コラム

ドローンの進化とテロリズム──イスラム国は市販の無人航空機を改造し3つの目的で使用

2025年04月11日(金)16時19分
近年のドローンの進化とテロリズムとの関係──イスラム国の事例を中心に

leolintang -shutterstock-

<オープンソース技術の普及により、ドローンの制御ソフトや設計図がインターネット上で公開され、技術的知識を持つ個人でも改造が可能に。一方で、国際的な規制は追いついていない>

ドローン技術の進化は、軍事、商業、個人利用の分野で革新的な変化をもたらしている。かつては国家の軍事機関が独占していた無人航空機(UAV: Unmanned Aerial Vehicle)の技術が、低コスト化とアクセシビリティの向上によって非国家主体、特にテロ組織にも拡散しつつある。

この技術的進歩は、テロリズムの手法を根本的に変革し、新たな安全保障上の脅威を生み出している。


【ドローン技術の進化 低コスト化と高性能化の融合】

ドローンの起源は20世紀初頭に遡るが、本格的な軍事利用は第二次世界大戦以降に進展した。21世紀に入り、GPS技術、センサー技術、小型化された電子機器の進歩により、ドローンは高性能かつ安価なツールへと変貌した。

例えば、商用ドローン市場では、DJI社のような企業が提供する機種が数万円から購入可能であり、自動飛行機能や高解像度カメラを搭載している。これらの技術は、元来は災害監視や物流目的で開発されたが、その汎用性ゆえに軍事転用が容易となった。

特に注目すべきは、「スウォーム(群れ)技術」の進化である。複数のドローンが連携して自律的に動作するこの技術は、単一の大型兵器に依存せず、低コストで分散型の攻撃を可能にする。

また、人工知能(AI)の統合により、ドローンは標的の識別や経路最適化をリアルタイムで行えるようになり、操縦者の技術的負担を軽減している。このような進化は、国家間の紛争だけでなく、非対称戦におけるテロ組織の戦術にも変革をもたらしている。

プロフィール

和田 大樹

株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO、清和大学講師(非常勤)。専門分野は国際安全保障論、国際テロリズム論など。大学研究者として国際安全保障的な視点からの研究・教育に従事する傍ら、実務家として海外進出企業向けに政治リスクのコンサルティング業務に従事。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

カナダ総選挙、「反トランプ」で与党勝利 カーニー首

ワールド

5月停戦案と直接協議、ウクライナの返答待っていると

ビジネス

貿易戦争、ユーロ圏の成長とインフレ抑制も=ECBチ

ワールド

韓国最高裁、李在明氏に5月1日に判決 公選法違反の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story