最新記事
ウクライナ戦争

兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?

RUSSIA’S DEATHONOMICS

2025年12月5日(金)15時59分
アレクセイ・コバリョフ(ジャーナリスト)
兵士の戦死で儲けるブラックウィドウがロシアで社会問題化

徴兵され危険な前線に送られていく兵士たち(ロストフ州、今年10月) SERGEY PIVOVAROVーREUTERS

<戦場へ向かう孤独な男と偽装結婚して、「弔慰金」をだまし取る女性が横行する。ロシアという国家の腐敗ぶり>

ロシア西部ブリャンスク州の田舎に暮らすセルゲイ・ハンドジコ(当時40歳)は2023年10月のある日、隣村の徴兵事務所で働く女性エレナ・ソコロワと結婚した。軍隊経験はなかった。しかし翌日には徴兵され、ウクライナ戦争の最前線に送られた。そして4カ月後、セルゲイは戦場で負傷し、命を落とした。

葬儀の数日後、ソコロワは遺族として公的な弔慰金を申請した。金額は少なくとも300万ルーブル(約600万円)。しかし彼女がセルゲイと同居した期間はなく、婚姻に伴うパスポートの書き換えを申請する手続きもしていなかった。

これに気付いたセルゲイの兄アレクサンドルが訴訟を起こし、婚姻の無効を主張した。すると法廷も「夫の負傷または死亡に伴う金銭的利益を得るため」の偽装結婚だったと認定した。

アレクサンドルの主張には、ソコロワが徴兵事務所での権限を利用してセルゲイの入隊手続きを早めたこと、負傷した夫が入院しても見舞いに来ず、その間も別の男性と同居していた事実も含まれていた。

ソコロワのような女性を、今のロシアでは「ブラックウィドウ(黒い寡婦)」と呼ぶ。彼女たちは独身の男性兵士、とりわけ前線から一時帰郷した男たちに取り入って結婚を急ぎ、戦死する可能性が高いのを承知で夫をウクライナの前線へ送り出す。そこは俗に「肉挽(ひ) き機」と呼ばれる地獄で、不慣れな男たちは文字どおりの「肉弾」として使い捨てられる。

事件
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米経済活動、8地区で拡大 物価上昇は緩やか=地区連

ビジネス

米経済「堅調な成長続く」、インフレは鈍化へ=ミネア

ビジネス

FRB、引き締めスタンス維持必要 インフレ克服まだ

ビジネス

米ウェルズ・ファーゴの10─12月期、純利益6%増
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広がる波紋、その「衝撃の価格」とは?
  • 3
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救った...実際の写真を公開、「親の直感を信じて」
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    飛行機内で「マナー最悪」の乗客を撮影...SNS投稿が…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 8
    宇宙に満ちる謎の物質、ダークマター...その正体のカ…
  • 9
    年始早々軍事介入を行ったトランプ...強硬な外交で支…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 6
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 9
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 10
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中