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パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

フランスのオーバーツーリズム問題から日本のオーバーツーリズム問題を考える

オーバーツーリズム問題が勃発しているパリ・モンマルトル地区  筆者撮影

フランスは年間1億人を超える海外からの観光客を迎えており、当然、観光収入は、国の大きな財源のひとつとして考えられています。昨年は、オリンピックのため、大変なことになるであろうと思っていたのですが、幸か不幸か?かえって通常の観光客の多くはパリを避けていたようで、混乱は想像していたほどではなく、また、対策も厳しすぎるほどに取られていたので、この観光による被害はあまりありませんでした。とはいえ、年間1億人を超える観光客がフランスにやってくるというのは、やはりスゴいことで、そのために起こっているトラブルというものも避けては通れない現実でもあります。

パリ・モンマルトルのオーバーツーリズム問題

日本でも外国人観光客の増加によるオーバーツーリズム問題が問題になっているようですが、パリでも今年は、モンマルトルのオーバーツーリズム問題が取りあげられていたので、ここで少しご紹介します。

パリのモンマルトル地区は、サクレクール寺院を中心とした、いわゆるモンマルトルの丘と呼ばれる一帯の地区のことです。この辺りの住民が声を挙げ始めているのは、あまりに多くなり過ぎている観光客や街全体が破壊されていく様子に抗議を始めています。地域住民たちが訴えているのは、団体観光客の迷惑行為や地域全体の店舗等が観光客仕様の店舗に入れ替わっていってしまうことであり、いわゆる、ごくごく日常生活に不可欠な食料品店(肉屋さんや魚屋さん雑貨屋さんなどなど)が観光客目当てのケバブやタコス、ハンバーガーやアイスクリーム、安価なお土産屋さんなどに変わっていってしまっていることや Airbnbや短期賃貸アパート業の乱入により、不動産価格が過去10年間で19%も上昇し、街全体が破壊されつつあることを嘆いています。

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そもそもこの界隈は以前から、あまりガラの良くない地域として認識していましたが、久しぶりに行ってみると、そのガラの悪さは健在なうえ、本当に質の悪い観光地化が進んでいる印象で、昨年はパリ・オリンピックのために一掃されていた露天商などもすっかり元にもどっており、サクレクール寺院に登っていく通り沿いには、半分ガラクタ(失礼!)のようなお土産屋さんが並び、その細い通りでは、反グレみたいな人が詐欺のバクチみたいなことをしていたりもします。

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また、さらに丘をのぼっていくと、その周辺には、それこそ観光客目当ての飲食店が限りなく?(ちょっとオーバーですが)続き、テラス席で食事をしている人々のテーブルを覗いて行くと、その多くはピザ・ハンバーガーなどを食べていて、ここ本当にフランス?なんでピザ?とビックリします。

また、アイスクリーム屋さんが異様に増えたのにも驚きます。これは、モンマルトルだけではなく、パリ全体に言えることだと思うのですが、近年、アイスクリーム屋さんが激増しているように思います。

以前だったら、アイスクリーム屋さんではなくクレープ屋さんだったり、ピザやハンバーガーではなく、クロックムッシュだったりしたと思うのですが、フレンチ色が褪せつつあるのを感じずにはいられません。

また、丘をのぼっていくための観光用の小さな電車の形のバス?が走っており、これでは、この辺り一帯がアミューズメントパークみたいだ・・と嘆く住民も少なくありません。また、そこには、偽物のミッキーマウスなどが歩いていたりするのにも苦笑いするしかありません。

街の景観を美しく保つために、マクドナルドのテントの色などにも赤を使わせなかったりするほど景観にうるさいはずのパリがこのような事態に陥ってしまっている事は特に地域の住民たちからすれば、嘆かわしいことに違いありません。

モンマルトルはすでにかなり前に観光バスが入れないようになっており、規制を全く行っていないわけではないのですが、周辺の店舗等が根こそぎ変わっていってしまっていることは、ある意味、もっと深刻な問題なのかもしれません。

日本のオーバーツーリズム問題と比べてみると・・

ただし、その他のパリ市内の観光地といわれる場所、シャンゼリゼやルーブル美術館、エッフェル塔などに行ってみると、まず、周辺のスペースがかなりゆったりしていることもあり、そこまでの交通渋滞や騒音といったような問題は見受けられません。ルーブル美術館などの美術館の類は、ほぼほぼ事前予約になっており、夏の間はこの事前予約がないと入館できません。事前予約があるにもかかわらず、ルーブル美術館の前のピラミッドの入り口には、予約してあるのに、なんでこんなに長蛇の行列?と不思議になるくらいですが、それでも、もしそれがなかったら、より大変な事態になっていることと思います。

また、何よりも、パリ市内の警察官の多さは、ちょっと外から来た人にとったら、驚くほどで、私自身は、慣れてしまって、あまりなんとも思わないのですが、たまにパリを留守にしていて、パリに戻ると、「ああ、パリってやっぱり警察官の数が半端ないんだな・・」と思わせられます。

日本では、オーバーツーリズム問題における交通渋滞や騒音やゴミ問題、文化財の劣化、生活圏の侵害などが挙げられているようですが、パリでは、その多くをこの膨大な数の警察官が守ってくれているのだと思います。警察官といっても、彼らは、だいたい3人から4人で行動しており、身体つきも厳つくて、必ず武器を携帯していて、ちょっと怖いほどです。

そもそもパリの場合、騒音やゴミ問題は、外国人観光客に限った問題ではなく、自国民自身もそれほどマナーが良いわけではないので、外国人観光客に限っての問題ではありません。そもそも外国人だらけのパリです。そういったマナーの悪い人々へは、悪い意味である程度は寛容、しかし、有名な観光地となれば、それを公に晒さないように、掃除もかなり行き届いています。

思うに日本人のようにマナーが良く、お行儀のよい国民は珍しく、これまで日本人だけであったら、敢えて規制しなくてもきれいに、しかも安全が保たれている状況であったものは、外国人にとったら、異質なものなのです。たまに日本に行って(東京)、驚くことは、ビックリするほどゴミ箱がないことです。パリには、本当にたくさんのゴミ箱がありますが、それだけゴミ箱があってさえも、ゴミのポイ捨ては、なくならないのです。なので、日本の常識は、外国人には理解できないので、それなりの対応が求められるのは必須です。そして、日本の警察官は、あんまり威圧感がありません。フランスなどでは、罰則、罰金なしの規則などは、ないも同然のようなところは、非常に嘆かわしいことですが、外国人は、そのような感覚の人が多いのです。

今後、パリでもさらに問題になりそうなこと・・

今年になって、パリでも、そのうち問題になりそうだな・・と個人的に感じているのは、観光客の公共交通機関の利用についてです。パリのメトロ14号線がオルリー空港まで開通して1年になりますが、今年の夏は、このメトロ内に大きな荷物を持った観光客がかなり増えて驚いています。オルリー空港を使う観光客ですから、多くは欧州からの観光客が多いとは思うのですが、彼らは本当にタフといえばタフで、スーツケースを二つ、バックパックやリュックサックを前と後ろにしょい込んで、おまけに子連れでメトロで移動するので、まあ、夏の間はかなりの混雑でした。ちょっと引いて眺めれば、子連れでこれだけの荷物を抱えてメトロで移動・・ご苦労様・・とも思うのですが、まあまあ場所も取るし、大変です。しかも、最近は、2~3分に1本はやってくるようになった14号線のメトロで、こんなに混んでいるとは・・今までにはなかったことです。

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これがさらに観光客が増えていくとなると、今後は、大変なことになりそうだ・・と思っています。夏の間は、多くのパリジャン・パリジェンヌはバカンスに出かけてしまうので、空いていたはずのメトロが全く空かないどころか大混雑。パリ市からしたら、嬉しい悲鳴かもしれませんが、住民としては迷惑そのもの。しかも、多くの公共交通機関は夏のバカンス期間中は、時刻表がバカンス期間モードに切り替わり、電車やバスの本数が減るので、さらにこの混雑をエスカレートさせています。さらに、夏のバカンス期間は、公共交通機関も工事が多く、不通になっている路線がけっこうあります。フランスは、このバカンス期間は、閉めてもいい・・という固定観念を変えていく必要があるようにも思います。

ともあれ、観光業はフランスの大きな財源でもあり、年間の観光収入(昨年)は、710億ユーロ(約12兆円)と見過ごせない金額。フランスは、これをなんとか1,000億ユーロまで引き上げようと目標を掲げています。しかし、同程度の観光客を受け入れているスペインの観光収入は1,260億ユーロ(約21兆6千億円)と大きく引き離されているのは意外です。なんかフランスの方がお金がかかりそうなイメージだったのですが、違うのですね。

旅行でもいいから、海外の国々を訪れて、他の国の文化に触れるということはとても楽しいことであると同時にとても大切なことでもあります。同時に外国からの観光客を上手に受け入れて、共存できるようにしていくことも大切なことです。外国で暮らして気付くことは、日本ではあたりまえのことが海外では全然あたりまえではないことがたくさんあるということです。それは良い面も悪い面もありますが、違う国の人々に触れることで、自分の国の状態がどんなものであるかを見つめなおすこともできます。

一時、大変な観光客の増加でオーバーツーリズム問題に見舞われたモンサンミッシェルなどは、モンサンミッシェル再開発プロジェクトとして、大規模な工事を行い、修道院のある島と陸地とを結ぶアクセスを改善したりもしていました。これも、あまりの混雑を緩和するために、全ての人々が無理なくアクセスできるように考慮された結果でした。

こうして、思い返してみれば、オーバーツーリズム問題を緩和するために、これまで少しずつ、その時々の状況にアジャストするようにされていることに気付かされます。

日本人の一個人としては、「日本に行ってきたよ!」というフランス人に出会うととても嬉しい気持ちになります。その誰もが日本を絶賛してくれることも日本人として誇らしい気持ちです。どうか、日本もそんな外国人たちを上手く受け入れてくれるようになっていってほしいと切に願っています。

 

Profile

著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



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