「悪は、善人が行動しないだけで勝利する」ロシア反体制派ナワリヌイの遺言
Defiant to the End
ナワリヌイへの献花(リトアニア、2024年2月) Michele Ursi/Shutterstock
<獄死した「不屈の男」ロシアの反体制活動家アレクセイ・ナワリヌイ。彼が獄死の半年前に自らつづった──幸福で自由な祖国ロシアへの確信と家族への愛>
北極圏の刑務所で獄死したロシアの反体制活動家アレクセイ・ナワリヌイは、死の半年前、祖国への希望や家族への愛、自分の考え方などについてアンケートに答えていた。「私はロシアが幸福で自由になれると信じている」、そして「私は死を信じない」と。
ナワリヌイの死は2月16日に公表された。彼の広報担当者キラ・ヤルミッシュは、ナワリヌイの遺体が北極圏の刑務所から近くの町に移されたとX(旧ツイッター)への投稿で明かし、遺体を家族に引き渡すよう要求した。
ナワリヌイは、世界的な人気作家で日本文学研究者でもあるボリス・アクーニンがロシア中の政治犯に送った13項目のアンケートに答えを書き送っていた。
アクーニンは昨年10月、政治犯たちからの回答をまとめた電子書籍を自身のウェブサイトで出版した。その英訳版(3月に出版予定)からナワリヌイの回答を抜粋、ここに独占掲載する。
──あなたは何者か。
刑務所の職員はいつも私に向かって「ふむ、今日は機嫌がよさそうだな......」と不満げな言葉を口にする。つまり、こういうことだろう。私は政治犯で、家族や仕事、仲間をとても恋しく思っているが、いつも元気だ。もちろん、読書家でもある。一日の大半を、本を片手に過ごしている。
──何を信じている?
神と科学だ。私たちは非決定論的な宇宙に生きており、自由意志を持っていると信じている。人はこの宇宙で孤独ではない、ということも信じている。私たちの行いはいずれ評価されると信じている。真実の愛も信じている。ロシアは幸せで自由になれると信じている。そして、私は死を信じない。
──最も重要な決断を下す際に何を頼りにするか。理性か直感か?
理性と直感は矛盾しない。選択肢が誤っている。進化の結果、人間はベッドにヘビがいたら、じっくり考えずとも行動できるよう設計されている。一方、ヘビが入り込めないような家を建てるときに、急いで決断することもない。
このことについては、ノーベル賞受賞者のダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』(邦訳・早川書房)という素晴らしい本がある。ぜひ読んでほしい。

──人生で最も大切なことは?
社会の役に立ち、良い人間であり続けること。
──最大の喜びは?
家族だんらんのひととき。車に乗って一緒にどこかに行くときとか。誰かがふざけて歌い始めると、みんながこぞって参加する。何曲も歌い続けてやめない。そして愛と幸せがあふれ出す。
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