
Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
オーストラリアの空に新規参入「コアラ航空」 来年就航予定 ―コアラは無事に空を飛べるのか?

オーストラリアに新たな航空会社が誕生する。その名も「コアラ航空」。
オーストラリアのナショナルフラッグ・キャリアとして知られる「カンタス航空」は、カンガルーをモチーフにした尾翼のマークから、「空飛ぶカンガルー」の愛称で呼ばれているが、「コアラ航空」は、さしあたって「空飛ぶコアラ」といったところだろうか。
来年(2026年)後半に就航予定だというコアラ航空は、LCC(格安航空会社)として営業を開始する見込みで、カンタス航空(ジェットスター航空含む)とヴァージン・オーストラリア航空による独占状態を打開すると意気込んでいる。
オーストラリアの国内線事情
現在のオーストラリア国内路線は、小規模な地方路線を除き、カンタス航空とその傘下のジェットスター航空、ヴァージン・オーストラリア航空の3社によるほぼ独占状態となっている。オーストラリアは、アラスカ・ハワイを除いたアメリカ本土とほぼ同じ面積でありながら、主要都市間を除けば、国内の航空路線は貧弱で便数も極端に少ないのがネックだ。
過去には、タイガー航空、オズジェット航空、レックス航空やボンザ航空などが参入したが、どれも経営を本格的に軌道に乗せることができずに破綻。ボンザ航空は、就航からわずか1年3ヶ月で運航を停止。最終的に買い手が見つからずに清算手続きに入った。(参照)
レックス航空は、経営破綻後、Ernst & Young を管理人とした自主管理下にあるが、同社が運航する過疎地域を結ぶ路線は、該当地域住民の重要インフラであるとの観点から、州政府や連邦政府の援助を受けながら、買い手を模索しつつ、かろうじて運航を継続している状況だ。(参照)
コアラ航空の戦略と課題
コアラ航空は、2019年にオーストラリアとパプアニューギニア、太平洋諸島で50年以上に渡って航空ツアーとチャーター便を運航してきたデザート・エア・サファリズ社を買収。経営破綻したボンザ航空の枠を引き継ぐ形で、これまで市場参入を試みて失敗した他のLCCとは異なるやり方で臨むとしているが・・・
同社は、現時点ではまだ商業用旅客機の機体も、就航に必要な航空関係の証明書も得ていないと、国内メディアは報じている。(参照)
とはいえ、同社の拠点であるメルボルンとシドニーを結ぶ路線は、国内では1番目、世界でも5番目に利用者数が多い路線でもあるとのことで、まだ新規顧客を開拓できる余地はあるのかもしれない。
AIを活用し、低価格競争に走らず、ニッチなマーケットに切り込むというコアラ航空。
国内の旅行業界は、来年までに機体確保をはじめとする問題点をクリアできれば、予定通り就航できるだろうというが、成功を収めるにはさらなる資金調達が必要とみる専門家もいる。また、現状では、コアラ航空が掲げる「ニッチ戦略」とは一体何を指すのか不透明で懐疑的だとする国内の航空ファンも少なくない。
果たして、コアラは空を飛ぶことができるのか?〈了〉

- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
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