World Voice

NYで生きる!ワーキングマザーの視点

ベイリー弘恵|アメリカ

夢を追う人が、迷わず立ち寄れる場所を〜ニューヨークでパフォーマー伊藤聖沙が始めた静かな挑戦

©Seisa Ito(掲載写真すべて)

ニューヨークの老舗キャバレー「Don't Tell Mama」で昨年、上演された伊藤聖沙さんのパフォーマンス「Wait, What?!」〜筆者が取材した記事

は、スタンダップコメディーのように一人で語り、歌い、笑いを生み出す。シンプルな構成でありながら、言葉と表現の力がまっすぐに伝わってくる。

観終わったあと、不思議と「この人は、何かしらNYでやり遂げるタイプだな」と思わせる余韻が残った。

そんな彼女が、いま舞台の外でも新たな挑戦を始めている。
それが、パフォーマーやアーティストが「今の自分に必要な情報」に出会える場、「The Artist's Stop - a checkpoint for artists(文中ではチェックポイントと記載)」というプロジェクトだ。

ニューヨークには無数のレッスンやワークショップがあり、チャンスも情報もあふれている。けれど、実際にこの街で活動しようとすると、「本当に必要な情報ほど、意外と手に入りにくい」という現実に直面する人は多い。

自身もまた、海外からニューヨークに渡り、迷いながら進んできたひとりだった。
だからこそ、同じように立ち止まる人たちのために、"旅の途中で立ち寄れる場所"をつくろうと動き出した。

舞台に立ち続けながら、あえて「支える側」にも踏み出した理由とは何だったのか。

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――聖沙さんが新しく立ち上げたサイトを拝見しましたが、パフォーマンスだけでなく、ITのお仕事もされていた経験もあるからか、無駄がなくわかりやすいサイトですね。どんな活動を始めていらっしゃるのですか?

去年は特に「土台づくり」の年でした。自分の作品をシリーズで続けたいという思いもあるし、企画を大きく育てたい気持ちもあって。アイデアが増えれば増えるほど、形にするための準備も増えていきました。

タップってアメリカのカルチャーじゃないですか。でも、音楽は日本のもの、少しクラシカルなものを使って、国を超えて楽しめるものを作れたらいいなと思っていて。日本から来てアメリカで活躍しているピアニストの方とも、いつか一緒にやりたいねって話もしています。

――実現には資金も必要になりますよね。

そうなんです。ちゃんとした人を入れて、ちゃんと報酬も出して、という形にすると、思った以上にコストがかかる。なので今はNYのパフォーミングアーティスト用のグラント(助成金)を申請していて、結果次第で2026年に形にしたいと思っています。

――そしてもうひとつ、新しく立ち上げたのが「チェックポイント」ですね。

はい。ニューヨークって、トレーニングや学校は本当に揃っているけれど、「実践的に必要な情報」って意外とまとまっていないんです。私も海外から来て、情報を集めるのが本当に大変でした。だからそのギャップを埋めたくて。

――なぜ"チェックポイント"という名前に?

アーティストって旅人と似ていると思うんです。目的地が同じでも、景色を楽しみながら行きたい人もいれば、とにかく最短で行きたい人もいる。必要な情報も、選ぶ手段も違う。パフォーマーも同じで、例えば「『Wicked』のエルファバになりたい」といっても、本当のゴールがそれなのか、その先に別の夢があるのかで、動き方は変わってくる。だから"今の自分に必要な情報に立ち寄れる場所(チェックポイント)"を作りたかったんです。

――「情報提供の場」というのは、どういった情報をシェアするのですか?

はい。コーチングというより、その人のジャーニー(だどってきた道のり)の中で"今必要な情報"を提供できる場所にしたい。セミナーも、ただ成功談を並べるより、「実はここが大変だった」とか、普段聞けないリアルな話を届けたいと思っています。

少額でも、ギャラはきちんと払っています。パフォーマーって自分がプロダクト(商品)みたいなものだから、常にコンディションを整えて、その上でパフォーマンスする。でも現実として、報酬が十分じゃないことも多い。だからこの業界の中で、少しでも良い循環(エコシステム)を作れたらいいなと思っています。

――利用者はどんな人が多いですか?

パフォーマーが多いです。あとは、パフォーマーを指導している方も。国籍は問わずインターナショナルですが、日本語でのサービスができることもあって日本の方も多いですね。日本語のみのセミナーも行っています。

――ご自身のパフォーマー活動は、これからどうしていきたいですか?

もちろん続けます。実は今年に入ってもうオーディションも受けていて、ずっとやりたかった役のコールバック(二次審査の連絡)が来ているのがうれしくて。「出られれば何でもいい」じゃなくて、本当にやりたい役を、良いチームでやりたい。そこは大事にしたいです。

――2つ(創作+サポート)を並行するのは大変では?

大変です。去年は休む暇がない感じでした。サイトを作って、マーケティングもして、ゲストを選んで、セミナー準備もして、オーディションや他に関わっているプロダクションもあって。夜中に作業することも多かったです。でも、いろんな人と出会うたびに「この人となら、こんなことができるかも」って、新しいアイデアが生まれてしまうんですよね。

――最後に、ニューヨークで活動する意味をどう感じていますか?

ニューヨークは、いろんな活動ができる土壌がある。そして何より、ちゃんとサポートしてくれる人がいる。一度つながると真剣に応援してくれて、いい意味で背中を押してくれる人が多い。その感謝は忘れたくないなと思います。

パフォーマーの拠り所となるオアシスのような存在を目指す伊藤聖沙さん。その活動は、ペイ・フォワードという思想のもと、次の世代へとつながる良い循環を静かに広げている。

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Profile

著者プロフィール
ベイリー弘恵

NY移住後にITの仕事につきアメリカ永住権を取得。趣味として始めたホームページ「ハーレム日記」が人気となり出版、ITサポートの仕事を続けながら、ライターとして日本の雑誌や新聞、ウェブほか、メディアにも投稿。NY1page.com LLC代表としてNYで活躍する日本人アーティストをサポートするためのサイトを運営している。

NY在住の日本人エンターテイナーを応援するサイト:NY1page.com

ブログ:NYで生きる!ベイリー弘恵の爆笑コラム

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