夫が名誉の戦死を遂げると、女性たちは公的な弔慰金(いわゆる「棺桶代」)を受け取る。その金額は最大で1300万ルーブル前後。貧しい地区なら一生分の稼ぎに相当する額だ。セルゲイのように孤独な独身男はいいカモだ。親族がいなければ女性たちは弔慰金を独占できる。
4度の結婚を重ねた「寡婦」も
ブラックウィドウがどれだけいるかは知る由もないが、決して少なくはない。ウリヤノフスク、リャザン、サマラ、サラトフの各州や極東の諸州など、さまざまな地域で同様な事例が何十件も伝えられ、裁判沙汰になった例も少なくない。
シベリア西部のトムスクでは、ある不動産業者が顧客の女性に、物件の購入に必要な頭金が足りないならウクライナでの「特別軍事作戦」に送り込まれる男の兵士と結婚すればいいと「助言」したかどで告発され、社会奉仕活動を命じられた。
だが似たような「助言」はロシアのSNSにあふれている。例えば「私たちは国の男を見捨てない! 軍人とデートしよう」というグループには何万もの登録会員がいて、兵士と民間女性に出会いの場を提供している。
こうした全ては深刻な社会腐敗の症状だ。人の弱みにつけ込んで不当な利益を得る略奪的な日和見主義が、戦争のせいでより悪化した。女性たちは単独犯ではない。さまざまな段階に大勢の人が関与する犯罪ビジネスの一種だ。偽装結婚をする女性には軍病院の看護師や、ソコロワのような徴兵事務所の職員もいる。
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