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シリコンバレーと起業家

内藤聡|アメリカ

スタートアップが個人から5億円を調達できる時代に

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──前回は株式投資型クラウドファンディングのシンジケート投資について話しました。最近だとAngelListがRoll Up Vehiclesという取り組みを発表していますが、これもエクイティ型クラウドファンディングの延長なのでしょうか?(聞き手:中屋敷 量貴

過去記事:「株式投資型のクラウドファンディングによるスタートアップ投資の民主化

内藤:Roll Up Vehicles (RUV) は今年2021年の3月くらいにAngelListがスタートした取り組みで、最大250人の適格投資家から契約書上ではひとつのサインで資金を集めることができます。有名なスタートアップだとMainStreetItalicが既にRUVを利用して資金調達をしたそうです。通常のシンジケート投資との違いは、スタートアップ側が資金調達のラウンドに参加する投資家を選べる点です。前回お話したように、シンジケート投資では通常スタートアップ側が参加する投資家を選ぶことができません。

また、これまでスタートアップが複数のエンジェル投資家から資金調達をする際には、一人ずつ契約書にサインを貰う必要があったのですが、RUVではこの煩雑なやりとりをAngelListが全て一つの契約書にまとめて行ってくれるので投資家との契約書のやりとりが楽になります。この作業を8,000ドル程度(約80万円)で行ってくれるのがRoll Up Vehicleという仕組みです。

RUVが活用されるケースは大きく分けて2パターンあると思います。一つは多数のエンジェル投資家から資金を集めるケース、もう一つはその会社のファンなどのコミュニティから資金を集めるケースです。とりわけ、後者のコミュニティを起点に資金調達する方法はクリエーターエコノミーという時代背景から最近注目されている印象があります。スタートアップ側は投資家として支援してくれるコミュニティのファン全員からサインを一つ一つ集める手間を省けるのでRUVは便利だと思います。

ジェイソン・カラカニスのシンジケートなどの場合、彼のシンジケートに彼と共同投資をしたい適格投資家が既に多く登録している(投資家を募るチャネルがある)ので、彼がディール(彼が投資をする資金調達中のスタートアップ)をシンジケートの参加者に共有すれば、かなり早く投資のコミットを集められますが、RUVの場合はそれがないのでスタートアップ自身がその資金調達に参加する投資家を集める必要があります。逆をいえば、すでにコミュニティやファンがいる(適格投資家を集めるチャネルがある)スタートアップであればRUVのメリットを最大限に活かせるのではないかと思います。

端的にいうと、RUVは投資家を選べて、シンジケートは投資家を選べません。投資家探しをアウトソースするのか、自分でそのラウンドに参加する適格投資家を見つけてくるのかが大きな違いだと思います。

──最近では株式投資型のクラウドファンディングが活発な印象がありますが、法的な観点で何か変化はあったのでしょうか?

最近米国では、法的に株式投資型のクラウドファンディングで調達できる限度額が100万ドル(約1億円)から500万ドル(約5億円)に引き上がりました。有名なスタートアップでいうと、Pinterestの2人目の従業員であったサヒル・ラビンジアがCEOのGumroadRepublicという株式投資型のクラウドファンディングのサービス経由で500万ドル(約5億円)を個人から集めています。サヒルのような影響力のある人であれVC(ベンチャーキャピタル)からではなく、多数の個人投資家からひとつの資金調達のラウンドを終えれるだけの資金を集めることができるようになったことを意味しています。

サヒルは過去に著名なVCから資金調達をしていましたが、プロダクト・マーケット・フィットする前に資金を集めすぎてしまったこと、チームが大きくなりすぎたことなどによるプレッシャーからVCから株式を買い戻した経験があることを自身のブログで語っています。今回の株式投資型クラウドファンディング経由での資金調達にはそういった背景も関係しているのかもしれません。

──実際にAnyplaceがシンジケート経由で過去に資金調達をしたとのことですが、感想や気付きなどはありますか?

シンジケート経由で投資をしてくださっている方々にも、もちろんマンスリーで投資家へのアップデートを送っているのですが、とても協力的な人が多いです。何か困っていることがある時は、メールで相談すれば人を繋げてくれたり相談に乗ってくれたりします。弊社はジェイソン・カラカニスのシンジケートFoundersClub経由で資金調達を行ったことがありますが、彼らの影響力のおかげで数日で全ての投資のコミットが集まりました。

また、シンジケートを運用する投資家の視点で考えると、VCの場合は大体ファンドを組成したら10年間で集めた資金を投資する必要があるのですが、シンジケートであれば良いスタートアップが見つかったタイミングでのみ投資を実行すれば良いので、とても柔軟に投資活動を行うことができます。

最近だとGoogleAirbnbUberなどの従業員らで、シンジケートを組む動きも広まっていますし、エクイティ型のクラウドファンディングは今後も活発になっていくのではないでしょうか。

 

Profile

著者プロフィール
内藤聡

Anyplace共同創業者兼CEO。大学卒業後に渡米。サンフランシスコで、いくつかの事業に失敗後、ホテル賃貸サービスのAnyplaceをローンチ。ウーバーの初期投資家であるジェイソン・カラカニス氏から投資を受ける。ブログ『シリコンバレーからよろしく』。@sili_yoro

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