来日30年超、それでも私が日本国籍を取得しない理由

日本のパスポート YUSUKE IDE/ISTOCK
<日本のパスポートは「世界最強」。「どうして帰化しないの?」と聞かれることもあるが......>
私は中国人だ。もっと正確に言えば来日して30年以上たち、日本人の配偶者がいる今も国籍は中国のままの中国人だ。
「どうして周さんは帰化しないの?」
年末、自分のYouTubeチャンネルにゲストを呼び、国籍をテーマに激論を交わした際もそう聞かれた。
1987年に留学生として来日したとき、日本人の保証人を立てなければならなかった。その後、日本からドイツに留学したときも同様だった。どちらも私が中国人だったから。90年代に渡独した日本人には保証人など要らなかった。
北京の大学時代の恩師が、後にボストンの大学で教鞭を執るようになり、遊びにおいでと言ってくれたことがあった。東京・赤坂のアメリカ大使館に出向き、観光ビザを申請すると......あっさり却下された。
1989年に天安門事件が起こり、渡米する中国人にかつてない厳しい目が向けられていたこともあるが、それ以来、アメリカに対する興味はうせ、かの国には一度も行ったことがない。
日本のパスポートは「世界最強」と言われる。シンガポールと並び、ビザなしで渡航できる国が192カ国と世界一多いからだ(英コンサルティング会社ヘンリー・アンド・パートナーズの調査)。
それに比べて中国は、以前よりずいぶん増えたとはいえ、80カ国。その不便さに私はしばしば泣かされてきた。家族で海外旅行に行くと、入国審査で私だけ足止めを食らったりする。この苦労、日本人には到底分かるまい。
中国国籍なので、もちろん中国に入るのに不自由はない。しかし、実は中国に私の戸籍はない。1990年前後に公安当局が父の元に来て「お宅の息子はもう存在していないのと同じだ」と言って抹消したらしい。
私はその後、取材で訪れた地方のホテルで「パスポートじゃ駄目だ。中国人なら中国の戸籍があるだろう。身分証を出せ」と、難癖をつけられたことがある。
つまり、中国国籍のままでいるメリットなんか何もない。不便なことのほうがよっぽど多い。だから、条件さえ整えば日本国籍を手に入れたい――。そう考える在日外国人、特に中国人の気持ちは分からないでもない。
ここ10年、毎年1万人前後の在日外国人が日本に帰化しており、中国人はその約3割を占める。
私の番組のゲストも「国籍は住所の一部のようなもの」と言っていた。利便性を理由に帰化しただけ、政治的立場や愛国心はそれまでと変わらない、と。
古い考えかもしれないが、私はそうは思わない。
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