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平野美紀|オーストラリア

願いが叶うという幻の花、ガイミアリリーが群生する絶景の丘へ

シドニーから車で北へ2時間半ほどの「リリーの丘展望所」は、青い海と緑の森が広がる丘の上に野生のガイミアリリーが群生する絶景スポット。(6月 筆者撮影)

『幻の花』と呼ばれるその花は、天を突くようにスラリと伸びた美しい姿をしている。気品と力強さを併せ持ったような凛とした立ち姿が、見る者を魅了する珍しい花「ガイミアリリー」。

ガイミアリリーは、シドニーのあるニューサウスウェールズ州東岸の固有種だ。本当の名前は「ドリアンテス・エクセルサ」といい、ドリアンテス科の多年草で、大きく成長すると高さ4~5mにもなる。そして、高く伸びた先端に30 cmほどの毬のような形状をした真っ赤な花を咲かせる。その様は、他の植物とは大きく異なり、とても奇妙だ。

野生のキバタンとガイミアリリー。大きな花にはさまざまな野鳥や虫たちが集まる。

今年の5月、名古屋の東山動物園で『開花が10年に一度と言われている「ガイミアリリー」の花が咲いた』と話題になったので覚えている人もいるかもしれない。東山動物園のガイミアリリーは、2020年に姉妹都市であるシドニーから贈られたものだそうだ。

日本でガイミアリリーを育てているところがあると初めて知ったのは、大阪市淀川区の「正福寺」さんだ。こちらのお寺さんで8年前ぶりの開花に合わせ、『ガイミアリリーに願いを』というイベントを行うという告知を見かけたのがきっかけだった。なんでも、前回咲いた8年前に花を見に来た人が「赤い花に願い事をかけたら叶った」と話題を呼んだという。

シドニー近郊の住宅街では、庭先や街路樹と一緒に植えられていることもあり、(人為的に植えられたものであれば)目にする機会は割とあるため、「へぇ、そんなこともあるのか」と思ったものだ。確かに見た目にも奇妙なこの花を一目見たら、なにやらいいことが起きそうな気がするかもしれない。

この花は、日本では「10年に一度」しか開花しない、と言われているが、本当に10年に一度程度しか咲かないのかどうかは、わからない。というのも、近所の道路脇にあるガイミアリリーは、咲いているのを割とよく見かけるからだ。毎年ではないにせよ、3~4年に一度くらいは(同じ個体の花が咲いているのを)目にしていると思う。

実際のところ、どうなのだろうと思い、調べてみると、種から育てる場合は、花を咲かせるほど成長するのに少なくとも8~10年はかかるらしい。咲くまでにとても時間がかかるのは事実で、毎年花を咲かせるわけではないそうだ。また、オーストラリアの固有植物によくみられる「乾燥と火に強い性質」で、森林火災の後にたくさん花を咲かせることがあるという。

枯れた後のガイミアリリーは、なんともみすぼらしい...(苦笑)

群生するガイミアリリーのバックに海と森が広がる絶景スポット

上述の通り、シドニー近郊の住宅街でもガイミアリリーを見ることはできるが、少し足を延ばして国立公園や保護区などへ行けば、野生のガイミアリリーを見つけることもできる。

newsweekjp_20251016020108.jpg木々に紛れていると見つけにくいが、花がついているとわかりやすい。左の2本は蕾をつけたばかり、右はおそらく昨年咲いた後に枯れたもの。(6月 筆者撮影)

野生のガイミアリリーは、木々の合間に見え隠れするように他の植物に紛れていることが多いが、花が咲いていると見つけやすい。大きくて真っ赤な花が緑の中に浮き立つように見えるからだ。ただ、背が高いため、花そのものを間近で見るのは、なかなか難しい。

シドニーの王立植物園にあるガイミアリリー。人と比べると高さが一目瞭然!

野生のガイミアリリーがたくさんあって、目線の高さで花を見られるか、できれば上から見下ろせる場所はないものか?と血眼になって探したところ、良さそうなところを見つけた!

その場所は、シドニーから車で北へ2時間半ほどのネルソン・ベイにある、その名も「リリーの丘展望所」。

実際に行ってみたら、ガイミアリリーが群生しているだけではなく、青い海と緑の森が広がる丘の上の絶景スポットでもあった。

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展望所へのある丘の頂上。お弁当持参でピクニックにもおすすめ!(6月 筆者撮影)

海と森が広がる野生のガイミアリリー群生スポット
- スポット名:リリーの丘展望所 Lily Hill Lookout
- 住所:5 Lily Hill Rd, Nelson Bay NSW 2315

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ご覧のように野生のガイミアリリーが群生している。徐々に咲いていくと思うが、すべて一緒に咲いたら圧巻だろう。(6月 筆者撮影)

ガイミアリリーの開花時期は、「春先から夏にかけて」となっているが、私が訪問した6月上旬はまだ蕾の段階だったので、開花は6月下旬から7月くらいとみられ、ついている蕾のほとんどが開くのは、8月下旬くらいだろうか?

また、ガイミアリリーは「毎年咲かない」とされているが、この場所には、たくさんのガイミアリリーが群生しており、どれかが必ず咲いているはずなので、まったく見られないということはほぼないと思われる。

そして、海が見渡せる東側に向いた斜面になっており、午前中は逆光になってしまって写真が撮りにくいため、午後のほうがおすすめだ。Lily Hill Lookout に隣接するGan Gan Lookoutも 併せて見学するといいだろう。

車があればシドニーから日帰りで行くこともできるため、野生のガイミアリリーを見てみたい!という人は、ぜひ一度出かけてみて欲しい。たくさんのガイミアリリーに願い事もし放題だ(笑)〈了〉

ガイミア・リリー (ドリアンテス・エクセルサ)解説:山科植物資料館/植物図鑑

 

Profile

著者プロフィール
平野美紀

6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。

Twitter:@mikihirano

個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/

メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/

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