最新記事
反体制派

「悪は、善人が行動しないだけで勝利する」ロシア反体制派ナワリヌイの遺言

Defiant to the End

2024年3月28日(木)18時22分
ジョアン・ターンブル、ニコライ・フォルモゾフ

newsweekjp_20240328024417.jpg

モスクワでは追悼の献花が絶えない GETTY IMAGES

──最大の悲しみは?

多くの人がものを考えようとしないこと、基本的な因果関係も理解していないこと。「汚職は私の生活には関係ない」とか、「権力の座にいる連中が盗みを働いたが、人が代わっても同じことだろう」などと誰かが言うのを聞くたびに悲しくなる。

何億年もの進化によって、最も素晴らしい頭脳を与えられているのに、この人はなぜそれを使わないのだろう、と思ってしまう。

──人間と人類に最大の悪をもたらすものは?

「悪は、善人が行動しないだけで勝利する」──誰かの言葉だが、驚くほど的を射ている。中立という偽善、政治的無関心、利害対立、隠れた怠惰、卑劣こそが、人類の歴史を通じて、組織化した悪党集団に何百万もの人々の支配を許してきた主な原因といえる。

──人類に最大の利益をもたらすのは?

「善」対「中立」の戦いに関わること。

──今のあなたにとってロシアとは?

私が理解できる人々が住む、くつろげる場所。私は国と政府を切り離して考えられるので、激動のこの時代においても、ロシアへの愛は変わらない。

──あなたに一番大きな影響を与えた芸術は何か?

私は文学が好きで、少しは理解しているつもりだ。映画も音楽も建築も好きだが、それほど詳しくはない。「敬意を持っている」と言えるだけだ。

文学はあらゆる芸術の中で最も強い影響力を持つ。なぜなら、文学はわれわれ自身の想像力を通じて訴えてくるからだ。それより強い影響があるものなど考えられない。

──好きな格率(行動原則)は?

単に好きなだけではない。私の好きな格率には「格率」という言葉が含まれている。「汝(なんじ)の意志の格率が常に同時に普遍的立法の原理に妥当し得るように行為せよ」。ドイツの哲学者カントの道徳法則の定式化の1つだ。

聖書の黄金律「汝の欲するところを人に施せ」によく似ているが、聖書のほうがまだ守りやすい。カントのほうは守る責任が重いと思う。だから私はこれを選ぶ。これらの法則に従うのは非常に難しいが、従うよう努力すべきだ。

──これまで読んだ本で最も重要な1冊は?

『ハックルベリー・フィンの冒険』だ。あの本を読んだのは、10歳か11歳くらいの頃だったと思うが、本というものは退屈だが役に立つだけでなく、読みだしたら止まらなくなって、ページをめくるたびに笑える場合もあるのだと気付いた。それで本を読むようになった。本を読まない人たちは気の毒だと思う。

──ロールモデルはいるか。

昔も今も優れた人々は大勢いる──勇敢で、偉大で、知的な人々だ。だからたった1人だけ選ぶのはもったいない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国11月物価統計、CPIが前年比で加速 PPIは

ワールド

トランプ氏、メキシコなどの麻薬組織へ武力行使検討 

ワールド

NZ中銀、政策の道筋は決まっていない インフレ見通

ワールド

北朝鮮、9日にロケットランチャーを数発発射=韓国国
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中