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パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

ギメ東洋美術館の日本のMANGA展示から感じたフランス人の日本文化へのまなざし

ギメ東洋美術館に展示されている尾田栄一郎氏からマクロン大統領へ送られたワンピースの原画  筆者撮影

現在、パリのギメ東洋美術館では日本のMANGAが展示されています。正直、たまたま近くに行くことがあって、「せっかく近くまで来たのだから、ちょっと寄って行こう・・」くらいに軽い気持ちで、この日本のマンガ展に足を踏み入れたので、それほどマンガに興味があるわけでもない私は、あまり期待はしていませんでした。

ところが、このマンガに対する掘り下げ方が日本文化の歴史やマンガ自体の歴史にも紐づけられているもので、想像以上に興味深いものでした。

展示の冒頭でまず目に入るのは、私自身もこれまで見たことがなかった、かつて、紙芝居を運んでいた一台の自転車。この自転車を起点に紙芝居がMANGAのルーツの一つであることが紹介されており、MANGAをいきなり完成された娯楽として扱うのではなく、日本における表現文化の歴史的な積み重ねとして捉えようとしています。

その扱いは日本国内での評価以上にフランスにおいてMANGAが一つの確立した表現ジャンルとして理解され、その歴史が正当に位置づけられていることを感じさせるものでした。

会場の後半では、より現代的なエピソードも紹介されており、直近の例として、マクロン大統領が来日した際に「ワンピース」の作者に送られたサインとメッセージ入りの原画が展示されています。

MANGAが個人の嗜好や娯楽の域を超え、日仏の文化交流を象徴する存在として扱われていることを象徴的に示してもいます。

日本文化に根付いている現代のマンガの根底に流れているもの

この展覧会が、ただ、日本のマンガを平たく紹介しているものではなく、マンガのルーツを日本文化の歴史と併せて掘り下げているところがこの展覧会に厚みを持たせてくれています。

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例えば16世紀の巻物を展示することで、この巻物のストーリー(僧侶に恋する女性が拒絶された途端、ヘビに変身して彼を追いかける物語)を題材に、この肉体の変化(変身)の伝統は日本において何世紀にもわたって受け継がれているもので、セーラームーンから鳥山明氏のドランゴンボールに至るまで、「変身」が日本文化において強力な手段となっている理由を説明しています。

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また17世紀、18世紀のユーモラスな巻物も展示されており、神々や菩薩、トランプ遊び、釣りなどを描いた作品で、笑いは繁栄の兆しと考えられていたため、年の初めに鑑賞されていたものであり、また神聖な人物(しばしばマンガのストーリーにも登場している)と戯れることが何世紀にもわたって日本文化の一部であったことを思い起こさせる伝統であり、今日のマンガに息づく遊び心と軽妙な精神を表現するものであることを解説しています。

そして、フランス人の好きな葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」を深く掘り下げ、この象徴的な作品の詩情と技術力、葛飾北斎が表現した革命的な紺碧の色彩や日本の美学に融合された西洋の視点、人間の脆さと自然の力強さの間の緊張感が、また、これらの歴史的な日本古来の美術作品が漫画家たちのインスピレーションの源であり、現代のマンガの世界に共鳴して息づいていることも解き明かしてくれています。

展示全体を通して特徴的なのは、MANGAが単独で紹介されているのではなく、浮世絵、日本刀、鎧兜といった日本の伝統的な美術・工芸と併せて展示されている点で、この構成によってMANGAはポップカルチャーという枠を超え、日本文化の長い歴史の流れの中に自然に位置づけられているように感じさせられます。

浮世絵に見られる線の表現や物語性、日本刀や武具に宿る精神性。そうした要素が現代のマンガ表現にも確かに通底していることを語りかけてくる独特な展示になっており、MANGAを新しい娯楽として切り離すのではなく、日本文化の連続性の中で捉え直そうとしています。

マンガの神様「手塚治」、妖怪マスター「水木しげる」から・・

この展覧会に登場する最初の漫画家は「手塚治」で「マンガの神様」と賞されています。人間の心を持つロボット「鉄腕アトム」に代表されるマンガの神様は、ウォルト・ディズニー映画、特に「バンビ」に限りない敬意を抱いており、彼の作風の特徴である大きな目はこのことに由来しており、また彼がズームやパンといった物語の技法を映画から取り入れていたこと、西洋の文化からもヒントを得ていたことも解説しています。

本展では、このマンガの神様・手塚治虫から妖怪マスター・水木しげるから尾田栄一郎(ワンピース)、中沢啓治(はだしのゲン)、岸本斉史(NARUTO)、大友克洋(AKIRA)、諌山創(進撃の巨人)といった巨匠たちの作品も展示されています。

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この展覧会の趣旨を理解し尽くすことは容易ではありませんが、このジャンルの並外れた創造性を改めて認識する機会になっていることは間違いありません。

日本のマンガを通して感じるフランス人が日本をどのように見つめているかという一面

また、会場には想像以上に多くの人が訪れており、その年齢層の幅広さも印象的でした。ふだんは美術館などには足を運ばない若い世代が大勢訪れていることも、ちょっと珍しいことでもあるし、またMANGAだからといって若い世代だけでなく、中高年層やいかにも文化的関心の高そうな人々の姿も多く、MANGAがフランス社会の中で特定の層に限られたものではなく、広く共有された文化として受け入れられることを強く実感させられました。

この展示を見ながら思うのは、フランス人、特に豊かな生活を送っている人々の間で日本文化を愛でることが高尚な趣味として位置づけられている点で、このギメ美術館のMANGA展にもそのあたりの感覚も根付いているような雰囲気が感じられます。

日常の中ではあたりまえの存在として見過ごしてしまいがちなMANGAや日本文化が異なる土地で深く理解され、敬意をもって受け止められていることを目の当たりにして、日本人として、とても誇らしい気持ちになりました。

 

Profile

著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



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