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England Swings!

ラッシャー貴子|イギリス

英国の桜、日本の桜

実は数年前から、ロンドン周辺では桜がずいぶん増えている気がしていた。引っ越したばかりの頃は、白い小さな花を見つけても近寄るとアーモンドやサンザシだったりして、がっかりすることが多かったのに、この頃は何かしらの品種の桜である確率が高くなっている(花の形で確信できなくても、幹に横の線が入っていて桜とわかる)。気になって調べてみると、英国では桜を植えるさまざまなプロジェクトが始まっていた。

環境保護団体のナショナル・トラストでは、気候変動対策の一貫として2030年までに2000万本の植樹をめざしており、花の咲く木400万本を都市部に植える予定だ。このプロジェクトには桜のほかに梅やサンザシも含まれるものの、ナショナル・トラストでは「春の訪れを祝うHanami」や「日本のような桜の季節を迎えること」という表現を使っていて、すでにロンドン、バーミンガム、ニューカッスルなどで植樹が行われている。

日英友好150周年を記念して2017年に始まったSakura Cherry Tree Project日英桜植樹プロジェクト)は、日英両国の大使や商工会議所などの支援を受けている。これまで英国内に8000本の桜を植えており、今年も100か所以上での植樹を予定する予定だ。プロジェクトが今年4月にロンドンのリージェンツ・パークで催した花見の会には在英日本大使も出席して、和太鼓や琴の演奏が披露された。

偶然にも最近、まだ支柱で支えられている若い桜の木を近所で数本見つけた。付いていたラベルから、温暖化対策として区が植えたものだとわかった。そんな試みもあったんだんだな。知らなかった。

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キューガーデンの桜の一部。桜並木もあるけれど、ここでは桜の花と刈り込まれた濃い緑の対比がおもしろい。日本にはあまりない見せ方だ。筆者撮影

注目すべきは、先ほどのSakura Cherry Tree Projectでは、1か所に100本以上の植樹も計画しているという点だ。ということは、一斉に咲くたくさんの桜を見られるということではないですか! ロンドンにいながら、わたしがイメージする日本風のお花見ができるかと思うとわくわくする。

たくさんの桜があちこちで咲くようになったら、この国でのお花見の感覚も変わるだろうか。花が散る時の切ない思いや花筏という言葉なんかも広まったりするのかな。

来年は、今回紹介したプロジェクトで植樹された桜を見に行くことにしよう。どんな桜が見られるか、今から楽しみだ。

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八重桜のかわいらしさにはロンドンで目覚めた。見慣れたソメイヨシノよりピンクが濃くて、形もふんわり丸くて、ますますハッピーな気分になる。筆者撮影
 

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著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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