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パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

国民の8割以上が支持するフランスの新しい志願制兵役

フランス国民の国防意識はかなり高いらしい・・ pixabay 画像

11月27日、イゼール県ヴァルス軍事基地を訪問中のマクロン大統領が志願制とはいえ、新たな兵役制度について自信満々に発表したことは、少なからず衝撃的なことでした。

マクロン大統領の発表によれば、この新たな「志願制兵役制度」は2026年夏に開始。18歳から19歳の若者を中心に行われ、「国民奉仕活動」という名称のもと、志願者は10カ月間、最低月額800ユーロ(約145,000円)の手当に加え、その間の宿泊施設、食事、装備等が提供されるとのことで、脅威の高まる世界情勢の中、できるだけ多くの国民が我が国の軍隊とは何か?どのように機能するのかを理解し、我々が設立した予備役を体験することは極めて重要なことだと述べています。

予備役は我が国の軍隊に技能を提供するという点で非常に重要なことで、この制度の最終的な目標は、軍隊の戦力増強であると説明しています。

新たな国家兵役制度は志願制を基本とし、2030年までに予備役兵10万人の動員を目標としています。

フランスで生活していれば、「サービスミリテール」という言葉はたまに耳にすることはあり、比較的、年配の人と話していれば、自ずと「サービスミリテールに行っていた時に・・」などという話を聞くこともあり、今では事実上、廃止同然のこの兵役制度も名前を変えて、ほんのおしるし程度に、微かに残っているには残っていて、うちの娘なども、この「サービスミリテール」のような呼び出し(といっても2日間程度の研修のような時間)にたしか、高校生の頃に行ったことがありました。

いずれにせよ、広く一般に向けて志願制とはいえ、大統領が兵役を募るというこの状況に、日本で生まれ育った私にとっては、ひと際、衝撃的なものでありました。

マクロン大統領の今回の「志願制兵役」発表までの軌跡

あまりにも衝撃的だった今回のマクロン大統領の発表は、しかし、冷静にここ1年の彼の発表などの軌跡を辿ってみると、非常に慎重に、熟慮を重ねたうえ、計画的に進められてきたものであることがわかります。

まず、今年の1月の新年の演説の際に、マクロン大統領は、「必用に応じて軍を強化するために、より多くの若いボランティアを動員する」という当時は漠然とした概要であったプロジェクトについて言及し、「フランスは2030年までに現役軍人を21万人、予備兵を8万人にする」と発表しています。当時はいったい、どこからこんな数字が出てくるの?と思った記憶があります。

しかし、この1月時点でのマクロン大統領の発表は、今から思えば、ある種の世論を測るための観測気球のようなものであったと考えられ、このマクロン大統領の兵役に関わる発言に対して行われた2ヶ月後の3月に発表された世論調査(IPSOS フランスの世論調査会社)によれば、フランス国民の86%が兵役の復活に賛成すると回答。半数以上(53%)は義務的な兵役制度にさえ賛成しているという結果が出ていました。

これは、私にとっては驚きの数字でしたが、この数字をもとに、マクロン大統領は今回の発表への自信を固めていったと思われ、今回の発表の際の、「我が国の若者は国のために奉仕することに熱心であり、祖国のために立ち上がる準備ができている!」という文言に繋がっていたのだと思われます。

そして7月には、軍関係者に向けた演説の中で、「若者に軍務に就くための新たな枠組みを提供したい」と語っており、秋には、このフォローアップを約束していました。そして、今回、国防と外交の教義となる年次文書である「国家戦略レビュー」(Revue N​​ationale Stratégique)に基づき、今回の発表がなされたということになります。

どんな時にも自身満々のマクロン大統領ではありますが、今回の件は世論の流れによっては、極めてセンシティブな問題でもある中、また、このところ反マクロンの動きが高まる中でのこの発表は、こういった世論の動向を見据えてのことだったと思われます。

この「国家戦略レビュー」では、「成人したフランス国民に入隊に繋がる基礎的な軍事訓練を受ける機会を提供する」ため、「志願兵役制度の見直し」を提言しています。

今回の志願制兵役で彼が強調していることのひとつは、この志願制兵役制度はあくまでも国内における奉仕活動であり、「すぐにウクライナへの派遣」に繋がるものではないということも重要なポイントでもあります。

迫りくる危機への警鐘

「フランス本土では、我が国史上最長の平和が続いています。これは、第二次世界大戦後に築かれた平和に基づく世界秩序の構築という文脈のおかげです。しかし、この世界秩序は今、崩壊しつつあります」マクロン大統領は、現在の世界情勢から迫りくる危機への警鐘を鳴らし続けています。

マクロン大統領に言われるまでもなく、世界情勢が穏やかなものではないことは、世界中の人々が承知していることです。

ここ数年、ちょっと記憶に残っているマクロン大統領の一見、漠然としているようで、実は、現在の状況に対する危機感を国民に訴える演説というものが、いくつか思い浮かびます。「私たちは豊かさの終焉の時を生きている」という話や、「明日の解決策は昨日の習慣であってはならない」などなど、彼の演説にしては、静かに語っていた話の中にも今回の志願制兵役に繋がるものがその根底にはあったのではないかとさえ思われてきます。

今回の発表にあたっては、「この不確実な世界において、私たちの国民は恐れたりパニックに陥ったりする権利はありません」と彼は言っていますが、いたずらに恐れたり、パニックに陥ったりせずに自ら国は自らの手で守らなければならない・・ということです。

大統領の発言や政治の動きに対して、決して黙ってはいないフランス国民は、兵役という極めて自分や自分の家族に降りかかる事象に対して、現在のところ、大きな反発、大規模なデモや暴動はおこっていません。反発どころか、この発表の後に行われた世論調査でも、国民の83%は、この新しい「志願制兵役制度」に賛成という結果が出ています。

この「志願制兵役」に関しては、若者は年配世代ほどには熱心ではないという結果が出ているものの、この制度の導入にもっとも反対しているのは25歳から34歳の年齢層であることが明らかになっていますが、それでも反対しているのは40%程度で60%は賛成しています。

最も賛成しているのは65歳以上の年齢層ですが、これは自身が若い頃に兵役を経験していたことがある・・フランスに兵役制度が存在していた時期を知っている世代とも重なるところがあります。

いずれにせよ、全体としてフランス国民の国防意識というものは、想像以上に高いと言わざるを得ません。

フランス国民というのは不思議な人々で、度々起こるデモや暴動に際しても、一見、そんな主張がまかりとおるのか?と思われることでさえも、その原点には「フランスとはこうあるべき!」という視線で立ち上がっている、それなりの国家感が根付いているような気がします。要は、私などよそ者からみれば、意見は色々あれど、総じて愛国心が旺盛な人々のような印象を受けています。

戦争が起こってほしくないことは言うまでもありませんが、現在の世界情勢が極めて危険な緊張状態にある以上、何も対策を講じないではいられないのは当然のこと。現在は、志願制となっていますが、これが義務になる日もいつか、やってくるのかもしれません。

私はフランスで色々なこと起こるたび、これが日本だったらどうなるんだろう?とか、日本人ならどう反応するんだろう?ということをよく考えますが、日本とて、同じ世界情勢の中を生きているわけで、決して他人事ではない問題。とりあえず、自分自身で考えて自分の意見を持つということは、いつでも大切なことなんだろうと思うのです。

 

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著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



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