コラム

アフガニスタンで中国人が標的に──イスラム過激派が仕掛ける新たな攻撃

2025年06月19日(木)14時48分
アフガニスタンで中国人が標的に──イスラム過激派が仕掛ける新たな攻撃

279photo Studio -shutterstock-

<近年、国際的なテロ活動を活発化させるイスラム国ホラサン州(ISKP)だが、特に中国への敵意を強く示す。標的は、中国人ビジネスマンから技術者、ホテルまで多岐にわたる>

アフガニスタンの豊富な地下資源を背景に、近年、中国企業の進出が目立っている。アフガニスタンに眠る金、銀、リチウム、ニオブ、コバルトなどの鉱物資源は1兆ドル以上の価値があるとされ、国際社会の関心を集めている。

特に、中国はこれらの資源開発に積極的に取り組んでおり、2023年1月にはタリバン政権と北部油田開発に関する大規模契約を結ぶなど、協力関係を深めている。


さらに、中国はタリバン政権が派遣した大使を正式に受け入れる初の国となり、外交面でも関係強化を進めている。このような経済的・外交的な結びつきは、中国がアフガニスタンでの影響力を拡大しようとする姿勢を明確に示している。

しかし、これに対し、タリバンと対立するイスラム国ホラサン州(ISKP)は近年、中国関連の施設や人を標的としたテロを実行し、発信する声明では頻繁に中国への反発や敵意を示している。

ISKPによるテロ事件

ISKPは、2015年頃にアフガニスタンで結成されたイスラム国(IS)の分派で、タリバンや地元のシーア派であるハザラ族などを狙ったテロを繰り返している。

しかし、中国がタリバンとの関係を強化する中、ISKPは中国をタリバンの「後ろ盾」とみなし、中国人や中国関連施設への攻撃をエスカレートさせている。この動きは、2021年以降のテロ事件で顕著に表れている。

2021年10月、クンドゥズ州のシーア派モスクで大規模な自爆テロが発生し、50人以上が死亡、多数が負傷した。この事件は、タリバンが2021年8月に政権を掌握した直後の混乱期に起きた。ISKPは犯行を認め、実行者がウイグル人だったと公表した。

プロフィール

和田 大樹

株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO、清和大学講師(非常勤)。専門分野は国際安全保障論、国際テロリズム論など。大学研究者として国際安全保障的な視点からの研究・教育に従事する傍ら、実務家として海外進出企業向けに政治リスクのコンサルティング業務に従事。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国特別検察官、尹前大統領の拘束令状請求 職権乱用

ワールド

ダライ・ラマ、「一介の仏教僧」として使命に注力 9

ワールド

台湾鴻海、第2四半期売上高は過去最高 地政学的・為

ワールド

BRICS財務相、IMF改革訴え 途上国の発言力強
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story