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シュピッツナーゲル典子|ドイツ

芸術と自然が融合する夢の宮殿 ベンラート城と庭園 〜保存財団設立25周年を迎えて〜

Foto:norikospitznagel ベンラート城南側ファサードからの景観(本館)

デュッセルドルフ市南部、ライン川のほとりに佇む優美な宮殿「ベンラート城」。今年、この城と庭園を保全・活用する「ベンラート宮殿・公園財団」が設立25周年を迎えた。四季折々の自然と、18世紀の芸術文化が溶け合うこの場所は、今も訪れる人々の心を魅了し続けている。

選帝侯が築いた「庭園の宮殿」

ベンラート城は、1755年にプファルツ選帝侯カール・テオドールによって、夏の離宮として建てられた。

狩猟や庭園を楽しむために設計されたこの宮殿は、建築家ニコラ・ド・ピガージュの手によって、建築・彫刻・庭園芸術を融合させた後期バロック様式の傑作として完成した。

本館と東西の翼棟、門衛の小屋、そして広大な庭園で構成され、内部には約80の部屋がある。地下通路で翼棟とつながる構造も特徴的だ。

庭園もまたピガージュの設計で、幾何学的なフランス式庭園と、自由な曲線が特徴のイギリス式庭園が融合したヨーロッパ庭園芸術の集大成となっている。城と庭園を含めた広さは、およそ61ヘクタール (東京ドーム約13個分)。

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居住空間の延長として設計された庭園。本館北側ファサードに続く庭 Foto:norikospitznagel

newsweekjp_20250621110827.jpg本館を中心に左右の翼棟、門衛の小屋、そして美しい庭園からなる、後期バロック様式の総合芸術作品 Foto:norikospitznagel

絵のように美しい背景、美術館、華麗な庭園を持つこの建物は現在、重要な記念碑であるだけでなく、活気ある集いの場として親しまれている。

newsweekjp_20250621112147.jpg ベンラート宮殿・公園財団は、2000年3月に設立され、今年25周年を迎えた Foto:norikospitznagel

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Foto:norikospitznagel

自然と調和した空間に佇むベンラート城は、世界の賓客も魅了した。過去には英国のエリザベス2世女王や、スウェーデンのシルヴィア王妃、ペルシャ国王、モナコ公国のアルベール2世も訪れている。

newsweekjp_20250622072137.jpg  挙式登記所として人気のドーム型ホール「クッペルザール」 Foto:norikospitznagel

ちなみにカール・テオドール選帝侯がこの壮麗なピンク色の宮殿を実際に訪れたのは、生涯で一度きりだったと言われている。もし彼が現在、この地を訪れる多くの観光客を目にしたら、驚くに違いない。

宮殿ネットワークを築いた...

Profile

著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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