World Voice

中東から贈る千夜一夜物語

木村菜穂子|トルコ/エジプト

世界一美味しいサンドウィッチに選ばれた「シャウルマ」― 中東のソウルフードが世界を魅了!

シャウルマ ― 筆者撮影

中東で最も愛されているストリートフードの 1 つ「シャウルマ(またはシャワルマ)」が、アメリカのグルメ情報サイト TasteAtlas(テイストアトラス)の「Top 100Sandwichesin the World」で堂々の一位を獲得しました。投票は 2025 年の 1 月から 7 月まで行われました。

シャウルマとは?

シャウルマとは、細かくそぎ切りしたお肉を、みじん切りしたトマトや玉ねぎなどの野菜と一緒に薄いピタパンでクルクルっと巻いたサンドウィッチです。

newsweekjp_20250716171806.jpgシャウルマ ― 筆者撮影

お肉は香辛料でしっかりマリネされており、味が染み通っていてとってもジューシー。これに野菜とソース (ゴマソースやヨーグルトソース) が加わると、さらにしっとり仕上がります。中東のアラブ諸国では、シャウルマにはニンニクソースが必ずついてきます。さらに塩気と酸味が効いた野菜のピクルスも欠かせません。

使われるお肉は牛肉または鶏肉がほとんどですが、国によってはラム肉が使われます。お手軽なうえに安価、そして抜群のおいしさ...というわけで、中東にはシャウルマ屋さんがあちこちにあります。まさに「国民食」と呼ぶにふさわしい存在です。

オスマン帝国から続くシャウルマの古い歴史

シャウルマのルーツは、オスマン帝国時代までさかのぼるといわれています。語源となったのはトルコ語で「回す」「回るもの」を意味する çevirme (チェビルメ)。これがアラビア語の発音で「シャウルマ」になったといわれているとか。現在のトルコではドネルケバブという名前の方が一般的です。

串に差し通された巨大なお肉のかたまりが垂直に回転しながら焼かれます。火が通った面から薄くそぎ落としていきます。

newsweekjp_20250716172045.jpg火が通ったお肉を薄くそぎ落としている様子。手前が牛肉で、奥が鶏肉 ― 筆者撮影

シャウルマの魅力とバリエーション

先に書いたように、中東諸国でシャウルマ屋さんを見ないということはありません。なんてったってソウルフードですから。とはいえ、お店によって味が異なります。また国によってもフィリングに多少のバリエーションがあります。例えばレバノンやシリアではフライドポテトもピタパンに一緒に巻かれることがあります。かなり太めのどっしりしたシャウルマ。反対にヨルダンやエジプトでは、フライドポテトは中に入れられず、シャウルマはほっそりめ。

newsweekjp_20250716172409.jpgエジプトにあるシリア人のシャウルマのお店。シャウルマはほっそりめ ― 筆者撮影

アラビア語で「ワジベ (وجبة)」と呼ばれるフライドポテトとのセットメニューもとても人気。こちらは主にヨルダン、シリア、エジプトなど。一般的なワジベは、シャウルマとフライドポテトにピクルスやニンニクソースが添えられています。サンドウィッチだけでもかなりのボリュームなので、ワジベになるとかなり満腹になります。

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ヨルダンのシャウルマのセットメニューはこんな風に出されることが多いです ー 筆者撮影

シャウルマの魅力は、飽きないこと。何度食べてもやっぱりまた食べたいと思ってしまう中毒性があります。

newsweekjp_20250716173709.jpgこちらは少し高級なカフェで頼んだシャウルマ。味は美味しいですが、シャウルマはストリートフードなので、やはり屋台風のシャウルマ専門店で頼むのが一番 ー 筆者撮影

美味しいシャウルマ屋さんは「人だかり」が目印

シャウルマを売っている店は本当にたくさんありますが、味付けは千差万別。塩気が強いところもあれば、脂っこくて胃もたれしそうなシャウルマもあります。美味しいお店はいつも人でいっぱいで、ごった返しています。人がたくさん出入りするシャウルマ屋さんはお肉が新鮮だということ。

中東を越えて世界に広がるシャウルマ文化

先ほどシャウルマは「中東で」最も愛されているストリートフードと書きましたが、ロシアに旅行した時にモスクワの街角でもシャウルマが売られていました。ただしシャワルマがロシアに入ったのは、ソ連崩壊後の 1990 年以降だともいわれてます。中東ではオスマン帝国時代から食されていた歴史ある料理です。

一押しのシャウルマ屋さんはアンマン市にある!

中東のどの国に住んでも、美味しいシャウルマ屋さんを見つけるのが私の習慣でした。もともと外食はほとんどしませんが、シャウルマは定期的に食べたくなります。ちなみにトルコのシャウルマはアラブのシャウルマほどジューシー感がありません。シャウルマはやはりアラブ圏で食べるのが一番かなと個人的には思います。

これまでで一番美味しいと思ったシャウルマ屋さんは、アンマン市の第 2 サークルにある老舗「Reem」。他のお店に比べるとかなり小ぶりなシャウルマで、2 つはペロリと食べれてしまいます。お肉のしっとり感も深い味付けも Reem ならでは。いつも大勢の人で賑わっていて、大家族の家長と思われるアラブ男性が大量買いをする姿も珍しくありません。アンマンに行くと必ず立ち寄っています。何年経っても変わらぬ究極の美味しさにほっとします。

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少し古い写真ですが、まだヨルダンに住んでいたころ Reem で撮った写真 ー 筆者撮影

世界一という快挙

この中東で愛されているシャウルマが世界で一番美味しいサンドウィッチとして 1 位の座を獲得したのは、本当に喜ばしいことです。中東には戦闘やテロといったネガティブなイメージが付きまといますが、食文化には世界に誇れる魅力が溢れています。

おまけ: エジプト発の「ケブダ・イスカンダラーニ」が 43 位を獲得!

同じ TasteAtlas(テイストアトラス)の「Top 100Sandwichesin the World」では、なんとエジプト発の「ケブダ・イスカンダラーニ (Kebda Eskandarani)」が 43 位に登場しています。ケブダ (キブダ) とはレバーのことで、レバーをスパイシーに味付けしたもの。唐辛子がピリッと効き、クミンやコリアンダーなどの香辛料とのシンフォニーが絶妙。通常は牛または羊のレバーが使われます。臭みは全くなく、濃厚な味が魅力。

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自宅用に買ったのであまりきれいに盛り付けていませんが、かぶりつく前にさっと撮った写真 ― 筆者撮影

なぜ「イスカンダラーニ (アレキサンドリア風)」なのかというと、発祥の地がアレキサンドリアだから。キブダはエジプトでは本当によく食されるストリートフードの代表。このキブダをサンドウィッチにしたものが「ケブダ・イスカンダラーニ」です。味付けがかなり濃厚なので、レモンやピクルスと一緒に食されます。

中東の他の場所ではほとんど見かけることがないことを考えると、このエジプトオリジナルのサンドウィッチが 43 位に入っているのはかなりの快挙といえます。ビタミン A や鉄分を豊富に含む栄養満点のレバー。これがエジプト人の活力の源なのかもしれません。

こうした中東の味がもっともっと多くの人に届くことを願っています。

 

Profile

著者プロフィール
木村菜穂子

中東在住歴17年目のツアーコンサルタント/コーディネーター。ヨルダン・レバノンに7年間、ドイツに1年半、トルコに7年間滞在した後、現在はエジプトに拠点を移して1年目。ヨルダン・レバノンで習得したアラビア語(Levantine Arabic)に加えてエジプト方言の習得に励む日々。そろそろ中東は卒業しなければと友達にからかわれながら、なお中東にどっぷり漬かっている。

公式HP:https://picturesque-jordan.com

ブログ:月の砂漠―ヨルダンからA Wanderer in Wonderland-大和撫子の中東放浪記

Eメール:naoko_kimura[at]picturesque-jordan.com

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