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シリコンバレーと起業家

内藤聡|アメリカ

リモートワークを前提とした米国都市の人材誘致

Pexels

──以前、現状シリコンバレーから人は出て行っているが、最終的にこの土地に人との繋がりがある人も多いから人は戻ってくるんじゃないかと仰られていましたが、マイアミ移住を推奨しているキースさんのようにシリコンバレーではない別の地域に新しいエコシステムを作ろうと声をあげる人が現れてきた中で、今後人や企業の移動はどのように変わっていくのでしょうか。(聞き手:中屋敷 量貴

過去記事:「シリコンバレーに人は戻ってくるのか」「シリコンバレーのマイアミ移住

内藤:移動に関していうと、企業と個人でその基準が違うのではないかと思います。企業の視点でいうと、経済的・人材的なメリットがあるかどうかで本社や活動拠点を決めるのではないかと思っていて、例えばこれまでは優秀な人材を集めるならシリコンバレー・ベイエリアに拠点を置くしかないという考えがありましたが、コロナのパンデミックを経た今ではその根底が変わり、リモートでどこからでも働けるので、法人税が優遇されるようなメリットのあるテキサスのような州に移住した方が良いと考える企業も多いと思います。例えば、オラクルやヒューレット・パッカードは本社をテキサス州に移動させるというニュースが最近話題になりましたよね。こういう観点で企業の移動は人材的な観点での懸念がなくなり、経済的なメリットにフォーカスしていると言えるのではないかと思います。

一方で、人の移動に関しては税金などの経済的な理由だけではないと思っていて、そこはもっと人との繋がりが中心になるのではないかと思います。こういう観点で、もともとその土地にゆかりがあるかないかというのは大きなポイントだと思っていて、コロナをきっかけにシリコンバレー・ベイエリアを出ていく人とというのは、もともとその地域の出身者であったり、大学に通っていた人、またはその地域に何かしらの人的なネットワークがある人が多い印象を受けます。

考えてみると、自分もベイエリアから違う地域に移動するとなると、例えば数ヶ月単位であればあまり気にしませんが、これが数年単位となるとよっぽどその地域に人との繋がりがない限り、なかなか現実的ではないのかなと思っていて、それは同様にベイエリアやシリコンバレーでスタートアップを経営している他のファウンダーも同じなのではないかと思います。なので、ベイエリアで生まれ育った人やここに移住して長い間住んでいた人は今後もベイエリアに居続けたり、定期的に戻ってくるという形になるのではないかと思います。

──そういった現状も踏まえて、今後州や政府はどのような施策を取っていくようになるのでしょうか。

内藤:上記の観点で考えると、テキサスのように法人税の優遇を売りにしてスタートアップや企業の移動を誘致している州は色々と考えないといけないのかなと思います。おそらく本来の法人税免除のような仕組みは、法人税は減ったとしても企業の移動に伴いその地域へ従業員が移住し、移り住んだ人たちが所得税を払ったり、また、企業がその地域で新たな雇用を生み出したりといった形で州にへの経済効果が期待されていました。ただ、これからはコロナ後もリモートワークが主流になることを考えると、必ずしもその地域で企業が人を採用するかは分からないですし、州外で人を採用することも増えてくると思うので今まで期待していた経済効果が得られないケースが増えてくると思います。

なので、どちらかというとマイアミのように、企業の誘致もそうですが、それ以上にどれだけその地域に移住して長く働き続ける人を引きつけられるかが、リモートが前提となる社会では重要になってくるのかもしれません。というのも、そういう形でその州でリモートで働く人たちが税金をその地域に払っていくわけなので、企業よりもそういった個の働き手をどれだけ惹きつけられるかは2021年以降の人材誘致の施策のメイントピックになると思いますし、新しいトレンドになるんじゃないかなと思います。

──現状どういった施策を取っている都市があるのでしょうか。

内藤:オクラホマ州のTulsa (タルサ)では、その地域に引っ越してくるリモートワーカーに対して、100万円の助成金を支給する施策を発表しており、同様の施策をアイオワ州やアラバマ州の都市でも導入しています。もちろんその地域に1-2年は住まないといけないというルールはあると思いますが、その代わりに家賃や引っ越し費用などが色々と免除されたりといったメリットはあるようです。

そういう観点では、シリコンバレー・ベイエリアはどんどん人や企業が出て行っているわけでもあるので、もっと頑張らないといけないですよね。数字だけ見てみると、サンフランシスコの世帯数はコロナ前は36万世帯あったらしいのですが、コロナをきっかけに去年は9万世帯がサンフランシスコから引っ越して出て行ったそうです。この数はかなり多いですが、逆に考えてみるとそれだけ異常なほどの人がこのエリアに来てしていたのかもしれません。我々もその一部ではありますが、世界中からテック企業やスタートアップに惹かれて人が集まっていて、来た人が全員出ていったわけではないと思いますが、コロナを機に異常だった構造が少しずつ正常に戻ってきているのではないかという印象はあります。それこそ家賃もかなり下がっていて、これまでサンフランシスコ市内だと1ルームで月に30万円-40万円くらいしていたものが、今は30%近く家賃が落ちているというデータもあります。

2021年は引き続きこういった変化・トレンドが見えるのではないかと思いますし、それこそスタートアップに関して言えば、リモートを前提とした組織体制やニーズは今後も当面続くと思うので、このパラダイムシフトに合わせてその領域にプロダクトを提供している企業やは伸びるんじゃないかと思います。弊社Anyplaceも、リモートワークが当たり前になる未来に向けて、リモートワーカーやノマド向けの賃貸のプラットフォームとして世界一になるべく、日々精進しています。

 

Profile

著者プロフィール
内藤聡

Anyplace共同創業者兼CEO。大学卒業後に渡米。サンフランシスコで、いくつかの事業に失敗後、ホテル賃貸サービスのAnyplaceをローンチ。ウーバーの初期投資家であるジェイソン・カラカニス氏から投資を受ける。ブログ『シリコンバレーからよろしく』。@sili_yoro

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