
ベトナムと日本人
ベトナム南北高速鉄道計画、民間投資を解禁 VinspeedやThacoが名乗り 日本も関心を表明

ベトナム政府は、国家の重点インフラプロジェクトである南北高速鉄道計画の推進に向け、従来の国家資金中心の枠組みを見直し、民間資本の導入を認める方針を正式に示した。これを受けて、国内有力企業であるVinspeedとThacoの2社が関心を示し、事業参加に向けた提案や動きを活発化させている。
南北高速鉄道とは? 国家的プロジェクトの概要
現在のハノイ駅。現在の南北鉄道はディーゼル車両で片道約30時間かかる。 (撮影 ヨシヒロミウラ)
南北高速鉄道は、ハノイとホーチミンを結ぶ全長約1,541kmの大規模プロジェクトであり、長年にわたって構想と議論が続いてきた国家的プロジェクトである。計画が実現すれば、所要時間が従来の30時間からわずか6〜7時間に短縮され、国内移動や物流に革命的な変化をもたらすと期待されている。
財源問題が転期に PPP導入で民間の活用へ
当初、このプロジェクトは約580億ドルの費用が見込まれ、全額を国家予算で賄うには過大な負担とされていた。そのため政府は2025年を見据え、事業の一部区間において官民連携(PPP)方式の導入や、民間単独による投資を可能とする方向で法整備を進めている。
Vinspeed、高速鉄道に参入意欲
こうした中、VinGroup傘下の新興交通インフラ企業「Vinspeed」が参入に意欲を示している。同社は近年、都市鉄道やEVバスなどの分野でも急速に存在感を強めており、高速鉄道への進出を「総合モビリティ戦略の一環」と位置づけている。
自動車大手 Thacoも参入へ 中部開発の経験を活かす
一方、自動車メーカーであるThaco(チュオンハイグループ)も、既に中部地域での道路・港湾インフラ事業を多数手がけており、鉄道事業への進出にも強い関心を寄せている。同社幹部は「鉄道インフラは経済回廊の要。製造業と物流業のシナジーを発揮できる分野」と述べており、国際基準に基づいた路線整備の提案も視野に入れている。
日本も関心を表明している
日本は、2010年にJICAを通じてこのプロジェクト支援をした最初の国です。その後長年にわたる調査を経て、2022年12月、駐ベトナム日本国特命全権大使およびJICAベトナム事務所所長との会談において、日本側は南北高速鉄道プロジェクトへの関心がある事を再度示し、2024年3月、両国財務省の会合において、日本側の代表者が資金を提供する用意があると述べ、技術面だけでなく資金面でも支援する決意を示した。また中国、韓国も南北高速鉄道への投資に関心がある事を表明している。
政府も歓迎の姿勢 ただし課題は山積み
民間参入の動きに対し、政府交通運輸省は歓迎の姿勢を示しており、2025年以降の着工に向けて詳細な区間別の入札方式や評価制度の策定を進めている。ただし、プロジェクト全体の採算性や土地収用、技術移転など、解決すべき課題も多く、計画の具体化にはなお時間を要する見通しだ。
実現へ向けて前進 「夢の鉄道」に現実味
それでも、国内大手企業の関与により、かつて「夢物語」とも言われた南北高速鉄道計画が、現実のものへと大きく前進しつつある。今後の民間企業と政府の協調によって、ベトナム交通網の未来図がどう描かれるか注目される。
※VN Expressを参照