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England Swings!

ラッシャー貴子|イギリス

ウィンブルドンの季節に大ブレイク、英国版いちごサンド

英国で話題のM&Sのストロベリー&クリームサンドイッチ。1切れで2.80ポンド(約540円。同じM&Sでも店舗によって多少異なる)。筆者撮影

いちごのサンドイッチが英国で大人気だ。6月末の発売直後には品切れも続出、しばらくは店頭で見ることもできなかった。この騒ぎはSNSや情報番組に取り上げられ、公共放送BBCまでもが報道した。甘いサンドイッチにはこれまでなじみが薄かったこともあって、サンドイッチの定義や税金問題にも話がおよび、大きな話題を呼んでいる。

このサンドイッチは、大手小売店マークス&スペンサー(以下「M&S」)が6月末に夏季限定で売り出したもので、その名もRed DiamondTM Strawberry and Cream(レッドダイヤモンド・ストロベリー&クリーム)。レッドダイヤモンドは英国産の人気のいちごの品種で、この時期わが家でもほぼ切らさずに買っている。ヨーロッパでは、いちごなどのベリー類は夏が旬なのだ。

日本のフルーツサンドにヒントを得たこのいちごサンドは、わざわざ日本風に甘くやわらかめに作られたパンに、いちごと生クリームがはさまれている。発売2日後にはM&Sのサンドイッチ売り上げナンバーワンに輝いたほどの売れ行きで、2週間ほど過ぎてようやく落ち着き始め、今ではずいぶん手に入りやすくなった。わたしの周りでは、ここ数日でやっと食べたよという友人が増えている。

この大ブレイクの背景には、日本のフルーツサンドが SNSを通じて大評判になっていたことがあった。今や英国をはじめ世界各国から観光客が日本を訪れるけれど、彼らのお目当てのひとつは、美味しい上に見栄えもする日本の食べものだ。カラフルなフルーツサンドの噂で盛り上がっている時に日本風のいちごサンドが発売されたら、やっぱり試してみたくなっちゃうでしょう? M&Sはうまく流行に乗ったのだ。

ただ、これまで甘いサンドイッチはジャムサンドぐらいしかなかったこの国では、初めはいちごサンドへの抵抗は大きかった。けれど、M&Sが全国的に発売したことが大きな話題になり、そんなに美味しい日本のサンドイッチがあるなら、と興味を示す人が増えたようだ。実際、わたしの周囲やメディア、SNSを見ていても、おそるおそる試してみたら美味しかった、という感想が多い。

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パッケージを外したいちごサンド。クリームがわりとしっかりした質感であることが伝わるでしょうか。ちなみに英国風にパンのみみはついたまま。筆者撮影

同時に「美味しいけどサンドイッチというよりデザートみたい」という声も多く、これはサンドイッチなのかケーキなのかという議論も起こっている。英国では食品なら非課税、菓子類なら課税と定められているので、ケーキと判定されると、いちごサンドには付加価値税分20%の値上げが強いられる。それでなくても2切れ2.60ポンドからあるM&Sのサンドイッチの中で、1切れ2.80ポンドといういちごサンドは高い。値上げになればM&Sには痛手だ。

M&S側は、「サンドイッチとは、(その生みの親である)サンドイッチ伯爵の言葉どおり、『何かをはさんだ2枚のパン』である」という英国サンドイッチ協会の定義を出して、「だからこれはサンドイッチですね!」とSNSで明るく主張しているけれど、今日の時点でまだ決着はついていない。さて、どうなるだろう。

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著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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