コラム

「諸刃の剣に...」アルカイダやイスラム国に忠誠を誓う世界各地の武装勢力の皮算用

2025年03月11日(火)18時10分
アルカイダやイスラム国に忠誠を誓う武装勢力:利点とリスク、具体例を交えて

Prazis Images -shutterstock-

<地域の武装勢力にとってアルカイダやイスラム国を支持することは人員や資金の拡大、組織の正当性向上で短期的にはメリットが出ようが、リスクも伴う>

今日、世界各地にはアルカイダやイスラム国に忠誠を誓う武装勢力が点在している。これらの勢力は、国際的なテロ組織の名を掲げることで、自らの活動に戦略的な意味を見出そうとしている。

しかし、この選択は利点をもたらす一方でリスクでもある。ここでは、こうした忠誠関係がもたらす利点とリスクを整理してみたい。


人員や資金の拡大、組織の正当性向上で利点も

まず、利点の1つは、ブランド力による求心力とリクルートの拡大である。

アルカイダやイスラム国の名前は、単なる組織名を超えて、世界的な知名度とジハード主義の象徴性を帯びており、地域の武装勢力はそういった名前を冠することで自らの存在感を高め、新たな支持者や戦闘員を惹きつけやすくなる。

そして、それを機能させる上で、ソーシャルメディアを駆使した宣伝が大きな役割を果たしており、例えば、イスラム国は2010年代中盤にYouTubeやTelegramを活用し、高品質なプロパガンダ動画を公開することで、欧米や中東の若者層に正義の戦いへの参加を呼びかけた。

このブランド力は、特に失業や社会的不満を抱える若者に訴えかけ、彼らに過激思想の受け皿を提供し、リクルートの成功を後押ししている。

また、資源とネットワークの共有による活動の強化がある。国際的なテロ組織に忠誠を誓うことで、地域勢力は単独では到底手に入らない資源やネットワークへのアクセスを得られる。

たとえば、アルカイダは長年にわたり、アフガニスタンやパキスタン国境地帯で培った武器供給網や訓練施設を各地の支部と共有してきた。また、資金面でも、サウジアラビアやカタールなど湾岸諸国の一部富裕層からの寄付が重要な役割を果たしているとされる。

プロフィール

和田 大樹

株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO、清和大学講師(非常勤)。専門分野は国際安全保障論、国際テロリズム論など。大学研究者として国際安全保障的な視点からの研究・教育に従事する傍ら、実務家として海外進出企業向けに政治リスクのコンサルティング業務に従事。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロで軟調、円は参院選が重し
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story