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パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

性加害から子どもを守る「犯罪歴調査制度」3ヶ月で約3,000人が児童保護・教育の舞台から排除

フランスでは毎年約16万人の子どもが性的暴力の被害に遭っていると言われている  pixabay画像

フランスでは昨年10月から本格的に始動し始めている子どもを性加害から守る「犯罪歴調査制度」により、すでに3,000人近くがこの児童教育、保護施設等から排除されたことが明らかになっています。もちろん、これらの全ての人々が今後、犯罪に関わるわけではないにせよ、3ヶ月で3,000人ということは、1ヶ月で1,000人の計算で、恐ろしいことこの上ありません。日本でも同様のシステムが2026年に施行されるということなので、なにかの参考になればと思いフランスでの現状をご紹介しようと思います。

性暴力犯罪加害者自動登録簿(FIJAIS)

フランスでは、2025年10月から、幼児・児童に関わる仕事に就労する(ボランティアも含む)ためには、採用時および、その後、定期的に「優良証明書(Attestations d'honorabilité)」の提示が義務付けられるようになりました。具体的には、この証明書は、当該者に犯罪歴がなく、性暴力犯罪加害者自動登録簿(FIJAIS)に登録されていないことを証明するもので、故意に就労を妨げるものではなく、子どもを犯罪、特に性加害・性暴力から守ることを目的としています。

これまでにも、企業によっては、児童に関わる仕事ではない場合でも、採用時に「優良証明書(Attestations d'honorabilité)」の提示を求めるところもあり、私も一度、どこかの会社(子どもに関わる仕事ではない)に提出した覚えがあります。このような書類の存在を知らなかった私は、「これ?何ですか?」と尋ねたところ、「要は前科がない証明のこと・・」と言われて、驚いた記憶があります。しかし、これは、オンラインで簡単に入手することができ、ものの5分もしない間に手続きは完了します。

10月に始動したシステムは、子どもに関わる仕事に就労する場合は、特にこれが義務付けられるようになり、また、すでに、就労している人をこれを理由に解雇することもできるようになったということです。

今回、特に注目されているのは、性暴力犯罪加害者自動登録簿(FIJAIS)ですが、これは、性犯罪または暴力犯罪で告発、または有罪判決を受けた個人をリスト化したファイルです。このFIJAISに登録される犯罪は、ピンからキリまでで、未成年者に対する殺人、強姦、暴行、性的暴行、未成年者を巻き込んだ人身売買から売春斡旋、SNSを通じた性的勧誘から未成年者のポルノ画像または描写の記録、取得、所持、提供まで様々な項目が並んでいます。

犯罪の被害者が未成年の場合、裁判官または、検察官が明示的に別段の決定を下さないかぎり、刑期の長さに関わらず、FIJAISに登録されます。

このようなシステムが始動する背景には、子どもに対しての性加害、性暴力の増加があるのですが、実際にこのシステムが始動し始めて、これまでに、このファイルに名前が載っている人がこんなにも子どもに関わる仕事に就いていたのか?と驚かされるばかりです。

しかし、現在のところ、このシステムは、児童保護施設職員、および保育士、チャイルドマインダーに限られており、たとえ、ここから排除されたとしても、病院や障害者施設など監督体制が存在しない、あるいは、監督体制が弱い地域に行く可能性があり、まだ道半ばではあります。

このシステムは12月に養子縁組の承認申請書にも拡大され、今年前半には、障害児を養育する特別支援教育施設(IME)にも拡大される予定になっています。

子どもに対するこの種の犯罪は、子どもに対して支配的な立場にあり、子どもと継続的な人間関係にあり、第三者の目に触れない状況を容易に作り出せる環境から生まれやすいため、このシステムにより、その機会と危険を少しでも軽減させる効果があると思われます。

59歳保育士アシスタント 昼寝中の子どもに性的暴行で告訴

このような子どもに対する性的暴行事件でわりと最近、話題になった事件をご紹介します。

この事件は、59歳の女性の保育士アシスタントが3歳から4歳までの少なくとも9人の児童に対する性的暴行・性的虐待を行っていたというもので、昨年7月に、複数の保護者から通報があり、逮捕・拘留されたというものです。この女性、保育園の昼寝の時間を利用して子どもに対して、デジタルディスペクション(指による性交、挿入と自慰行為)を行っていたということで、まさに支配的な立場にある子どもたちに対して、昼寝の時間帯という第三者の目に触れにくい閉鎖的な空間での出来事です。この事件の事の成り行きを見ていると、子どもはすぐに被害を訴えることができないということがわかります。それでも、この被害者の子どもたちは、親に、その恐怖を話したのでしょう、ただちに保護者たちが通報し、この通報を市長が受け取った2日後には、この加害者は停職処分になっています。

この女性がFIJAISに登録されていたのかどうかはわかりませんが、間違いなく現在は登録されており、今後、同様の職に就くことは不可能だと思われます。

事の善悪、深刻さを充分に理解できない幼少の子どもたちが、被害を被害と思わずに周囲に打ち明けることもできずに、心に傷を負うケースは公にならないまま埋もれていることは充分に考えられることで、表面化していない、埋もれている事件はもっと多いのではないかと考えられます。ならば、このような事件が起こってしまうことを回避するためには、そのような危険因子をもった人物をこの業界から排除することは、必用なことではないかと思われます。性犯罪は実に再犯率の高い犯罪ともいわれ、事件の性質上、表沙汰になりにくい犯罪でもあり、ましてやそれが子どもに向けられたものであれば、なおさらのことです。

フランスの「犯罪歴調査制度」は「誰にでも厳しい」のでもなく、「誰にでも甘い」のでもなく、職務リスクに応じた差異的アプローチが原則

アメリカには、全国民が自由に閲覧できる「性犯罪者リスト」が存在しますが、フランスの場合は、プライバシー保護や社会復帰の観点から、性犯罪者の個人情報が一般に公開されることはありません。しかし、一般公開はされませんが、前科・性犯罪歴の情報は公的機関向けに管理されており、採用時の照会などに使われることがあります。これがフランスのFIJAIS(性暴力犯罪加害者自動登録簿)であり、子どもに関わる職業に従事する場合は、これを自ら雇用主に提出しなければならないというシステムが導入されたわけです。

しかし、この制度には全く反対の意見がないわけではなく、犯罪者の社会復帰という観点も考慮しつつ、個人情報保護を重視しているフランスの法律が本人のプライバシー権と社会の安全をどう同調させるかという難しいテーマにも直面しています。

フランスの犯罪歴調査制度の最大の特徴は、情報開示を三段階に分け、目的別に厳格にアクセスを制御している点にあります。一般雇用で提出が求められるものは、国家機関であっても無制限に犯罪歴にアクセスできない点は、国家権力に対する抑制措置と考えられています。一方で公共性の高い職種(教育、治安、対人ケアなど)については、厳格な審査が行われ、職務の性質に応じてリスク管理を行う合理的アプローチとして「誰にでも厳しい」のでもなく、「誰にでも甘い」のでもなく、職務リスクに応じた差異的アプローチを原則としています。

フランスの犯罪歴調査制度は、プライバシー保護、更生と社会復帰の重視、公共安全との比例原則による調整を高い水準で両立させようとする「権利保障型モデル」とも言われています。この権利保障型モデルというのが、とてもフランスらしいところではありますが、だからフランスはダメなんだ(理想は理想、しかし、現実は・・というところ)と言いたくなるところでもあります。

しかし、今回の子どもに関する仕事に関しての「犯罪歴調査制度」は、排除ではなく再統合を基本とする姿勢をとっているフランスにしてはかなり踏み込んだものとなっているような気がします。

フランスの独立委員会(CIVISE)の報告によれば、フランスでは毎年約16万人の子どもが性的暴力の被害に遭っていると推定されています。もっとも子どもを守るべきはずの環境において、子どもが危険に晒されることは、いかにししても避けなければなりません。

 

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著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



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