばかりで、感じることを疎かにした成れの果てが、今の社会でもあると思うから。
自分が大切にしたいことを、自分なりに大切にしながら。
考えることを辞めずに、そしてそれ以上に、感じることを辞めずに。

  

  

かなり歯切れの悪い、丸い文章になってしまいました。
それだけ、私はまだ何もわかっていないのです。
こんな私ですが、今年もよろしくお願いいたします。

 

Profile

著者プロフィール
森田早紀

高校時代に農と食の世界に心を奪われ、トマト嫌いなくせにトマト農家でのバイトを二度経験。地元埼玉の高校を卒業後、日本にとどまってもつまらないとオランダへ、4年制の大学でアグリビジネスと経営を学ぶ。卒業後は農と食に百の形で携わる「百姓」になり、楽しく優しい社会を築きたい!オランダで生活する中、感じたことをつづります。

Instagram: seedsoilsoul
YouTube: seedsoilsoul

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