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ドイツの街角から

シュピッツナーゲル典子|ドイツ

夜空に咲く芸術・ヘレンハウゼン庭園が光の舞台に!ハノーファー国際花火競技大会レポート

©norikospitznagel

夏の夜空をキャンバスに、世界最高峰の花火師たちが光と音で競演する。そんな幻想的なイベントが、ドイツ北部・ハノーファーで毎年開催されていることをご存じだろうか。(画像は特記の一点以外、すべて筆者撮影)

光と音が織りなす夏の夜 ヘレンハウゼン庭園で見る世界の花火

ドイツ中北部の古都ハノーファー。夏の夜、静かなバロック庭園が一瞬にして光と音の劇場へと変わる。花火が夜空を描き、音楽が風に乗る。その美しさを味わうために、世界中から人々が集い、歴史と芸術が響き合うこの夜を満喫する。

「ハノーファー国際花火競技大会(Internationaler Feuerwerkswettbewerb Hannover)」は、バロック様式の名園として知られるヘレンハウゼン庭園を舞台に繰り広げられる、ヨーロッパ屈指の花火イベントだ。

ちなみにこの庭園には大庭園、ベルク庭園、ゲオルゲン庭園、ヴェルフェン庭園と4つの庭園があり、花火大会は大庭園で開催される。

33回目を迎えた今年の大会は、ヘレンハウゼン庭園の開設350周年という節目の年でもあった。5月から9月にかけて計5チームが出場し、それぞれが25分間のショーで創造力と技術を競い合った。

参加国は、庭園の歴史に深く関わりのある国々アメリカ、オランダ、カナダ、イタリア、そしてイギリス。各チームが自国の文化や音楽をテーマに、夜空を彩った。

映画のような一夜 英国チームのショー

筆者が訪れたのは、最終戦となる9月20日で英国チームのショーだった。少し早めに園内に入り、ショーのバックステージを見学した。庭園内の一部は立ち入り禁止だったが、最終準備に奔走する英国チームの画像を撮ることができた。

そうこうするうちに入場者が庭園に入ってきた。夏は夜も長く明るい。見学の場所取りに急ぐ入場者が園内に集まり、芝生の上にピクニックシートを広げ、シャンペンで乾杯する人や、スナックを頬張る人々の笑顔があふれていた。家族連れ、友人同士、カップル...誰もがリラックスした表情で、花火の始まりを心待ちにしていた。

会場には、子ども向けの体験型アクティビティや生演奏ステージ、飲食スタンドなども並ぶ。まるで小さなフェスティバルのような賑わいだ。

どのスタンドも行列が長く、スタンドで飲食を買うのを諦めたのは少し残念。次回は軽食を持参したい。夕食なしで花火ショーを観戦したが、今思うと、空腹を忘れるほど圧巻なショーに心身が満たされた夜だった。

夜9時。静寂を破るように、20世紀フォックスのファンファーレが鳴り響いた。英国チーム「Pyrotex Fireworx(パイロテックス・ファイヤーワークス)」によるショー、「Lights, Camera, Action!」の開幕だ。

スクリーンのない映画館、そんな言葉がぴったりくる。トップガンのテーマが流れると、赤と青の光がリズミカルに交差し、クイーンの「We Will Rock You」では観客が手拍子を打つ。ホイットニー・ヒューストンの「I Will Always Love You」では、白い花火が夜空に花嫁のヴェールのように広がった。そしてラストを飾ったのは、誰もが知る「スター・ウォーズ」のテーマ。

音楽と光のシンクロは完璧で、まるで夜空全体が巨大な映画のスクリーンのようだった。観客席からは歓声と拍手が止まらない。ショーが終わると、誰もがしばらく立ちつくすほどの余韻に包まれていた。光と音に包まれた夏の一夜は、単なるショーではなく、誰の心にも残る「物語」だった。

©Jens Meyer 英国チーム優勝の授賞式

その完成度の高さから、英国チームは見事今年の優勝を得た。2位はカナダチーム、3位はオランダチームだった。

舞台は世界...

Profile

著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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