最新記事
セキュリティ

「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情報流出 ── 中国闇マーケットで大量販売

2025年12月8日(月)16時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
ソウル市にあるクーパンオフィスビル

ソウル市にあるクーパンオフィスビル Jaewon Lee / SOPA Images/Sipa US via Reuters Connect

<売上は10兆ウォン増でもセキュリティ投資は業界平均以下。政府認証取得後も4度目の流出>

韓国最大手のEC企業クーパンで、史上最悪規模の個人情報流出事故が発覚した。11月29日、クーパンは顧客アカウント約3370万件の個人情報が流出したと発表。これは韓国の総人口約5100万人の6割以上に相当する規模だ。

衝撃的だったのは、被害規模の拡大スピードである。クーパンは11月18日の時点で「約4500件」と発表していたが、わずか11日後には7500倍の3370万件に跳ね上がった。流出した情報は、氏名、メールアドレス、電話番号、配送先住所、最近5件分の注文履歴。クレジットカード番号や決済情報は含まれていないが、詐欺の材料として悪用されるリスクは高い。特に住所についてはマンションなどのエントランスの暗証番号まで流出しているというから深刻だ。

さらに深刻なのは、クーパンが5カ月近くにわたって情報流出に気づかなかったという事実だ。政府の調査によれば、海外サーバーを通じた不正アクセスは6月24日から始まっていた。容疑者は退職した元中国人社員で、「認証システムの開発者」だったという。ノーカットニュース、韓国日報など韓国メディアが報じている。

「韓国のアマゾン」クーパンとは

クーパンは、2010年にハーバード・ビジネス・スクールを1年で中退した金範錫(キム・ボムソク)によって創業された。当初はグルーポンのような共同購入サイトだったが、2014年から「ロケット配送」と称する独自の物流システムに大規模投資を開始。注文の99.6%を24時間以内に配送するという驚異的なサービスで、韓国EC市場を席巻した。

全国に100カ所以上のフルフィルメントセンターを展開し、50万個以上の商品を当日または翌日に配達する。2018年にはソフトバンクグループから20億米ドル(約2300億円)の投資を受け、2021年にニューヨーク証券取引所に上場。時価総額は一時900億ドル(約10兆円)に達した。

またクーパンは月額4990ウォン(約500円)の有料会員サービス「ワウメンバーシップ」を軸に、動画配信サービス「クーパンプレイ」、フードデリバリー「クーパンイーツ」を展開。日本でいえば、アマゾン・プライムとウーバーイーツが合体したようなサービスだ。

クーパンプレイは2021年にサービスを開始し、スポーツコンテンツに注力。2024年3月には、大谷翔平選手が所属するロサンゼルス・ドジャースと韓国代表が対戦する「MLBワールドツアー・ソウルシリーズ」の主催スポンサーとなり、約150億ウォン(約15億円)を投資。独占中継権とチケット販売権を獲得し、韓国内で大きな話題を呼んだ。

2024年11月時点で月間アクティブユーザー数は3200万人超、ワウメンバーシップ加入者は1400万人を突破。2023年には創業以来初めて年間黒字を達成し、売上高でそれまで韓国の流通王者だったスーパーのイーマートを抜き去った。まさに「破竹の勢い」で成長を続けていた矢先の事件だった。

きっかけは顧客のクレーム

韓国インターネット振興院(KISA)に提出された報告書によれば、不正アクセスが発生したのは11月6日午後6時38分。しかしクーパンがこれを認識したのは12日も経過した11月18日午後10時52分だった。しかもこの時も、クーパン側のセキュリティシステムが自動検知したわけではない。きっかけは顧客からの苦情だった。

だが事態はさらに深刻だった。政府の調査によれば、不正アクセスは6月24日から始まっていた。つまり5カ月近くにわたって顧客情報が流出し続けていたことになる。クーパンは2024年基準で情報保護に861億ウォン(約86億円)を投資しており、これはサムスン電子、KTに次いで韓国企業で3番目に多い額だ。だが今回の事件で、それらはすべて無用の長物だったことが明らかになった。

事件
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウ、新たな防空パッケージで合意 ゼレンスキー氏がダ

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、市場の動揺は鎮まる

ビジネス

米国株式市場=続伸、対欧関税撤回や堅調な指標受け

ワールド

ウィットコフ米特使がモスクワ到着、プーチン氏と会談
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 2
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレアアース規制で資金が流れ込む3社とは?
  • 3
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている「とてつもなく巨大な」生物...その正体は?
  • 4
    老化の9割は自分で防げる...糖質と結び付く老化物質…
  • 5
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 8
    ノーベル賞に選ばれなかったからグリーンランドを奪…
  • 9
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 10
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 7
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 8
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 9
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中