
パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです
ルーブル美術館強盗 容疑者2名逮捕 強盗はなぜ?あの場所を選んだのか?
世界一有名といってもよいパリ・ルーブル美術館で、まさかの強盗事件が起こったのは、ほんの1週間前のこと。フランス王室の宝石コレクションとダイヤモンドの王冠を展示するアポロギャラリーからティアラ、イヤリング、ネックレスなどの国宝8点8,800万ユーロ(約90億円)相当)が盗まれました。まさかあのルーブルに強盗が入るなんて、誰もが想像すらしないようなセンセーショナルな事件にフランス国内はもちろんのこと、全世界にルーブル美術館強盗事件は瞬く間に広まりました。
パリでは、時たま高級宝飾店やブランド店などに強盗が押し入ったというニュースは目にすることがあり、そんなに珍しい話でもないのですが、今回はさすがのルーブル美術館、ちょっと桁違いのインパクトがあります。
もちろん、フランスでもこの事件は大騒動になり、「フランスの恥!」とセキュリティの甘さに大バッシングが起こるとともに、実質犯行時間わずか7分程度という鮮やかな犯行や現場を去る際の犯人の映像などが同時に流され、パリ検察庁は、ただちに「組織的窃盗」と「共謀犯罪」の捜査を開始。パリ警察管区内の「盗賊撲滅旅団(BRB)」と「文化財密売対策中央局(OCBC)」が事件を担当し、まさにフランスの威信をかけて取り組む姿勢を見せていました。
極めて冷静沈着に事を進めて、犯行時間わずか7分という鮮やかな犯行のわりには、強盗の際に使用された多数の物品(手袋、トランシーバー、アングルグラインダー、バーナーなど)が現場には残されていたことから、犯人はセミプロではないかという話もあります。この捜査には、鑑識警察が総力を投じ、現場からは容疑者のDNAを含むおよそ150点にもおよぶサンプルが収集されていました。
そして、これらの遺留品の中のバイクのヘルメットから容疑者の特定が行われ、4人の実行犯のうちの2人が逮捕されています。いずれもシャルルドゴール空港で、一人はアルジェリアへ向けて、もう一人はマリへ向けて逃走のための飛行機に搭乗しようとしているところを警察に身柄を拘束されています。しかし、容疑者2名は逮捕されたものの、盗まれた国宝は発見されていません。
恐らくフランスの歴史に刻まれるであろうこの大がかりなルーブル美術館強盗事件。1週間のうちに容疑者2名逮捕というのは、捜査の好調な滑り出しとも思えますが、肝心の美術品の行方は、まだ手がかりがありません。
強盗たちはなぜ?あの場所を選んだのか?
まことに不名誉なことではありますが、この強盗事件のおかげで、ルーブル美術館の強盗が侵入したギャラリー・通称「アポロギャラリー」、「MUSEE DU LOUVRE GALERIES DES ANTIQUES」は、現在、ルーブル美術館の観光スポットの一つになっています。この強盗たちが侵入した場所には、ふだんは、誰もが立ち止まらない場所でありながら、現在は、多くの人たちが携帯を掲げて写真撮影をしたり、眺めたりしています。
広い広いルーブル美術館は、総面積6万600平方メートルといわれ、その周囲だけでも相当歩くことになりますし、壁面だけでも、かなり見応えのある建物でもあります。通常はガラスのピラミッドのある中庭や地下から続いているカルーセル口からの入場になるため、外側からは、どこが、どの部屋に続いているのかなどは、あまり考えることもありません。
しかし、実際にこの現場に行ってみると、まさに外部から侵入して逃走することを考えれば、絶好の場所でもあります。どういうわけか、このギャラリーの壁面には、小さなバルコニーのようなものまであり、それは今回の外からの侵入にはもってこいの足場になり、また、この窓は大きな通りに面していて、その通りを挟んだすぐ向こう側はセーヌ川。侵入にも逃走にも絶好の場所であることがわかります。
加えて、彼らが犯行に選んだのは、日曜日の開館直後の時間帯。日曜日のパリ市内の道路は、ウィークデーには考えられないくらい空いているので、逃走の際に、渋滞に巻き込まれる可能性も極めて低いのです。おまけに彼らが開館直後の時間帯を選んだのは、たとえ開館直後で、まだそれほど入館者数が多くないとはいえ、まず、今回のような緊急事態が起こった場合に、美術館の警備は、観光客の安全を第一に行動するため、犯人の確保は二の次になってしまうのです。なんといっても、犯人が現場にいたのは、わずか7分間のこと。観光客を避難させるだけで精一杯の時間です。これが閉館時に侵入したとなれば、警備は一斉に犯人確保に向かうと見られますから、まことに絶好の場所とタイミングを彼らは入念に研究したと思われます。
美術館内部の共謀の可能性も調査中
このような大がかりな強盗犯罪は、綿密な下見と計画があったことは、当然ではありますが、これまで一般には、公表されていなかった美術館のセキュリティーに関しても新たな事実が浮上してきています。
彼らはアポロギャラリー侵入後、厳重警備の展示ケース2つを標的にし、このケースをアングルグラインダーで破壊して、美術品を奪っています。ところが、この展示ケースのガラス板は、2019年に、「宝石の鑑賞を妨げる」という理由で美術館の経営陣の不満を招いたため、以前の展示ケースの5分の1の薄さに代えられていました。また、以前の展示ケースには、ジャッキが取り付けられていたために、わずかな衝撃でも加えられた場合には、展示品は金庫の中に消え、宝石を盗難から守るという機能もあったのです。
これらの情報が含まれていたかは定かではありませんが、当局の発表によれば、DNA鑑定を含む手がかりやデジタルに残された証拠から、美術館の警備職員が盗難前に、この強盗事件の主要犯人と接触して共謀し、彼らがルーブル美術館に関するセキュリティ情報を入手していた説も浮上しています。
しかし、「宝石の鑑賞を妨げる」ために、展示ケースのガラスケースを薄くするなど、愚の骨頂。妨げるどころか、このアポロギャラリー内をはじめとする美術館内の最も貴重な宝飾品の一部は、警察の厳重な護衛のもと、フランス銀行に移送され、現在は、より厳重な警備のもとで保護されています。まさかの歴史的な美術品がフランス銀行の金庫入りとは・・まさに宝の持ち腐れです。これらの美術品が再びルーブル美術館に戻って展示される時期はまだ発表されていません。
まさに、フランスだけに怪盗ルパン(アルセーヌ・ルパン)を彷彿とさせる今回の大胆不敵な強盗事件。小説の中では変装の名人だったアルセーヌ・ルパンですが、この強盗たちが着ていたのは黄色いベストだったというのは、政情を反映して、なんとも皮肉な話でもあります。

- RIKAママ
フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。
ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」
Twitter:@OoieR























































