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農・食・命を考える オランダ留学生 百姓への道のり

森田早紀|オランダ

大手企業の力を借りて、配達業をさらにグリーンにソーシャルに

(iStock - South_agency)

雨ニモマケズ 風ニモマケズ 雪ニモ夏ノ暑サニモマケズニ
一日に150㎞も自転車で走る郵便屋さんがオランダにいる。

「グリーンでソーシャルな配達専門家」のCycloon(サイクローン)が始まったのは2002年のこと。第一号店がオランダ東部の街・ズウォレにできた。

初めのうちから赤くてスポーティーな服を着て、自転車で郵便物を配達していたようで、それは今でも続いているが、オランダ全国に約35の支店を持ち、1000人強のスタッフがいる企業にまで成長した。

私の所属していた大学にも、遠くからでも目立つ赤色の自転車に乗ったCycloonの配達員さんが毎日二回、手紙と小包を届けに来ていた。

では、彼らのどこが「グリーン」なのか?

もうお気づきの方も多いかもしれない。自転車で、というところが肝だ。

トラックやバイクの代わりに自転車を使うことで、温室効果ガスの排出を削減しているそう。都市間など長距離で自転車輸送が不可能な場合は、できるだけグリーンなエネルギー源を使ったトラックを使うとか。

さらに自動車は、道路などのインフラに対するダメージが大きく、渋滞の原因にもなりやすい。昨今のオンラインショッピング増加などで増える配達需要に対して自動車で応えようとするのは、環境的コストも社会的コストも高い。

そこで、「茶色のサンドイッチが原動力の自転車」が活躍するわけだ(カッコ内はCycloonウェブサイトに書いてあった文言。オランダで一般的な昼食メニューはパンに、チーズかピーナッツバターなどを挟んだ極めてシンプルなサンドイッチ。効率的にお腹を満たせればいい、という考えがあるらしい)。

Cycloonに限らずオランダでは自転車配達が増えてきていて、PostNL(オランダ郵便)による配達やUber EatsとThuisbezorgdなどのフードデリバリーはもちろん、おつかいサービスもある。

さらに実はこの企業、ソーシャルファームでもある。つまり、働き辛さを抱えた人々に働く場を提供しているのだ。

ソーシャルファームとしてCycloonが歩み始めたのは2012年。自転車配達エキスパートであったCycloonに、郵便物の仕分け等を行っていた福祉作業所が助けを求めた。知識経験をフル活用して作業を見直し、働き辛さを抱えた人々のガイダンスは特に重視した。

今ではスタッフのうち6~7割はそのような背景を持っているとか(*1・2・3)。

社長のMarieke Snoekさんは次のように述べている(*3)。

起業家の方々にお聞きしたいのです...できることならソーシャルな方法でやってみませんか?社会の面倒を見ずに、できる限りのお金を稼ごうとするのは、単純に現実的ではないと思います。それは、今の私たちの時代ではもう有り得ないことなのです。

そんなCycloonだが、2022年秋に、オランダの多国籍企業で卸売・小売事業に関わっているAhold Delhaize(アホールド・デレーズ)のオンラインショッピング部門のBol.comによる買収が決まった(*1・4・5・6)。

大手企業と力を合わせることで、「配達業界をよりグリーンに、よりソーシャルに」というミッションの達成に近づける。配達物が増えれば働く場も増える。Bol.com側も、自分たちの注文を自転車で運んでもらうことで、環境負荷を減らせるというメリットがある。

事業の拡大に関してもう一点。

Cycloon自身は、2016年にFietskoeriers.nl(フィーツコリアーズ)というプラットフォームを立ち上げ、地域の小さな自転車配達業者たちと協力し、オランダ全土で自転車配達を可能にしようとしてきた。このプラットフォーム/ブランドは2022年にCycloonと一体化したが、Cycloonは各地の他の自転車配達業者たちを買収したり追い出したりするつもりはなく、あくまでも「グリーンでソーシャルな配達業界」を作るパートナーとして進んでいくようだ(*7)。

このように、Cycloonは社会的インパクトを拡大している。

上の動画のインタビュー内でCycloonの配達員は

風なら強く漕げばいい
雨なら防水カバーを掛ければいい
雪ならスパイクタイヤをつければいい

と言っていた。さすが自転車大国オランダの精神性だ(笑)

買収ニモマケズに、というよりも彼ら自身が述べていたように買収をプラスの出来事として、ミッション遂行していけるのか。環境と社会に関するミッションを持った会社が、大手企業に買収される動きは興味深く、今後も目が離せない。

参考資料

*1 Cycloon. Website.
*2 Ahold Delhaize, 2022. Ahold Delhaize announces that Cycloon and bol.com receive approcal for strategic partnership
*3 Knigge, 2017. Marieke Snoek - Van fietskoerier tot algemeen directeur
*4 RTL Nieuws, 2021. Bol.com koopt fietskoerier Cycloon: wil duurzamer bezorgen
*5 Business Insider Nederland, 2021. Bol.com koopt fietskoerier Cycloon om sneller te verduurzamen - de webwinkel gaat voor het eerst zelf pakketten bezorgen
*6 De Wolven, 2021. Cycloon en bol.com maken bezorging samen duurzamer en socialer
*7 Cycloon, 2022. Cycloon & Fietskoeriers.nl gaan verder als één merk

 

Profile

著者プロフィール
森田早紀

高校時代に農と食の世界に心を奪われ、トマト嫌いなくせにトマト農家でのバイトを二度経験。地元埼玉の高校を卒業後、日本にとどまってもつまらないとオランダへ、4年制の大学でアグリビジネスと経営を学ぶ。卒業後は百の仕事をなす百姓になり、楽しく優しい社会を、農を軸に築きたい!オランダで生活する中、感じていることをつづります。

Instagram: seedsoilsoul
YouTube: seedsoilsoul

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