最新記事

野生動物

象のフンが二酸化炭素を減らす──象牙輸出と持続可能な保護活動とは?

THE BREWING BATTLE OVER AFRICA’S IVORY

2022年8月8日(月)10時28分
テンダイ・マリマ(ジャーナリスト)

220802p47_ZGE_02.jpg

象牙の在庫を抱える貧しい国々は「合法的な」取引を訴えるが、市場を過熱させて密猟を増やすという見方もある。(写真は)象牙の在庫を管理する国立公園職員(ジンバブエ) AP/AFLO

「需要は高く、それが違法な活動を引き起こしている。象牙の合法的な販売を認めるべきだ。そうすればわれわれが(象牙を)売って市場を飽和させるから、誰も密猟には行かなくなる」とマングワンニャは言う。また象牙を売れば、象牙の保管や警備にかかる年間16万ドルのコストの軽減につながると彼は期待する。

一方でAEC加盟国のケニアは集めた象牙を焼却処分しており、たとえ1度きりの競売であっても、合法的な象牙の国際取引を認めれば密猟の増加につながりかねないと主張している。

ゾウ保護イニシアチブ財団のジョン・スカンロンCEOも、同様の懸念を抱いている。「流通市場ができれば、象牙には高値が付く。密猟を奨励するようなものだ」

2008年にワシントン条約機構は、ボツワナとナミビア、南ア、ジンバブエの南部アフリカ4カ国に対し、象牙を1回に限って輸出することを認めた。

ところが動物保護活動家による研究によれば、この1回きりの輸出の後の09年から13年にかけ、アフリカ諸国における違法象牙の摘発件数は、1カ国当たり年平均で4.8から8.4に増加したという。これ以前の03~07年にかけては、これほどの変動はなかった。

国立公園の警備や密猟の取り締まりに当たるレンジャーや保護活動家からもデータを集めて算出された「違法捕殺されたゾウの割合」指数を見ても、08年以降、不自然な死因で命を落としたゾウの死体の「明らかに不連続的な増加」が見られるという。これは、市場の需要を満たすための密猟のせいだとみられている。

合法的輸出が密猟を増やす?

違法象牙の摘発件数の増加は、06年以降のタンザニアを中心とした密猟の増加を反映している。タンザニアではたった5年間で国内で生息するゾウの約60%が殺された。1回限りとはいえ国際取引が認められたことが、アジアでの需要増に火を付けたと専門家はみている。

南部アフリカの国々は合法的にアジア市場に象牙を売りたいと考えている。もっとも、かつて世界最大の象牙消費国だった中国は17年末に国内の象牙取引を禁止。その一方で日本では象牙は今も盛んに、それも高値で取引されている。

ジンバブエは象牙130トンとサイの角6~7トンを保管している。政府は6億ドル相当の価値があると見積もっているが、この数字については疑問の声も聞かれる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アングル:トランプ関税で変わる米国のメニュー、国産

ワールド

米戦闘機2機、イランが撃墜 乗員2人救助・1人不明

ビジネス

アングル:インドへの高級ブランド進出、実店舗スペー

ビジネス

米地裁、FRB議長の召喚状差し止めの判断維持 検察
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 4
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 5
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 8
    中国は「アカデミズムの支配」を狙っている? 学術誌…
  • 9
    イラン戦争は「ハルマゲドンの前兆」か? トランプ…
  • 10
    60年前に根絶した「肉食バエ」が再びアメリカに迫る.…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 10
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中