
Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
オーストラリアで世界初の 16歳未満SNS禁止法 施行 実際のところどうなのか?
オーストラリアでは、豪労働党政権が昨年11月末に法案を提出していた「16歳未満のSNS禁止法」が、2025年12月10日、予定通り施行された。
Today, we have officially banned social media accounts for under 16s. pic.twitter.com/9Ap5mZfNoq
-- Anthony Albanese (@AlboMP) December 9, 2025
この施策に関しては、かねてより問題となっていた「年齢確認の方法」がいまだに確立できていないこと、このコラムでも昨年記事にしてご紹介した「オーストラリア人権委員会」をはじめとする専門家による懸念や反対の声も多く、予定通り(12月10日)に実施するのは困難であろうとの見方もあったが、アルバニージー政権がそうした声を無視して押し切った形となった。
罰則の対象となるのは、サービスを提供するSNS運営会社
日本では、「オーストラリア、16歳未満のSNS禁止法を施行 世界初」「オーストラリア 16歳未満のSNS利用禁止の法律施行」といったようなタイトルばかりが目立ち、もし違反したら罰則対象になってしまう・・・といったような意見も散見されるが、実際には、16歳未満がSNSを利用しても、本人はもちろん、その親でさえ、罰則対象にはならない。
オーストラリア、16歳未満のSNS禁止法を施行 世界初https://t.co/1N3aFyWhGJ
-- 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) December 10, 2025
罰則の対象になるのは、SNSの運営会社だ。企業側で16歳未満が既存アカウントを凍結(削除)したり、新たにアカウントを作れないようにしたり、利用前に年齢確認をするなどの対策を施し、適切な措置をとならなかった場合に、最大4,950万豪ドル(日本円で約50億円)の罰金が科されることになる。
対象となるSNSは一部のみ
この法案の対象となるSNSは以下の10のプラットフォームのみ。これ以外のSNSは対象外だ。つまり、16歳未満であっても全てのSNSが禁止されるわけではない。
- Facebook
- Instagram
- Kick
- Reddit
- Snapchat
- Threads
- TikTok
- Twitch
- X
- YouTube
10代の子供たちが高等裁判所に異議申し立て
今月4日、「16歳未満のSNS禁止法」施行に反対する15歳のティーンエイジャー2人が、「この法案は、憲法違反である」と、オーストラリア高等裁判所へ異議申し立てを行い、早ければ2月にも審理が行われることになっている。
この2人は、「この新しい法律は、政治的コミュニケーションの暗黙の自由に対して不釣り合いな負担を課している」と主張するデジタル・フリーダム・プロジェクトの支援を受けているとされるが、DFPだけでなく、問題点が山積するこの法を懸念する声は大きい。
この法は、本当に子供たちを守ることに繋がるのか?
16歳未満のSNS禁止に賛成する人々は「子どもたちを有害なコンテンツから守れる」というが、本当にそうだろうか? そう疑問視する声が多いのも事実だ。
1. 年齢確認の方法が確立されておらず、年齢を推定することしかできないという矛盾
これについては、「生年月日を入力する」という(アルコール類を扱うサイトでよくみられるような)方法やアプリの顔認証システムで確認するという安易な方法をとっているものもあり、既にすり抜け方法を見つけ、既存アカウントの維持に成功したという情報が拡散されているようだ。
また、フォローしているユーザー、話し方、投稿日時、アカウント作成日時などによる行動分析を用いることもあるというが、こうした手法ではAIの誤認が起きやすいのは火を見るより明らかだ。つまり、どれもこれも「年齢を推定」することしかできないもののみに留まっている。
Australian kids are using dog photos to bypass new age verification systems.
-- Pirat_Nation (@Pirat_Nation) December 9, 2025
Kids uploaded a Google image of a golden retriever as a "selfie" for facial age estimation and it passed, granting access.
Others used AI-generated adult faces or edited images to fool the systems. pic.twitter.com/jpa2m04ah1
Hahahahahaha TikTok is mocking the Australian government's U16 social media ban!
-- Monica Smit / Reignite Democracy (@reignitedem) December 10, 2025
Literally all you need to do is lie about your date-of-birth and click 'ok'.
There's no threatening words or extra verification needed.
Absolutely hilarious! pic.twitter.com/15Z6birpAz
(下)TikTokは、生年月日について嘘をついて「OK」をクリックするだけ、という...
2. なぜ10のプラットフォームのみなのかという疑問
有名どころのSNSは禁止対象となっているものの、それ以外にも比較的ポピュラーなSNSがあるが、それらが対象外となっている現状は、「子どもたちを有害なコンテンツから守る」という大義名分が成り立たない。
3.リモートエリア(過疎地)に暮らす子供たちがますます孤立してしまうことへの懸念
広い大陸であるオーストラリアでは、これも大きな意味を持つ懸念だ。リモートエリアの子供たちは、近くに学校がなく、「スクール・オブ・ジ・エア」というオンライン学校で学んでいる。こうした環境で暮らすリモートの子供たちにとっては、いつでも友達と繋がっていられるSNSは彼らの重要なツールのひとつだ。子供たちは「16歳未満のSNS禁止」により、友達と連絡が取れなくなり、孤立が深まるのではないかと心配しているという。(参照)
私たちは、ついつい「都会」で暮らしていることを前提に話をしがちだ。リモートエリアでは、環境がまったく異なることに気づかず、そうした地区の子供たちが寂しい思いをし、おいてきぼりにされているような憂鬱な気分になってしまうような法が、本当に子供たちのためになるのだろうか?という疑問が残る。
Well the U16 social media ban is a complete failure already with teens already finding loop holes
-- Mickamious (@MickamiousG) December 10, 2025
Australia was apparently setting a 'World Standard' and yet that World Standard is already collapsing.
pic.twitter.com/ZvBLJPFZeb
また、オーストラリア人権委員会が、この法に反対を唱える理由のひとつである「(この法は)全国民がソーシャルメディアにアクセスするために、身元証明を求められる可能性があることを意味する。これにより、ソーシャルメディア企業に機密性の高い身元情報提供の必要が生じ、プライバシー権に対するリスクとなる」という懸念もいまだに拭えない。(参照)
欠陥だらけのまま施行され、子供たちを不安にさせている「16歳未満SNS禁止法」。オーストラリアはどこへ向かおうとしているのだろうか...?〈了〉

- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/
メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/





















































