
Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
豪プロ野球リーグ ABL存続の危機!オーストラリアの野球に足りないものは何か?

このコラムでも何度か「なかなか盛り上がらない」と伝えてきたオーストラリアのプロ野球ABL(Australian Baseball League=オーストラリア野球連盟)。そのABLが存続の危機に直面している。
昨季(2024/25年シーズン)まで6球団で戦ってきたが、今年の4月にメルボルン・エイシズがABL撤退を表明。5月にはキャンベラ・キャバルリーのオーナーがABL加盟ライセンスを返上すると発表した。
そして、オーナーが手を引くことになり、一時、存続が危ぶまれていたシドニー・ブルーソックスに新しいオーナーが決まったと発表され、ホっとしたのも束の間、翌週には、今度はパース・ヒートが撤退を表明したのだ。
-- abl-japan official (@abljapan) June 26, 2025
なんと、6球団中、3球団がABLから姿を消すことになってしまったのである。
2022/23年シーズンには、球団数最多の8球団となり、このまま盛り上がりを見せるかと思われたABLだが、さすがに3球団だけでのシーズン開幕は厳しい...
そこで、急遽、次の2025/26年シーズンは、残留する予定のアデレード・ジャイアンツ、シドニー・ブルーソックス、ブリスベン・バンディッツの3球団に加え、ABL本部がパース・ヒートのライセンスを引き継いで参加する形をとり、4球団で開催する方向で調整に入ったという。しかし、これもとりあえずの対応となるであろうことは想像に難くない。(参照)
キャンベラ・キャバルリーも今シーズン終了後のパース・ヒートも、チーム自体は解散せずに、今後の豪野球発展のために尽力するというが・・・なぜ、野球はオーストラリアに根付かないのだろう?どうしたらこの国で野球ファンが増えるのだろう?野球好きな者としては、そんなことばかり考えている。
そんな中で、真っ先に思うのは、オーストラリアの野球には「何かが足りない」ということ...
足りない何か・・・それは、応援団!
ABLのゲームを現地で見ていると、ざわざわざわという観客のざわめきと共に、バッターボックスに入った時やヒットを打った時、三振をとった時などに、選手を鼓舞する声がときおり数人程度からバラバラに飛ぶだけで、後は、カキーンという打った音やザザザという走る音が聞こえてくるだけ...。ほぼ皆(観客)が割とおとなしくゲームを見ていて、静かに試合が進行していく。若干、極端な個人的感想ではあるが、そんな感じなのだ。
日本のプロ野球、いや高校野球でもいい、球場で観戦したことがある人ならわかると思うが、これはものすごく物足りない。やはり、太鼓やラッパなどの楽器の音、応援歌、チャンステーマなどなど、応援の音頭をとる応援団がいて、それに合わせて観客がひとつになって声を上げて応援する。まるでお祭りのように球場全体が盛り上がるのが、野球生観戦の醍醐味ではないだろうか。
高校野球も含め、野球の応援を楽しむなら甲子園が最強!? pic.twitter.com/W6nsyVwacJ
-- Miki Hirano (@mikihirano) July 6, 2025
そもそも、野球というゲーム自体を見るならTV観戦のほうがよくわかる。球場で実際に観戦するメリットは、ゲームそのものよりも球場の熱気や雰囲気を楽しむほうが大きいと思うのだ。
「それをいうなら、MLBだって日本のような応援はないよね?」といわれそうだが、野球というスポーツにファンがしっかり付いてきた歴史のある国と、野球というスポーツ自体をよく知らない人のほうが多い国では比較にならない。まず、『野球』に人々の関心を向けることが必要なのだ。
『応援団』が観客を先導し、ゲーム中がお祭りのように盛り上がれば、オージーはお祭りやパーティー好きが多いから、きっと仲間同士で誘い合って球場に足を運んでくれるはず...
日本で開催された国際大会を経験したオージーたちが、日本流の応援に感激していたことは、以前このコラムでも書いたが、今年の3月に、東京ドームで開催された今年のMLB開幕戦プレマッチで対戦した阪神や巨人の応援は、MLBの選手らにも概ね好評だったそうだ。
やはり、日本流の応援は、選手たちの心を躍らせ、観客も一丸となって球場を盛り上げる起爆剤になるに違いない。ABLのチームにも応援団があれば、観客動員数をもっと増やせるのではないかと思うのだが、どうだろう?(といいつつ、他にも豪プロ野球には問題点が山積みだと思うので、違った角度からも考察してみたい)〈了〉

- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/
メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/