政治への不満はネットにあふれても、選挙では投票しない日本の謎
では労働基準法を現在の労働スタイルに合わせて、アルバイトや非正規社員も守るよう法改正しようとする政党はなぜ議席を大きく増やせないのだろうか。同じような話は、リーマン・ショック後の派遣切り騒動のときにも大きなニュースになったはずである。
あれから12年たった今も、アルバイトや派遣社員の声を代表する党が力を持った、という話は一度もない。2020年の総務省調査で、非正規雇用者は2090万人もいて、18歳以上の国民全員が等しく選挙権を持っているにもかかわらず、である。
日本の政治はどこを向いているのか、とはコロナ禍でもよく聞かれる言葉だ。観光産業なのか、経団連なのか、それともIOC(国際オリンピック委員会)なのか。政治がひどい、と叫ぶことは憲法で保障された権利であるが、それでも選挙の票で意思を示さなければ、政治はあなたのほうを向かなくて当然である。
どんなにSNSやマスコミが大騒ぎしても、実際の選挙で多くの人が投票所に押し掛けて自身の意思を示している、かつてない高投票率である――という話にならない限り、まだまだ日本は幸せな国ということなのだろう。
石野シャハラン
SHAHRAN ISHINO
1980年イラン・テヘラン生まれ。2002年に留学のため来日。2015年日本国籍取得。異文化コミュニケーションアドバイザー。シャハランコンサルティング代表。@IshinoShahran
<本誌2021年2月16日号掲載>
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