
ベトナムと日本人
ベトナムでVinFastのEVが勝っている「本当の理由」
▪️ベトナムの都市に溢れるVinFastという「違和感」
ホーチミンやハノイを歩いていると、ある種の「違和感」に出会う。
それは、「Vinfast」の電動バイクや電気自動車タクシーが、異様な密度で街に溢れていることだ。
日本から来たばかりの人は、だいたい次のように受け取る。
「ベトナムでも日本はEVで負けている」
「トヨタやホンダは、もう東南アジアで通用しないのか」
だが、ベトナムに長く住み、日々の"稼ぎ方"を現場で見ていると、この見方は少しズレていることに気づく。
▪️売れている理由は「人気」ではない
結論から言えば、VinFastが街に多い理由は人気でも、性能評価でもない。
EVが「欲しい」からではない。
EVで「働ける」仕組みが作られているからだ。
つまり「仕事を始めやすい」からである。
どういうことか?
ベトナムでは、配車・配送・タクシーが巨大な雇用吸収装置になっている。
VinFastはベトナムでEV車を売っているわけではないのだ。
・頭金ゼロ
・低保証金
・働きながらの分割払い
・収益保証・優遇
・充電インフラ優遇
これはもはやEV車販売ではない。
「安定した就業生活を、低コストで提供するパッケージ」だ。
街で見かけるVinFastの大半がタクシーである理由は、ここにある。
▪️新興国市場は「生活できるか」で決まる
日本のバイク・自動車メーカー
トヨタ、ホンダ、三菱、ヤマハ、スズキ、、、、
日本車・バイクが世界最高水準の品質と耐久性を持つことは、今も疑いようがない。
しかし新興国のEV市場では、もう一つ、より切実な問いがある。
「この乗り物で、今日から稼げるか?」
ここに最初に答えた企業が、街の風景をつくる。
VinFastはEVメーカーというより、
EV × 金融 × プラットフォーム × 就業を統合した"生活インフラ企業"に近い。
しかし、EVだけでは生活は完結しない
ただし、ここで重要な現実がある。
それは都市と地方の距離だ。
多くのベトナムの若者は、
平日は都市で働き、週末には100〜300km離れた実家へバイクで帰省する。
これは例外ではない。
むしろ、ごく普通の生活様式だ。
都市EVと、帰省モビリティは別物
現在のEVバイク・EV車は、
都市内のタクシー、配送、通勤では非常に合理的だ。
しかし長距離移動では、まだ壁がある。
・充電時間
・地方の充電インフラ格差
・長距離移動に対する心理的不安
結果として、現実はこう分かれる。
• 都市で稼ぐ → EVが合理的
• 長距離で帰省する → ガソリンが安心
この二重構造こそが、今のベトナムのモビリティの正体だ。
▪️日本メーカーの「勝てる領域」
ここに、日本メーカーが見落としてはいけないヒントがある。
日本メーカーが本当に強いのは、長距離耐久性・航続距離・補給インフラ適応力だ。
もし「EVか、ガソリンか」という二択思考をやめ、都市EV × 長距離安心モビリティという"生活全体をまたぐ設計"ができれば、ベトナムのEV市場で主導権を握る可能性は十分にある。
▪️VinFastが勝ったのは「EV」ではない
Vingroupが作ったVinFastは、EVメーカーではない。
都市生活インフラ企業だ。
だが、ベトナムの生活は都市だけでは完結しない。
家族に会いに、故郷へ帰る。。。この行動様式を理解した企業こそが、次の勝者になる。
▪️本当の勝負は、これから始まる
ベトナムの街に増えているVinFastは、EVの勝利ではない。
都市生活に入り込んだ企業が、いま一時的に勝っている。
それが現実だ。
都市から地方への帰省まで含めて設計できた企業が、次のベトナムEV市場を制する。
日本車メーカーの勝負は、これから始まるのだ。
▪️本記事の執筆者・ヨシヒロミウラは、
ベトナムおよび東南アジアを軸に、社会・経済・文化の変化についての考察を
個人サイト yoshihiromiura.comにて継続的に発信しています。

- ヨシヒロミウラ
北海道出身。ベトナム在住。武蔵大学経済学部経営学科卒業(マーケティング)。日本とベトナムを行き来する食、教育、人材等のビジネスの現場に関わりながら、現在進行形のベトナム社会を主なフィールドとし、アジア都市の経済・制度・文化の相互作用を観察し、思考、日本語で記録している。
個人ブログ:yoshihiromiura.com
X:@ihiro_x






















































