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日本人コーヒー生産者が語るコロンビア

松尾彩香|コロンビア

コロンビア発祥チェーン店 スペインでパクられ商標トラブルに

@YouTube -Comparti2 Frisby

2025年春、コロンビアで長年親しまれてきたフライドチキンチェーン「Frisby(フリスビー)」が、スペインで自社のブランド名をめぐる商標トラブルに直面しました。欧州連合(EU)で商標登録を行っていた同社が、外国で別の事業者によって同じ名称を使われるという事態に発展し、SNSを中心に大きな注目を集めています。

 

「Frisby」とは? コロンビアを代表するファストフードブランド

Frisbyは1977年、コロンビアの都市ペレイラで創業されたフライドチキン専門店です。同国初のファストフードチェーンのひとつとして知られ、現在では全国に店舗を展開。看板メニューである「pollo apanado(衣付きチキン)」の味わいと、親しみやすいキャラクター「Polito(小さなヒヨコ)」で、世代を問わず愛されています。Frisbyは2005年、将来的なグローバル展開を見越し、欧州連合(EU)における商標登録も済ませていました。しかし、それから長年にわたり、欧州での営業展開はされないままとなっていました。

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@YouTube - Comparti2 Frisby

 

騒動の発端:スペインで「Frisby」が別人の手に?

2025年3月、スペインで「Frisby España S.L.」という新会社が設立され、同名のブランドで飲食業を開始したことが発覚しました。この会社は、SNSやウェブサイトなどを通じて、「Frisby」という名称を使用し、コロンビア本社と類似するロゴ、色彩、店舗イメージを展開していたと報じられています。

この事態を受け、Frisby Colombiaは公式に声明を発表し、「当社は欧州において『Frisby』という名称とブランドの正当な所有者である。スペインでの使用は無許可であり、商標権の侵害にあたる可能性がある」と強く主張しました。

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左が本家、右がスペインのFRISBY @YouTube -Un pleito con sabor a pollo: enseñanzas que deja la disputa entre colombianos y españoles por Frisby

 

法的な争点:商標の「使用義務」

欧州における商標権には、登録後5年以内に商標を使用しないと、第三者による請求によってその権利が取り消される可能性があるという規定があります(使用義務)。今回、「Frisby España S.L.」側は、Frisby ColombiaがEU域内で実際に商標を使用していなかったことを根拠に、EUIPOに対し商標の取り消しを請求しました。これにより、EUIPOはFrisby Colombiaに対して、2025年7月17日までに「実際の使用実績」を証明するよう求めました。Frisby Colombiaがこの期限までに十分な証拠を提出できなければ、同社の商標登録は無効となる可能性が高くなります。EUにおいては、商標は登録するだけで守られるわけではなく、「実際に使われていること」が保護の条件です。コロンビア側がEU域内での商標使用を十分に示せなければ、たとえ先に登録していたとしても、商標権は取り消されてしまいます。

 

企業の反応と対応

Frisby Colombiaは、SNSおよび報道機関向けに声明を発表し、「現在、正式な法的手続きに入っており、知的財産の保護に全力を尽くしている」と説明しました。また、「プロセスは機密事項が多いため詳細は公表できないが、EUIPOとの手続きは進行中である」と述べています。一方、スペインで活動を開始した「Frisby España S.L.」は、自社の立場として、「正当な手続きによって商標の利用を開始した」と主張していますが、詳細な記者会見や声明は現時点で確認されていません。

 

SNSと社会の反応:国を挙げたFrisby支持

この件は、SNS上で大きな注目を集め、特にコロンビア国内ではFrisbyを支持する声が急増しました。多くのユーザーが「#NosDamosAPollo(私たちはフリスビーを支持する)」というハッシュタグを用い、Frisbyへの支持や思い出を投稿しています。国内外の企業もFrisby Colombiaへの支援を表明し、ケンタッキーフライドチキン、国鉄などがSNSで連帯のメッセージを投稿しました。また著名人やインフルエンサーも同様にFrisby Colombiaを応援するメッセージを投稿しています。これは単なる企業間の問題ではなく、文化的・感情的な問題として国民的な関心を集める事態となったのです。Frisbyは、単なるフライドチキンのブランドではなく、多くのコロンビア人にとっては「郷愁」や「誇り」と結びついた存在です。そのため、「外国の無関係な企業が名前だけを使ってビジネスをする」という構図は、コロンビア人のプライドと感情を大きく揺さぶったのです。

このコロンビア人の誇りをFrisby Colombiaは守ることができるのか。コロンビア人たちの注目が集まっています。

 

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。2022年7月よりスペイン在住

ブログ: http://campesinita.com

Twitter: @maon_maon_maon

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