コラム

参院選 NHK党「帰化候補」騒動に対する2つの怒り

2022年06月21日(火)17時00分
周 来友(しゅう・らいゆう)
参院選

Y-STUDIO/ISTOCK

<NHK党が元中国人を公認候補とし、ネットで「スパイ」疑惑が出て、公認が取り消された。それと別に「10億円寄付」の怪しい話もあったという。これが悪しき前例とならないことを私は願っている>

最近がっかりさせられることがあった。何かというと、来たる参議院選挙である。

6月22日の公示を前に各党が候補者選びを進めるなか、5月27日、「NHK党」の立花孝志党首が観光バス会社を経営する原田優美氏の公認を発表した。原田氏は2005年に日本国籍を取得した元中国人。このことはすぐさま在日中国人の間で話題となり、原田氏の過去が掘り返された。

それによると、原田氏は2年前、クルーズ船のダイヤモンド・プリンセス号内で新型コロナウイルスの集団感染が発生した際、乗船していた中国人観光客のために、隔離期間終了後にバスを手配し、空港まで送り届けた。このことから中国で「愛国華僑」として名をはせ、とある中国メディアのインタビューでは「日本人になったが、心は中国だ」と語っていたという。

このため、ネット上では「中国共産党のスパイを公認していいのか」と非難の声が噴出。わずか3日後の5月30日には、スパイの可能性は低いとしつつも、NHK党が原田氏の公認を取り消したのである。

度重なる党名変更など奇抜さが目立つNHK党だが、マイナー政党の単なるごたごたと片付けてはならない。

立花氏によると、原田氏を紹介してきたのは、民主党(当時)の元衆院議員で、現在は日本維新の会所属議員の秘書を務める高邑(たかむら)勉氏。「親中」の鳩山由紀夫元首相に近い人物だ。

さらに立花氏は、もう1人、元中国人擁立の話があったことも明かしている。

推薦してきたのはある自民党議員で、その元中国人が参院選で当選した暁にはNHK党に10億円を寄付すると言ったらしい(立花氏は断り、公認はしなかった)。この驚くべき話の真偽のほどは定かではないものの、さもありなんと思った。

というのも、私自身、ある人物から「出馬しないか」と声を掛けられたことがあるからだ。金銭的な話にはならなかったが、帰化した元中国人が大勢いるので、比例で出馬すれば当選の確率は高いとのことだった。

私は以前このコラムで、自分は今も中国国籍だとはっきり書いたのだが、どうやら読んでもらえていなかったようだ(参考:来日30年超、それでも私が日本国籍を取得しない理由)。

政治家になって日本に身をささげるためには、相当の覚悟や知識が必要なはずだ。高邑氏や原田氏、もう1人の元中国人の真の目的は分からないが、大した志も持たない人物が日本の政界入りを狙っていることは間違いないだろう。

民主主義国の選挙というものは、所詮この程度なのか。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ワールド

ADBと世銀、新協調融資モデルで太平洋諸島プロジェ

ワールド

アングル:好調スタートの米年末商戦、水面下で消費揺

ワールド

トルコ、ロ・ウにエネインフラの安全確保要請 黒海で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story